魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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オリジナルストーリー 目覚める破壊者
58話:激闘 開始
前書き
だいぶ遅くなってしまいました。
オリジナルストーリー、第五話です。ようやくそれらしい戦闘に入っていきます。
「だあああぁぁぁぁ!!」
「グブァッ!?」
最初に敵を吹き飛ばしたのは、ヴィータだった。
ヴィータはその突破力をフルに使い、一気に道を開いていく。
「はああぁぁぁっ!」
その少し後ろで同じように突破してくるのは、ヴォルケンリッターの将・シグナム。
ヴィータ程の突破力はないが、流石は将。ほぼ一直線に道を、文字通り切り開いていく。
さらにその後ろにはアルフとザフィーラが、二人程のスピードがないにしろ、徐々に攻めていく。
その援護に回るのは、クロノにシャマル、ユーノ。さらにその後ろから、期を伺いながら射撃魔法で牽制しながら進む。
「抜けたぁぁぁ!」
「はぁあっ!」
そして遂に一番前で戦闘していたヴィータとシグナムが、怪人の群れを抜けた。残りは士と、その左右にいる二人の男のみ。
「この、バカ野郎ぉぉぉぉ!!」
そこから一気に飛び出したヴィータは、雄叫びを上げながら士へ向かっていき、グラーフアイゼンをひり下ろす。
だが士に振り下ろられるグラーフアイゼンを、士に当たる前にスーツの男が受け止めた。
「なっ!?」
「…フンッ!」
「うわぁあっ!?」
自身の攻撃を止められた事に一瞬驚いたが、そんな暇も与えないと言わんばかりに、スーツの男はアイゼンごとヴィータを投げ飛ばした。
「っ…!」
次に続くシグナムは、同じように士へレヴァンティンを振り下ろそうとする。
だがそれもヴィータと同じように、こちらは月影が受け止めた。
「貴様…!」
「早々にやらせる訳がなかろう」
ギィン、と月影はレヴァンティンを弾き、士からの距離を離す。
「…何者だ?普通の人間ではないのだろう?」
「当たり前だ。これでもあの方の右腕。他の者を捻じ伏せられる程の力がなければならないのだ」
そう言うと、月影の体は銀色の鎧に包まれる。顔は仮面で覆われ、緑の複眼が光る。
「なっ…その姿は…!?」
「我が名は月影改め、『シャドームーン』。あの方の右腕として、貴様を排除させてもらうぞ…ヴォルケンリッターの将」
シャドームーンはサタンサーベルを構える。
シグナムは一度深呼吸をして、目つきを変える。一旦レヴァンティンを鞘へ仕舞い、抜刀術のような構えを取る。
「…そう簡単にやられるようでは、私は『将』ではいられない」
そう呟きながら、シグナムは考える。
この男が右腕で、もしヴィータが戦っている男が左腕だとしたら…この二人に邪魔をさせなければ、なのは達三人は心置きなく戦えるのでは、と。
ならば、自分がする事は一つ。
「私は…主の為にも、主の友人である高町やテスタロッサ…そして門寺の為にも…ここで負ける訳にはいかんのだ!!」
シグナムはそう叫び、レヴァンティンの柄を握り、シャドームーンへ向かって一気に飛び出した。
[…という訳でヴィータ、私達は…]
[わーってるよ!あいつの足止めだろ?]
シグナムはシャドームーンと今まさに激突する時、念話でヴィータと話していた。
謎の男に投げ飛ばされたヴィータは、少し離れたところで着地していた。何処にも怪我がないのは、流石というべきか。
「ったく…結構な距離飛ばしてくれたな…」
悪態をつきながらアイゼンを肩にかけると、ヴィータを投げた男がゆっくり歩いてくる。
ヴィータはそれを見た瞬間、目つきを悪くして男を睨んだ。
「てめぇ…邪魔するってんなら、ぶっ飛ばす!」
「邪魔なのは貴様らだ。こちらの計画を邪魔してるのだからな」
そういうと男は手を広げて、怪人達を呼び寄せる。それを見たヴィータは、フンッと鼻で笑ってアイゼンを構える。
「そんなんで、私を止められると思うなよ!行くぞ、アイゼン!」
〈 Jawohl. Raketenform. 〉
アイゼンはヴィータの声に反応し、カートリッジをロードする。ハンマーヘッドが変形し、片方が推進剤噴射口、もう片方がスパイクへと変わる。
それを見た怪人達は、一斉に走り始めた。だが、ヴィータがそれを気にすることはなかった。
「うおおおぉぉぉぉぉ!」
その場で魔力を噴射、推進力を利用して回転を始める。そして数十回回ったところで一気に飛び出し……
「ラケーテン…ハンマァァー!!」
「「「ガアァァ!?」」」
怪人達を蹂躙する。ラケーテンハンマーによって吹き飛ばされた怪人達は、建物の一階部分へ頭から突っ込んでいった。
だが、ヴィータの攻撃はまだ止まらない。
「うぅりやぁぁぁ!」
「「「ゴガァァ!?」」」
回転している勢いをそのままに、一回転してから今度は下から振り上げるように繰り出す。
その一撃によって、怪人達は宙へと吹き飛ばされた。
しかしまだ止まらない。もう一度水平に振りぬいてから、今度は斜め上から振り下ろすように。
それを数回繰り返し、遂に男の前までやってきた。
「ぶっつぶれろぉぉぉぉ!!」
ここまで来るのに作り上げた回転の勢い。それを存分に利用し、男に向かって一気に振り下ろす。
「フンッ!」
「なぁっ!?」
だが男はそれおもいとも簡単に(今度は両手でだが)受け止めてしまった。
「確かに先程よりかはいい一撃だ。だが…!」
「っ、がはっ!」
男はさらにヴィータに蹴りを繰り出す。腹部にそれを食らったヴィータは大きく吹き飛ばされ、一度背中から地面に落ちる。
「―――チィ!」
しかしヴィータもすぐに体勢を立て直して、うまく着地する。
「…あんた、いったい何者だ?あたしのアイゼンを二回も受け止めるなんざ、人間業じゃねぇぞ?」
「フンッ……」
―――アポロチェンジ。
男がそう呟くと、その姿を変えていく。黒いアンダースーツに白いマント、そして紅色の仮面。背中へ回した手には、連装銃と日輪の盾が握られていた。
「我らが計画を邪魔させる訳にはいかんのだ」
「うっせぇ!こっちだって、こんなところで立ち止まってる訳にはいかねぇんだよ!」
ヴィータはハンマーフォルムに戻っていたアイゼンを握り、振りかざす。
「アイゼン…行くぞ!」
〈 Jawohl. 〉
そしてヴィータは目の前の男―――アポロガイストへ向かっていった。
「うおおおぉぉぉぉ!!」
「はああぁぁぁっ!!」
場面はシグナムやヴィータが戦っている場所から少し後方。
前衛のザフィーラ、アルフが得意に接近戦で怪人達を蹴散らしていく。
「ウオオォォォ!!」
「っ!?」
そのアルフの後ろから、一体の怪人が跳びかかる。
だがその怪人の腕に、緑色の鎖が絡みつく。怪人はそれに引っ張られ、アルフに到達する前に地面に落ちる。
「ナイス、ユーノ!」
「どういたしまして!」
アルフは礼を言いながらサムズアップする。ユーノもそれに合わせるように親指を立てて答える。
「今から道を作る!三人共、避けてくれよ!」
その後方から自らのデバイス、『S2U』を向けるクロノ。それを見た三人は、一斉に飛び上る。
「ブレイズキャノン!」
〈 Blaze cannon 〉
水色の砲撃が怪人達を飲み込み、吹き飛ばしていく。その閃光はやがて士―――ディケイドの前まで到達し、迫る。
だがディケイドはそれを目の当たりにして、ただ剣を引き抜き、無造作に振り上げた。
たったそれだけ。たったそれだけで目の前に迫っていた閃光が、剣に遮られて四散していく。
「なのは、フェイト、はやて!今だ、行け!!」
「うん!」
「ありがとう、クロノ!」
「ほな、行ってきます!」
クロノが叫ぶと、後ろにいた三人が一気にディケイドに向かっていく。その後ろ姿を、クロノはじっと見据えていた。
そんな事知ってか知らずか、士の元へ飛び立った三人を追うように、怪人達も動き出した。
「…クロノ!」
「あぁ、わかってる!」
ユーノに名前を呼ばれ、クロノは空へ。それに合わせてユーノや他の面子も空へ上がる。
そして立ちふさがるように、怪人達の前に躍り出た。
「ここから先には行かせない!」
クロノがS2Uを突き出しながら叫ぶと、怪人達は怒り狂ったような雄叫びを上げ、クロノ達をお構いなしに突き進もうとする。
「鋼の軛!」
だが五人がそれを黙って見過ごす筈もない。
ザフィーラはベルカ式の魔法陣を展開し、魔法を発動。前方にいる怪人達の足元から、針山の如く拘束条が生え、怪人達を突き刺していく。
それを見た怪人の数体が、自らの飛行能力を行使して空中へ飛び出した。どうやら五人の頭上を通っていくつもりらしい。
「行かせる訳…!」
「ないだろ!」
しかしそれも予想通り、と言わんばかりに空を飛ぶ怪人達に緑とオレンジの鎖が巻き付き、動きを封じた。
ユーノとアルフの『チェーンバインド』である。二人の鎖によって動きを封じられた怪人は、次々に落下していく。
「シャマル、なのは達の周囲をさらに結界で囲ってくれ」
「っ、でもそんな事したらはやてちゃん達が…!」
「わかってる!だが、今はあの三人しか士を任せられる者がいないんだ。何も通信遮断のものじゃなくていい。外からの侵入を阻めるものでいいんだ」
クロノの説明を受けて、シャマルは少し眉を寄せはしたが、コクリと頷いて結界を作り出した。
それを見届けたクロノは、
「さぁ、これで君達の進行は困難になった。通りたければ、僕達を倒してから行くんだな」
といい、S2Uを振り上げる。するとクロノの周りに再び無数の刃が展開され、それらは全て怪人達に向かっていた。
「無論、早々通れるとは思わないことだ!」
そして降り注がれる剣の雨。それらは怪人を切り裂き、突き刺し、次々に倒していく。
魔法の行使を終えるとクロノは、なのは達が向かっていった方向に視線を向けて、もう三人には届かない言葉を発した。
「頼んだぞ、三人共…!」
皆の協力を得て、なのは、フェイト、はやての三人は、遂に士の前へと到達した。
「……来たか…」
目の前にやってきた三人を目にすると、ディケイドはそう呟いた。
「士君…」
「…いい加減に理解してほしいものだ。俺は貴様らの知る男ではない」
なのはの呟きを聞いたディケイドは、抜刀するようにライドブッカーを取り出し、剣先をなのは達に向ける。
「我らの計画を邪魔するつもりなら…排除するまでだ」
その言葉を聞いた三人は、呼びかけようと思っていた言葉を飲み込んだ。今はこれ以上言葉を発しても、彼は揺るがない。そう思ったからこそ、三人は何も言わなかった。
「…フェイトちゃん…はやてちゃん……」
「……うん…」
「わかってる…」
なのはの呼びかけに、フェイトもはやてもデバイスを構える。なのはもそれに合わせて、デバイスを―――相棒を構える。
「行くで、リイン!」
「はい!」
「「ユニゾン、イン!」」
はやてはリインフォースⅡに声をかけ、ユニゾンを開始する。茶色の髪は銀色のような白に、目はより澄んだ青へ変わる。
「行くよ、バルディッシュ」
〈 Yes, sir. Sonic form. 〉
フェイトはバルディッシュに声をかけると、フェイトのバリアジャケットが変化する。マントがなくなり、より速度重視のものへ。シグナムとの戦闘の時よりも完成度を高めた、『ソニックフォーム』だ。
「行こう、皆!」
「「うん!」」
「バルディッシュ!」
バシュゥ、なんて空気を弾くような音を響かせ、フェイトの姿が消える。次に姿を現したのは、ディケイドの後ろだった。
「はぁぁぁ!」
「っ…!」
背後からハーケンフォームのバルディッシュを振り下ろす。ディケイドは即座に反応し、剣を逆手に持ち防ぐ。その反応速度にフェイトは驚きつつも一旦離れ、今度は横から一閃する。
だがディケイドはそれが命中する前に、バルディッシュの柄を部分を左足で受け止め、地面に押さえつける。
さらに押さえた左足を軸に、フェイトへ向けて右足を振り上げる。
「っ、がぁっ!?」
フェイトは即座に左手の手甲で防御しようとするが、防ぎきれずに吹き飛ばされてしまう。その際、ディケイドによって押さえられたバルディッシュは手放してしまう。
吹き飛ばされたフェイトは近くのビルに打ち付けられる。ビルには蜘蛛の巣のようにヒビが入った。
「うぅ…!」
苦痛に悶えるフェイト。それを他所に、ディケイドはバルディッシュを踏み潰そうと足を上げる。
「アクセルシューター!」
「っ…!」
それを阻止しようと、なのははアクセルシューターを放つ。ディケイドはそれを避けるべく、バルディッシュから離れ、ライドブッカーで弾く。
それに追い打ちをかけるように、はやては周囲に魔力刃を展開する。
左右に三本ずつ。それを二組、計十二本の魔力刃を展開し、切っ先をディケイドに向ける。
『準備完了です!』
「バルムンク!行けぇ!」
十二本の魔力刃は、ディケイドに向けて一斉に放たれる。上下左右、縦横無尽に駆ける刃。
だがそれもディケイドはことごとく躱していく。その隙になのははバルディッシュを拾い、フェイトの元へ向かう。
「フェイトちゃん、大丈夫?」
「う、うん…大丈夫…」
フェイトはなのはからバルディッシュを受け取ると、ゆっくりと立ち上がる。
「結構、状況厳しいね…」
「うん…でも、絶対にやらなきゃ」
なのはの言葉にフェイトは頷く。
ディケイドはその間にライドブッカー・ガンモードで魔力刃を打ち抜き、さらになのは達に銃口を向けた。
「来るよ!」
「うん!」
引き金が引かれ、放たれた弾丸をなのは達は飛び上って避ける。二人はそれぞれの射撃魔法―――アクセルシューターとプラズマランサーを使って、はやては残っていた魔力刃で迎撃した。
「はぁあっ!」
「っ!」
次の瞬間、フェイトはディケイドへ向けて飛び出す。その途中でハーケンフォームを形成し、再び振り下ろす。
ディケイドはそれを剣で防ぎ、鍔迫り合いを始める。
「士を…士を返せ!」
「返せとは、変な言い掛かりだな?その男は死んだと言った筈だ」
「でもその体は士のものだ!だから、返せっ!」
フェイトは一度弾き、また振りかぶる。何度も振り下ろされる鎌を、ディケイドは全て剣で防ぐ。
「フェイトちゃん!」
〈 Buster mode 〉
なのははレイジングハートを変形させ、矛先をディケイドへ向ける。
それを視認したディケイドは、鍔迫り合う隙にフェイトをバルディッシュごと蹴りだす。
「レイジングハート!」
〈 Divine buster 〉
「………」
〈 Dimension buster 〉
なのはは驚きながらも直射魔法を放ち、ディケイドも直射魔法で迎え撃つ。二つの魔法はぶつかり合い、大きな音を立てて爆発する。
〈 Dimension slicer 〉
「フンッ!」
「わわっ!?」
爆発によってできた煙で視界が悪くなる中、ディケイドは魔力斬撃を三発も放つ。魔力刃を使い切ったはやては、慌てつつも回避行動に出る。
だがその途中で、三つの斬撃が一点で交わるように交差すると、分裂するように六つの斬撃になる。
「そんなんあり!?」
それを見たはやては悪態をつきながら、攻撃を避けていく。
「はやてちゃん!」
「よそ見していていいのか?」
「っ!?」
はやてを心配して声を上げたなのはだったが、ディケイドの声ですぐに向き直る。
ディケイドは引き金を引き、弾丸を打ち出す。なのははそれを見て対応しようとするが…
バシュッ!
「えっ!?」
その前に弾丸が複数に分かれる。だがこの攻撃は、なのは達はよく知っていた。
(これは…士君の…!)
元々は不意をつく為の技だった筈。誘導操作が苦手な彼は、この技を上手く使い切れていなかった。
「これの対処方は―――」
〈 Exelion mode 〉
「前に出ること!」
そう言ってなのははレイジングハートをフルドライブモード―――エクセリオンモードを使用。分かれた弾丸がやってくる前に、前に飛び出した。それによりディケイドの放った弾丸は空振りになる。
加速しながらディケイドに迫るなのは。ディケイドは即座にライドブッカーを剣にして、今度はなのはと鍔迫り合う。ギリギリと金属が擦れる音と共に、火花が散る。
「士君!目を覚ましてよ!」
「………」
なのはの呼びかけも意味をなさずに、ディケイドは無言を貫いた。そして鍔迫り合うなのはを蹴り飛ばした。
「きゃああっ!」
「はやてちゃん!」
蹴り飛ばされたなのはが上手く着地すると、魔力斬撃に追われていたはやてが転がってくる。フェイトもそこへやってきて、三人が丁度並ぶ。
ディケイドはそれに対し、三人へゆっくりと三人の元へ歩いていく。
『三人共、聞こえる!?』
「っ、エイミィさん!?」
そんな時、三人の耳にエイミィの声が響いた。急に聞こえたそれに、三人はかなり驚いた。
『実はクロノ君に頼まれて、アースラで士君の解析をしていたの』
「解析…?」
「クロノが…なんで…?」
『まぁクロノ君なりの心配の仕方なんだと思うよ?』
ていうかそんなことは置いといて、とエイミィは言う。
『で、解析した結果なんだけど…おかしなのが出てきちゃったの』
「おかしなの…?」
『うん…実は…』
少し重みのある声のまま、一旦間を置いてエイミィは口を開いた。
―――今、士君は“ユニゾン状態”になってるみたい。
後書き
次回の投稿は早くて日曜。遅くて一週間後ぐらいかと。
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