ゴミの合法投棄場。
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面白ければ何でも良い。
前書き
続いてしまったらBLになるだろう話。
春の日差しが柔らかに降り注ぐ、この良き日。
俺、トラックに轢かれて死んじゃいましたー☆
それも、即死ではありません!
内臓デロデロ半身ぐしゃぐしゃのグログロ状態で一分くらい意識ありました!
あはは! もう最っ悪ですよ!
ああ、何で俺がこんな目に……。
あれだな。 きっとあれがいけなかったんだろうな。
歩道にトラックが突っ込んできた時、咄嗟に隣を歩いてた友達を楯にしたのが不味かったんだな。
結果的に、何故か友達は傷一つ無くて、俺は微妙に生き残った末に結局死んじゃったというね。 咄嗟だったから勢い余って上手く楯にできなかった……。
あの野郎マジくっそ使えねぇ……何か感謝してたけど、野郎に感謝されても何も嬉しく無いっつの……。
……まぁ、いっか☆
過ぎたことはしゃーないよね! これからのことを考えましょう!
……と、いうのも、確かに死んだはずなのに、ふと気が付いたらプレイしたMMORPGのキャラクターの装備付けてゲーム内のフィールドに立ち尽くしていたからです。
……うん。 これからのこと考えざるを得ないよね、これ。
「……ステータス」
ボソリと呟いてみたけど特に反応は無し。 いやん恥ずかしい。 周りに人居なくてよかったねー。
とりあえず、装備していた神討伐報酬の剣で近くの木を切りつけてみたら豆腐を切るかのような手ごたえて木がテロンと切れました。 わぁ、切断面がドロドロしてるよー? アブナイアブナイ。
でもこれなら仮にモンスターが襲ってきても大丈夫かな? っていうことで、まずは街に向かってみましょう。
位置的には俺が最後にセーブした場所っぽいからね。 3Dゲームで良かった。 方向とか何となく分かるから。
……いやぁ、俺、何か引くくらい冷静だなぁ。 仮にも死亡直後なんだけどね?
俺やっぱりどっか可笑しいのかも。 親愛なる父上も母上も俺の事気持ち悪がってたからなぁ。
お友達も、良い子ちゃんの仮面被る前はできなかったし、クラスメイト皆に嫌われてシカトされてたしさぁ。
どーでもいいけどね☆
面白ければ何でもOK!
優等生演じる俺に騙されて「風紀委員長様ぁ~」なんて崇拝しちゃってるキモイ奴ら見てるのも、最初は面白かったけどいい加減マンネリ化してたからさぁ~。 何か良くわかんないけど面白そうなことに巻き込まれてラッキー! 人生捨てたもんじゃないね!
ゲーム内トリップだが異世界トリップだが分からないけど、折角チート仕様なんだから全力で楽しまなきゃ損でしょ!
つーことで、新たな世界にれっつらごー☆
…………
……
どーも、お久しぶりです! 勿論忘れてなんかいませんよね?
あなたの愛する柊和佐君です!
さて、初めてこの世界、イーリスにトリップしてから三年が経過しました。
俺は今冒険者やりながら、冒険者養成学園に通っています。
とりあえず、ステータス確認できなかったけど、全職カンストしたチートな廃人データをしっかり引き継いでいるらしく、戦闘能力は無問題でした。
うん? 学生生活しながらどうやってゲーム廃人したかって? チートやらマクロやら使いまくったに決まってるじゃないですか☆
ま、それは置いといて。
この世界の冒険者ってのは結構なハードモードで、薬草集めみたいな簡単な依頼はありません。 そういうのは全部『何でも屋』が請け負うらしい。 でもって、ゴブリンやらコボルト討伐なんていう雑魚討伐もありません。 そういうのは全部『自衛団』が請け負うらしい。 冒険者がゴブリンとかを討伐するとしたら、あんまり増え過ぎて手に負えなくなった場合のみだってさ。
じゃあ何をするかっていうと、文字通り冒険です。 山やら谷やら森やら海やら、色んな所に行って、凶悪なモンスター共を薙ぎ払います。 で、倒した敵の強さに応じて報酬を貰います。
これがどうにも儲かる儲かる! 3年ですでに一生遊んで暮らせるくらいのお金は貯まっちゃいましたからね。
因みに冒険者ランクはA。 一番上はSランクで、一番下はFランク。 何でAランクかというと、Sランク冒険者は基本国に召し抱えられる感じになるらしくて、色々煩わしそうだったからね。 昇格試験をパスしまくってAランクを死守してるわけです。
いやー冒険者本当楽しいよ。 何と言うか、自由でさ。 前の世界じゃ、殺傷沙汰なんて人間相手はもちろん畜生相手にだってダメだったじゃん?
それがこの世界じゃ、国や街から離れた危険区域でならどっちも殺っちゃってOKなんだよね。
畜生っていうか、魔物は殺してOKなのは分かると思うけど、人間もOKなんだよ。
危険区域に入れるのは冒険者だけだから取り締まり様が無いんだろうね。 推奨はされてないし、ばれると危険人物扱いになるけど特にペナルティーがあるわけじゃない。
まあ、殺らないんだけどさ。
盗賊とかたまに出るから、殺しても良いってのが分かってると気楽だよね。
たまに夜営中のパーティ見つけるとウォーターボールぶつけて悪戯したりはしています。 敵の襲撃だと思ってテンパる厳ついおっさん見るのがとても楽しいです。
でもって、今度は冒険者養成学園ね。 Aランクの超一流冒険者の俺が何故そんな学園に通っているかというと……優越感に滅茶苦茶浸れるからです!
冒険者養成学園卒業すると、FランクをスキップしてEランクから始められるんだけど、逆に言えば最高学年でもEランク程度の実力しか無いってこと。
冒険者ってのは男なら誰もが憧れるエリートだから、お偉い貴族のお坊ちゃまとかもいるんだけどさ、そんなプライド高くて、若さ故に不安定な連中が必至こいてる中、俺Tueeeがしまくれる……傍若無人な態度とっても誰も俺に逆らえる奴は居ない……もう、もう、貴族連中の悔しそうな顔が面白すぎて、大爆笑ですよ!
「平民なのに貴族様に逆らえるなんて素敵!」なんていって平民共が集まってきちゃってさ、俺のことを担ぎ上げて、貴族派VS実力のある平民派みたいな感じで派閥争いになってたりもするんだけど、そういうのもやったこと無かったから超面白いです!
……小せぇ野郎だなって思った? ま、好きに思えば良いさ! 面白ければ何でもいいんだよん!
ああそうだ。 説明しないといけない事が一点あったや。 どうやら、俺は人間じゃ無いっぽい。
なんつーかね、ゲームキャラの年齢を操作できるみたいに、自分の肉体の年齢設定を変更できるみたいなんだよ。
試してみた結果、5歳~60歳くらいまでなれました。 身体は生前のと違って、ゲーム用に設定した人外レベルのイケメンだから、5歳はスゲー可愛いショタっ子だし、60歳も渋くて素敵なオジサマですよ。
冒険者は30歳くらいの姿でやってるんだけど、学園は17歳から入学可能だから、今は18歳の姿で通ってる。 つまり2年生だね。 4年制の学園で、卒業時は20歳だね。
各学年S~Fクラスまであって、実力順になっています。 Sクラスはお貴族様な家柄も必要なんだけど、俺の場合実力がずば抜け過ぎてて、AクラスだとSクラスの立つ瀬が無いから特別措置として平民ながらもSクラスにいます。 いやぁ、四面楚歌ですよもー☆
そんなこんなで俺は元気一杯楽しくやってます☆
親愛なる父上と母上もお身体に気を付けて、元気に楽しく暮らせるよう頑張ってくださいませ~!
ではでは、アデュー☆
◆
一人の少年が、イライラしたように速足で廊下を歩いていた。 赤い髪に青い瞳の少年は、学校全体で見ても数の少ないSクラスに在籍しており、実家は王国の大貴族である紛うこと無きエリートだった。
校舎は静まり返っており、少年の足音だけが響き渡る。 当然だ、最後の授業が終了したのはとっくの昔なのだから。
では、何故この少年が校舎をうろついているかと言えば、単純明快、忘れ物だ。
(ちっ。 俺としたことが……こんなとこアイツに見られたら――)
少年がらしくない己のポカミスにイライラしながらもSクラスの扉をガラリと開ける。
――そこには、思わぬ先客がいた。
丁度少年が思い浮かべていた『アイツ』こと、ヒイラギ=カズサ。 平民ながらも圧倒的な実力でSクラスの座を手に入れた実力者であり、優等生。 そして、多くの平民から慕われる人格者……と、言われているが、少年は『人格者』という一点のみ、その噂を信用していなかった。 いや、少年だけでは無い。 ほとんどの貴族がヒイラギを、『己の実力に酔いしれ身分をわきまえずに大きな顔をしている傲慢な奴』と一方的に決めつけて見下していた。
少年のヒイラギに関する評価は、『確かに実力があることは否定できないし、珍しい黒髪に黒目で顔立ちも異様に整ってはいる。 しかし、平民の分際で貴族を目の敵にする反貴族派の筆頭だという時点で、程度が知れるというものだ』というものであり、同じクラスでありながらも目に入れば常に侮蔑の視線を投げかけ、言葉を交わしたことは一度として無かった。
「できた……っと」
そんなヒイラギがぽつりと独り言を零し、白い便箋を同じく白い封筒にしまう。 それは、シンプルながらも学園の購買で売られている中では一番高価な、貴族の生徒御用達のレターセットで、平民にはなかなか手が出せないはずのものだった。
荒々しく扉を開けたのだからこちらに気付いているはずなのに、全く無反応なヒイラギに少年は漠然とした苛立ちを感じ、いつもなら無視していたにも関わらず声をかけてしまった。
「おい、貴様っ。 こんな時間に一人で何をしている!」
「ん。 ああ、グレンザードか。 ちょっと両親に手紙をね」
無視されるかもしれないと思ったが、あっさりと質問に答えられたばかりか、にこやかに微笑まれたことにグレンザード、正確にはシリウス=グレンザードは少しばかり驚いた。
「……ふん。 手紙など、教室でなくとも何処でも書けるだろう?」
「うん……でも、折角今年からSクラスになれたからね。 自慢したくってさ」
「はぁ?」
ヒイラギはくるりとシリウスに背を向け窓に近寄る。 窓を開け、手紙を持った右手を窓の外に伸ばした。
そして、一体何をしているのかと訝しげに見つめていたシリウスの前で、突然ヒイラギの右手が青い炎に包まれ手紙が一瞬で消し炭に代わり、最後には炭の一欠片も残すことなく煙となって空へ登って行った。
「お、おい!? 何をやっている!?」
「うん? 手紙を送ってるんだよ?」
「燃やしてしまっては届かないだろう!」
手に持ったものを燃やすのは非常に繊細な魔力操作が必要であり、わずかなミスで火傷を負ってしまう。 しかも、無詠唱だ。 シリウスは、やったことが無い故に自分にできるか自信が持てず、何故そんな行動に出たのか理解が出来ない苛立ちと『そんな高等技術を平民のくせに……』という嫉妬心が混ざり、八つ当たりのように声を荒げたシリウスだったが、振り返ったヒイラギの表情に息を飲んだ。
「……そうかもな。 でも、もしかしたら届くかもしれないから、さ。 ――俺の親、もう死んじゃってるから。 ほら、あの世って何となく上の方にありそうじゃん?」
「……っ!」
ヒイラギは穏やかに微笑んでいた。 しかし、その片頬を一滴の涙が静かに伝い、ポトリと床に落ちる。
「わ、あれ? なんでだろ。 あは、見られたの初めてだから、かな。 ごめんな、変なとこ見せて」
「い、いや、別に……」
慌てて涙を拭い照れたように笑うヒイラギにシリウスは何と言えば良いのか分からず、ただ立ち尽くした。
「あ、そうだ。 魔術理論の課題、忘れ物してたよ。 明日提出だから無いと困るだろうなって、後で届けに行こうかと思ったんだけど、俺が行ったら逆に迷惑かもって悩んでたんだ。 戻ってきてくれて丁度良かった……はい、これ」
「あ……ああ。 悪いな」
シリウスの席から忘れ物の課題をとり、まだ恥ずかしさがあるのか照れた様に笑って手渡してきたヒイラギに、シリウスは己の口から自然と『悪いな』という言葉が出たことに驚いた。 今まで高すぎるプライドが邪魔をして、目上の者以外には感謝の言葉も謝罪の言葉も言えたことが無かった。
「じゃ、俺もう行くから。 また明日」
「――……」
笑顔で手を振り、おそらくは自分の寮へ戻っていくのだろうヒイラギの背中をシリウスは黙って見送った。
反貴族派の平民共に祭り上げられ、そのリーダーのような立場のヒイラギであるから、大貴族の息子でSクラスのエリートであるシリウスが忘れ物などという失態を犯したのを知れば鬼の首をとったかのように侮辱してバカにするに違いないと思い込んでいた。
しかし、実際にはシリウスの失態をバカにするどころか、心配して届けるか悩んでいたという。
人格者と言う噂が事実であったことを今のシリウスは素直に信じることができた。 そして、そんな相手を勝手な思い込みで一方的に見下していたのだという事実にシリウスは自分を恥じる。
――立場上、色眼鏡で見られることの煩わしさは知っていたというのに。
己の愚かさに呆れ、シリウスは無意識に忘れ物の課題をくしゃりと握りつぶした。
そんな自分を軽蔑すること無く柔らかな笑みを浮かべて話しかけてくれたヒイラギ。
そんな彼の、死んでしまった両親に手紙を送る姿と、その後に見せた一粒の涙が脳裏に焼き付いて離れない。
平民でありながらあの高価なレターセットを買うのは大変だっただろう。 彼はどんな気持ちであの便箋に手紙を書き、燃やしたのか。
両親が健在で、過保護な程に愛され守られている自分には決して分からないであろう。 それ故に、彼のその姿が純粋で美しい、何か神聖なものにすら思えた。
「――また、明日」
完全にヒイラギの姿が消えてしまってから、シリウスはそっと呟いた。
(愚かな平民風情と思っていたが、愚かだったのは俺の方だった様だ。 奴の実力ならば、卒業後も何かと関わることになるだろう。 そう、長い付き合いになるのだから……あれほどの実力者ならば身分に拘ることは無い、よな――。 明日は……俺の方から話しかけてみるのも良いかもしれない――)
今まで貴族こそ至上という固定概念に縛り付けられていたため、素直にヒイラギと親しくなりたい自分を認められないシリウスであったが、自分に言い訳をしながらもヒイラギと親しくなろうと決意する。
彼は知らない。
ヒイラギの涙が演技であり、現在自室で「ぶふっ……あ、あいつ……! くっそ面白れぇーー!」と腹を抱えて笑っていることを。
【Q.《面白ければ何でも良い。》を合法投棄場へ投棄しますか? →Yes/No】
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