レースへ向けて
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3部分:第三章
第三章
そのバイクをだ。来栖は宮城と共に調べて言うのだった。
「ブレーキだな」
「そうですね。それがですね」
「効きが悪かった。それにだ」
弱点はまだあった。それが何かというと。
「タイヤもな。スピードを速めることを考えるあまり」
「ええ。滑ってしまって」
「だから事故になった」
宮城の運転には問題がなかった。それならばだったのだ。
「これをなおしていこう」
「それじゃあ」
こうしてだった。二人はバイクのそうしたポイントをなおしにかかった。しかしである。
スタッフ達はいよいよ焦ってだ。こうその二人に話すのだった。
「あの、本当にもうすぐレースなんですけれど」
「それでバイク壊れて欠陥も露わになって」
「それでいいんですか!?」
「これまずいですよ」
焦る彼等にだ。今度はだ。
宮城がだ。こう落ち着いて言うのだった。
「焦っても仕方ないよ。まずはね」
「まずは?」
「まずはっていいますと?」
「バイクの欠陥をなおして。また造るから」
そうするというのだ。
「それでいいよ。そうしよう」
「ですからもう一月ないんですよ」
スタッフ達はいよいよ焦りそのうえで言うのだった。
「これじゃあ間に合わないですよ」
「それでもいいんですか?」
「急がなくて」
「急ぐことは急ぐ」
冷静にだ。返したのは来栖だった。
「すぐに昼夜兼行でバイクを造る」
「欠陥をなおすだけだからいけるよ」
「トレーニングはどうするんですか?」
スタッフの一人がまた言う。
「それもしないといけないですけれど」
「それは無論続ける」
「トレーニングをしないと話にならないからね」
「実際にバイクに乗るのも練習用のものを使う」
「だから大丈夫だよ」
「いえ、そうではなくてです」
スタッフ達はあくまで落ち着いている彼等に述べるのだった。
「休む時間ないんですけれど」
「バイク造ってトレーニングって」
「あと一月なのに」
「言っても仕方がない」
来栖の言葉は短いが強かった。
「まずはやることだ」
「まずはですか」
「そうしてだっていうんですね」
「だからやる」
強い言葉のまま言い切る来栖だった。そして宮城もだ。
確かな顔でだ。スタッフ達に述べるのだった。
「だからやるよ。睡眠も取るから安心してね」
「だったらいいですけれど」
「無茶はしないですね」
「それにです」
ここでだ。スタッフ達は首を捻りつつだ。二人にこのことも話したのだった。
「お二人共本当に冷静ですね」
「お二人が一番焦ることなんじゃないんですか?」
「それで何でそんなに冷静なんですか?」
「そこまで」
「何度も言うが焦って何かなるかというと何にもならない」
来栖は強くだ。こうスタッフ達に話すのだった。
「それがわかっているからだ」
「そうだよ。俺達はとにかく焦ったら駄目なんだよ」
宮城もだ。そのことはわかっていて言うのだった。
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