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戦国異伝

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第百五十八話 義昭の愚痴その十二

「しかしじゃ、今織田家は連戦でそろそろ疲れが出ておる」
「そこでさらに疲れさせればですか」
「織田家といえども」
「人は疲れる」
 このことは絶対にという口調だった。
「それが極限までくればな」
「織田家といえどもですな」
「石山を攻め落とせなくなりますか」
「だからじゃ」
 それでだというのだ。
「おそらく高田殿が考えられたことじゃが」
「今は織田家を疲れさせてですか」
「そうして」
「石山には残ってもらいますか」
「本願寺には」
「今のままでは石山だけが潰れる」
 本願寺、彼等だけがだというのだ。
「灰色だけがな」
「消えるのは一色だけですか」
「それだけですか」
「それでは意味がない」
 彼等にしてはだ。
「だからここはな」
「出来る限り、ですな」
「多くの色に消えてもらいますか」
「本願寺だけでなく」
「本願寺だけ消えては少ない」
 到底だというのだ。
「今は残ってもらいそれぞれの色で争ってもらってじゃ」
「やがてはですな」
「どの色にも」
「滅んでもらう」
 そうなってもらうというのだ、それが高田の考えだというのだ。
「そうするとしよう」
「ううむ、流石は高田殿ですな」
 ここまで聞いた家臣が言ってきた。
「そこまでお考えとは」
「そうじゃな」
 松永はその褒め言葉には何処か素っ気なく返した。
「あの御仁らしい」
「よく切れられます」
 頭が、というのだ。
「いつもながら」
「あの方がおられれば」
 松永はこうも言った。
「よいであろう」
「我等としてはですな」
「一族としてはな」
 それでいいというのだ。
「いいであろう」
「そうですな」
「わしはな、いやよいか」
 松永はこれ以上は言わなかった、そしてだった。
 己の家臣達にだ、こう告げた。
「今は」
「今はですか」
「よいのですか」
「うむ、ではとにかくじゃ」
 松永はまた話題を変えてきた。
「摂津に向かおうぞ」
「ですな、とりあえずは」
「今のところは」
 家臣達も今はこう応えた、そうして。
 松永を含めた織田軍は今は摂津に向かうのだった、そしてそこで本願寺の本拠地での新たな死闘に入るのだった。


第百五十八話   完


                               2013・11・1 
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