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不老不死の暴君

作者:kuraisu
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第五十九話 セアの家

 
前書き
FFTのED後、主人公達は死都から生還しているってつい最近公式設定になったらしい。
なんかどうも鴎国のゼラモニアのレジスタンスに参加しているようだが…… 

 
トマジから大金を巻き上げ、もといぼったくりに対する慰謝料を払って貰ったセアは自分の住居の方へと向かった。
自分の借りている住居はダウンタウンにある。
市街地の中心部にある地下へと続く階段を下った場所にある外民の居住区だ。
ヴァンやパンネロもこのダウンタウンで暮らしているのだ。
ダウンタウンは地上とは違い、帝国兵が警備をしていない。
偶に巡回で来るには来るが余程大騒ぎをしない限り、基本的に干渉して来ない。
その為、必然的に治安は地上に比べて悪く、犯罪者のたまり場にもなっている。
セアが自分の住居に向かって歩いているとバッシュと鉢合わせた。

「なんでダウンタウンに?」
「解放軍のアジトがどうなったのか気になってきたのだが……。もぬけの殻になっていた。おそらくオンドール候と合流したのだろうな」
「ああ、解放軍のアジトもここにあったのか。ま、ラバナスタに拠点を置くならここ以外置く場所がないか」

セアの言葉にバッシュは頷いた。

「それで、君はなんでここに?」
「いや、ただ一度自分の借り宿に戻ろうと思ってな」

セアの答えにバッシュは興味を引かれた。

「君の家か。よければ上がらせてくれないか?」
「……別にいいけど何も出せないぞ」
「かまわん」

バッシュの軽く笑いながらの返答にセアはこっちだといって自分の住居に案内する。
セアは自分の住居の扉を開けて中に招き入れた。

「……掃除しないのか?」
「やるだけ無駄だ。また散らかるからな」

セアの住居は足の踏み場ない程、様々なもので溢れかえっていた。
なにかのレポートや用途が不明な器具の数々が床に散乱しているのだ。
一応、奥のスペースに机と椅子と本棚とベットがある為か綺麗に整理されている。

「まぁ、踏まれてなんか壊されても困るからとりあえず奥に来てくれ」

その言葉を聞いてバッシュはなんとか床に散乱しているものを踏まないようにして奥の片付いているスペースに移動する。
そしてセアに椅子をすすめられてバッシュはその椅子に座った。
すると机においてある一冊の本にバッシュは興味を引かれた。
本には【森のオオカミ】と記されてあった。

「興味があるなら別に読んでいいぞ」

セアは床にあるレポートをひっくり返しながら言った。
バッシュはなにもすることがなかったのでとりあえず読んでみる事にした。

『山と海に囲まれた小さな街。
豊かで平和なこの街には、ひとつの心配事がありました。
それは森に住んでいる1匹の大きなオオカミのこと。
いつのまにか棲みついていた凶暴な獣は、時おり遠吠えを響かせ、街人を震え怖がらせるのでした。
しかし、そのオオカミは街人を困らせるつもりではなく、本当は人と仲良くしたい、友達をつくりたいと遠吠えを上げていたのでした。』

挿絵にオオカミの遠吠えに怯える街の人々と寂しさのあまり涙を流しながら遠吠えをするオオカミが描かれている。
お互いの事を知らないが故にこんな状況になっているのだ。

『そんなオオカミの姿をみかねた街の狩人は、手助けをすることにしたのです。
「オオカミよ。何故あなたが人に恐がられるのかわかりますか?
それは、あなたの姿が怖いからなのです。」
どうしたらいいのかとオオカミが尋ねると狩人は言いました。
「あなたに人の姿になる魔法をかけてあげましょう。」
その言葉が終わると、オオカミは人の姿に変わっていました。
感謝するオオカミに狩人は忠告しました。
「あくまで姿だけで人に変わったわけではありません。
 決して声を出してはいけませんよ。
 あなたはオオカミなのですから――。」』

挿絵にオオカミを哀れんで人の姿になる魔法をかける狩人の姿が描かれている。

『人の姿になったオオカミは、森を抜け街に向かいました。
これで友達をつくることができる。
顔には眩しい笑顔を浮かべていました。
通り過ぎる人は皆、誰だろう?と不信がりましたが、
その笑顔に緊張を解き歓迎するのでした。
これまで恐ろしい形相の顔の人しか見たことがなかったオオカミは、
街の人から向けられた笑顔に感激しました。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りは暗くなってきました。』

挿絵に人に化けたオオカミが嬉しそうに街を歩く姿が描かれている。
今までオオカミに描かれていた寂しそうな顔が嘘のような表情だ。

『オオカミは森に帰りました。
人の姿は元に戻り、口を閉じる必要はなくなりました。
けれど、もう遠吠えを上げることはありません。
今日という素晴らしい日を狩人に感謝しながら眠りにつきました。
そんなオオカミを、狩人は優しく見つめるのでした。
そして──。

山と海に囲まれた小さな街。
豊かで平和なこの街には。その昔、ひとつの心配ごとがありました。
しかし、そんな心配を抱くことはもうありません。
街では勇敢な狩人を称える声が響き渡っていました。
その声は、街人を震え怖がらせることもなく、
いつまでもいつまでも止むことはありませんでした。

──オオカミの大群が街へ向かってきていることに気付くまでは。』

挿絵に街に迫る腹をすかせたオオカミの群れが描かれている。
寂しさを紛らわす為に、大きな遠吠えをあげて自分の縄張りを築いていたオオカミが死んだが為に。

「救いようがない話だな」

バッシュは読み終わった本をそう評した。

「俺は結構好きなんだけどな」

セアは探していたレポートを数枚拾い上げて、整えながら話す。

「基本、生物は無知だ。それが故に喜劇や悲劇を生む。そのことをその御伽噺はよく表現できてると思うんだがな」

セアの言葉にバッシュは言い返すことができなかった。
しばしどちらも黙り込んでいたが、ふとバッシュがセアが拾ったレポートを真剣に見ているのに気がついた。

「なにを読んでいる?」
「別になんでも……いや、別に教えても大丈夫か。馬鹿弟子も王女様も何故かドラクロア研究所に詳しい空賊もここにはいないわけだし……」

セアは床に座り込んで、腕を組む。
そしてブツブツとなにかを呟いていたが、やがて考えが纏まってバッシュに話しかけた。

「俺は700年以上生きている」
「ブルオミシェイスで既に聞いた話だ」
「ああ、その間、どうやって生活費稼いでたと思う?」
「……モブ退治や傭兵をして稼いでいたのではないのか」
「まぁ、それもそうだが、他にもフリーの研究者として活動しててだな」
「なるほど。では床に散乱しているレポートや器具は研究の為のものか。しかしこんな大雑把な管理でよいのか?」
「簡単な実験と理論の構築しかこの部屋ではしてないから問題ない」
「そういうものなのか?」
「そういうものだ。少し話が逸れたが最初に砂海亭で貴方と出会う少し前にフリーの研究者として1ヶ月弱活動してたんだ」

セアはそう言うと持っていたレポートの束を机の上に放り投げた。
バッシュはそのレポートの提出先の場所が書かれている部分を見て目を見開いた。

「ドラクロア研究所に雇われて……な」
「では、君はアルケイディア帝国の兵器開発に協力を……?」
「よく誤解されているが、別にドラクロアは兵器開発だけしてるって訳じゃない。まぁ、帝国の兵器開発を一手に仕切ってるし、兵器開発部門が研究所内で一番大きい部門だから勘違いされるのもしかたないのかもしれないが……」
「なら君はなんの研究をしていたんだ?」
「人工的に魔石を精製する研究をしていた。その割にはひたすらミストの吸収率を高めるだけの研究だったがな」
「それはまさか――」
「ああ、今思えばその成果が人造破魔石の合成に活用されていたんだろう。……ミュリンを狂わせ、ベルガに人外の力を与える切欠を造った一端は俺にあるってことになるな」
「それで……どうするつもりだ?」
「さぁ。だが、実はビュエルバから戻った後、俺はドラクロアの所長であるシドと会っているんだ」
「なっ」

予想外のセアの発言にバッシュは絶句した。

「その時にシドからアルケイディアに手を貸してくれないかと誘われた」
「……それで君はなんと答えたのだ?」
「俺は自分から国家に縛られに行くような人間じゃないんでね。答えは保留にしておいた」
「保留……なのか」
「ああ。だが、その時気になることをシドは言っていた」
「気になること?」
「『そう遠くない日に我が帝国は歴史を動かす戦争をする』とな」
「アルケイディアとロザリアの大戦のことか?」
「俺もそう思って聞いてみたんだが『ロザリアなど前座にすぎん』って言ってたな」
「……ロザリアが前座?他にアルケイディアと戦える国家など存在しないだろう。いや、まさかイヴァリースの外にも進出する気なのかシド達は」
「さぁな。ヤクト対応型飛空石の開発にも成功しているからそれもありえるだろうな。だが、根拠なんかなにもないんだけどそうじゃない気がするんだよな」
「?根拠もないなら何故そう思う」

バッシュのある意味当然の疑問にセアは軽く微笑みながら答える。

「なんというか、あの所長は人間の国や亜人の集落なんか眼中にないような気がする。ただそれだけだ」
 
 

 
後書き
しかしLovのアグリアスの記述によればゼラモニアは物凄く治安が悪いようだ。
独立を叫ぶゼラモニアの民達とそれを許さぬ鴎国による厳しい粛清。
その結果として多くの血が流れているらしい。
おまけに畏国王が兵を派遣するとかいう噂もあるらしくきな臭いことこの上ない。
 
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