戦国異伝
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第百五十九話 巨寺その十四
そのことを見てだ、中川は今言うのだ。
「よかったわ」
「ですな、それでは」
「勝三殿達もお陰で」
「何とかなっておる」
砦を守れているというのだ。見れば長可達は果敢に攻めて雑賀衆の動きを止めている、攻めることによってそうしているのだ。
そのことを見てだ、中川は言うのだ。
「よいわ」
「ではこのまま」
「反撃もしつつ」
「このまま守り」
「与三殿の第二陣が来るまで」
「守るぞ」
こう話してだった、彼等も守りに徹するのだった。
その彼等が楯となり原田や長可達が攻める、そうして織田家の第一陣は雑賀衆の攻撃を抑えて時間を稼いだ。
そして次の日だった、朝早くに。
近くで法螺貝が鳴った、それと共に。
大軍が姿を現した、その軍勢はというと。
「おお、与三殿か」
「来られたぞ」
森の率いる織田家の第二陣だった、青がそれを何よりも雄弁に見せていた。
「早いのう、もう来てくれたか」
「流石は与三殿じゃな」
皆その第二陣を見て笑顔で言う。
「よし、守ったかいがあった」
「これは我等の勝利ぞ」
砦の中の第一陣は一気に活気付く、それは中川達もだ。
中川はその森の軍勢と見つつ彼の子である長可に言った、今彼等は原田と共に砦の中で最も高い櫓にいる。
そこからだ、彼は長可にも笑顔で声をかけた。
「来てくれたぞ、父君が」
「はい、確かに早いですな」
「我等を助ける為に急いでくれた様じゃな」
「流石は父上です」
義理固い父らしいとだ、長可は確かな笑顔で答えた。
「それがしもこんなに早いとは思いませんでした」
「そうじゃな」
「これで、です」
長可は確かな声で言った、その顔も確かな笑みを浮かべている。
「我等は勝ちます」
「間違いなくな」
「我等と第二陣で攻めれば」
その数でだというのだ。
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