戦国異伝
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第百五十九話 巨寺その一
第百五十九話 巨寺
信長は軍勢を率いて摂津に入った、摂津に入るとすぐに石山御坊を囲む信行達と合流した、信行と信広は到着した信長を迎えてこう言った。
「兄上、ようこそ」
「お待ちしておりました」
双方馬上におり二人も馬上から挨拶をする。
「まずは馬上での挨拶失礼を」
「ははは、確かな挨拶は陣の中でしようぞ」
信長は二人に笑って応える、そのうえであらためて二人に言った。
「それで戦局じゃが」
「はい、今のところはです」
「ここでの戦は我等が有利です」
二人はこう自分達の兄に話す。
「堺も抑えております」
「そして和泉も」
「河内も収めております」
「摂津も」
「見たところ落ち着いておるな」
信長はこれまで見てきた摂津の道中のことを言った。
「門徒達は暴れておらぬか」
「全て我等で抑えました」
信行が答える、今彼等は馬で本陣に向かっている。彼等の後ろには信長と共に戦ってきた諸将がいる。
「全て。ただ」
「ただ、か」
「はい、天王寺の辺りは」
そこはだというのだ。
「雑賀衆がおりまして」
「ここから近いのう」
「そこから紀伊と石山御坊の道をつなげられています」
河内と和泉は抑えている、しかしだというのだ。
「その道を持っていますので」
「石山は紀伊からの助けを受けているか」
「そして雑賀衆の」
紀伊を拠点とする彼等のだというのだ。
「ですから中々しぶといです」
「左様か」
「そうです、それが今です」
この摂津の状況だというのだ。
「それで有利なのですが中々攻めあぐねています」
「状況はわかった、雑賀衆か」
信長は天王寺にいる彼等のことを話した。
「あの者達か」
「天王寺には砦がありますが」
今度は信広が話す。
「しかしです」
「その砦がじゃな」
「攻められ危うい状況です」
「そのこともわかった、しかしその他が抑えられているのならな」
それならだというのだ。
「天王寺だけをどうにかすればよいな」
「そして石山との道を断ってですか」
「紀伊も攻めるとしよう」
信長は瞬時にここまで考えて述べた。
「是非な」
「ではまずは天王寺ですか」
「あの場所をですか」
「うむ、抑える」
そうするというのだ。
「是非な、ではじゃ」
「まずは本陣に入り」
「そうして」
「それからじゃな。しかし出なかったか」
ここで信長は弟達にこう問うた。
「闇の者達は」
「闇?」
「闇とは」
「本願寺の中の闇の様な色の服の者達じゃ」
こう弟達に問うたのである。
「その者達はおったか」
「いえ」
信行がいぶかしむ顔で信長に答えてきた、その話を聞いてだ。
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