牙狼~はぐれ騎士~
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第二話 結婚
第二話 結婚
「・・・何時はこの男を夫とし・・・」
夜・都会のオフィス街に存在する場違いな教会で結婚式を挙げる男と女。
男も緊張しているのか武者震いをしている。
この男・一見好青年そうに見えるが実は裏では女を食い物にし使い捨てのボロ雑巾のように捨ててきた男だった。
そして今隣に居る花嫁に魅了され真の愛を語ろうと結婚を申し込んだのだ。
「誓います」
男が誓いの言葉を交わしたその時だった。
「!!」
急に神父の姿が消え周囲が一気に暗くなった。
「な・・・なんだ・・・」
顔を伏せている花嫁は何事もないように伏せたままだ。
「おい!どうなってんだよ!」
男が花嫁に触れようとした瞬間。
「キシャアアアアアアアアアアアア!!!」
顔を上げた花嫁の悍ましい表情が・・・
「うわああああああああああああああああああ!!!」
男の断末魔の叫びが響き渡る。
風が吹き荒れる中、山小屋に佇む闘真。
「今日は風が穏やかだな」
『お前・・・騎士らしくないセリフだな~痛!』
イルバに突っ込まれ闘真はイルバを指で弾いた。
そして薪を割り始めた闘真が汗を流していると一人の少女が駆けつけた。
「闘真!」
「若葉?」
道着のような装束に身を包んだ黒い短髪の少女の名は若葉。
闘真の格闘術の師であり魔界騎士に仕えていた家系に生まれた少女だ。
「今日は修行しないの?」
「ん?今日は風が良いからな」
「全く騎士たる者修練を欠かしちゃだめだよ・・・久しぶりに稽古をつけてあげようと思ったのに。そんなんじゃ立派な騎士になれないよ?」
「うるせえな・・・何の用だよ?」
「あそうだ!指令書もってきたんだ!!」
懐から指令書と呼ばれる封筒を取り出した若葉は闘真に手渡した。
闘真も懐からライターのようなものを取り出し魔導火と呼ばれる特殊な炎で指令書を焼くと魔戒文字が宙を舞った。
「またホラー?」
「ああ・・・行ってくる」
ブーツの紐を締め黒いコートに身を包み魔戒棍を携えた闘真が指令先であるオフィス街に向かった。
夜
「何時はこの男を夫とし・・・」
オフィス街の一角にある誰もいない暗闇の教会で男性と女性が生涯の誓いの儀をかわそうとしていた。
「・・・誓います」
男が女への愛を誓ったその時だった。
「ふふふ・・・シシャアアアアアアアアアアアア!!!」
「!?」
突如不気味に笑い始めた女はそのケープの中から醜い顔を出し男に襲い掛かった。
「ひ!・・・ひいいいいい!!」
必死に逃げ惑う男だが花嫁の怪物は男を逃がさぬように教会のドアを抑え込んだ。
その時だった。
「!!」
天井を突き破って表れた闘真の蹴りが怪物に直撃し怪物を叩き落とした。
怪物が地べたに落ちると男は隙を見つけ教会を逃げ出した。
怪物は男を追いかけようとするが闘真が飛び掛かり行く手を阻む。
「く!そ!!」
闘真の目にも止まらぬ三連撃が顔・溝・顔に突き刺さり怪物が吹っ飛ばされた。
するとイルバが口を開いた。
『奴はホラー・ズーク』
「ズーク?」
『男を誘惑して自分に惚れた男を食うホラーだ』
「女のホラーかよ・・・」
『気をつけろ~女は怒らすと怖いぞ~』
『ギシャアアアアアアアアアアアアア!!!』
イルバの話を遮りズークは花嫁衣装を飛び散らせ真の姿をさらけ出した。
堕天使のような翼に異形の爪。
「確かに・・・おっかないな」
減らず口を叩きながら闘真は魔戒棍を構えた。
飛び掛かるズークを闘真は片方の棍で受け止めもう片方で吹っ飛ばした。
だがズークは翼を羽ばたかせ滑空し闘真に爪で襲い掛かった。
「く!」
血飛沫が舞い闘真は吹っ飛ばされるが着地して踏みとどまり魔戒棍を構え直した。
『闘真!外に出すと厄介だぞ!』
「だったらこの中で仕留める!!」
早期決着を試みた闘真が魔戒棍を天に掲げ円を描いた。
円から光が降り注ぎ闘真の身体を緑の鎧が包み込んだ。
旋風騎士・風狼
魔界の砂時計がカウントダウンを始めた。
「!!」
闘真が飛び上がりズークの翼を狼風剣で切り裂き滑空能力を奪った。
地面に叩き付けられたズークが闘真に向かって腕を振り下ろすと目にも止まらぬ速さで三つに切り裂かれてしまった。
『ギシャアアアアアアアアアア!!!』
唸りを上げるズーク。
そして闘真は狼風剣の柄を繋ぎ一本の剣に変えた。
疾風狼牙剣
「!!」
疾風狼牙剣の二つの刀身から光が形成されていきズークに向かって飛び掛かる闘真。
「・・・風月乱舞・・・!!・・・でああああああああああああああ!!でい!でい!」
ズークに向かって一撃が決まった瞬間乱舞のように次々とホラーを斬る闘真。
「でえい!!」
『キエアアアアアアアアアアアアアア!!!』
決めの一撃が決まった瞬間断末魔の叫びを上げズークは消滅した。
狼風剣を納め鎧を解除する闘真。
『このホラーは利用され続けてきた女に取りついたようだ・・・その仕返しに自分が魅了した男を食い物にする・・・ひでえ話だぜ・・・』
「女は怖いって言うが・・・気の毒な話だな」
『騎士のくせにホラーに情がわくとはまだまだだね~まぁ今回襲われそうになった男は平凡な男だったからか?』
「うるせえ」
イルバの皮肉を聞きながらコートを靡かせ教会を後にする闘真。
その瞬間教会は魔力から解放され真実の姿である廃墟となった。
闘真が拠点にしている山小屋
「!!・・・く!!ふん!!」
「せい!!せいいいいやああ!!」
裏の林で若葉と格闘の組み手をしている闘真の姿が・・・
見たところ闘真の方が押されている。
「まだまだ!こんなんじゃホラーは倒せないよ!」
「お前が魔戒騎士になった方が良かったんじゃねえか?」
「女は魔戒騎士になれないの!行くよ!!はあああ!!」
「はああああああああ!!!」
飛び掛かってくる若葉を格闘で応戦する闘真。
こうして闘真の一日は過ぎていくのだった。
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