パンデミック
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第五十五話「犠牲を強いる作戦」
前書き
更新が遅れてすみません。
ちょっと忙しい時期に差し掛かりまして………
―――【エクスカリバー本部・旧第3会議室】
今は誰も使っていない旧第3会議室。
人の管理がなくなり、倉庫になりつつある部屋に、クラウソラスのメンバーが集まっていた。
「………というわけだ」
タガートが会議の内容をメンバーに伝えた。
「まったく……………今回は色んなことが一度に起こりすぎだろ………」
レックスが頭を抱えて、古くなった椅子に座り込んだ。
会議に同席していたネロも、苛立った様子を隠せなかった。
「適合者の集団…… 侵入経路不明の感染者……ブランクの暴走……それらを片付けても今度は装甲壁の修復
が残ってる………今まで本部で起きなかった出来事が一度に発生した………」
「………悪ぃことの前兆か? これは………」
タガートとネロは同時にため息を吐いた。
「………それで、結局ブランクはどうなるの? それも会議で決まったんでしょ?」
クレアがタガートに聞いた。
「ブランクは大丈夫だ。味方に危害を加えなければ、今まで通り作戦に参加できる。しかし………」
そこでタガートは言葉を詰まらせた。
「また暴走しちまったら、次は無い………って言いたいんだろ?」
レックスがタガートの言葉を先に言い切った。
タガートは静かに頷いた。
「全員集まってるんだな」
旧第3会議室のドアが突然開かれた。
ドアの向こうには、白Yシャツ姿のブランクが立っていた。
全員が驚いた表情を浮かべた。
「ブランク!? お前、もう歩いて大丈夫なのか!?」
「どうってことはない。大丈夫だ」
レックスが心配するのは無理もない。
Yシャツの袖や襟の隙間から、巻かれた包帯が見えた。
「お前……腕を固定するギプスはどうした?」
「あぁ、壊した」
ブランクの腕にあったはずのギプスは、本人の手で壊されていた。
「タガート、レックス、クレア、ネロ………心配をかけたな」
クラウソラスのメンバーは安堵の表情を浮かべたが、すぐに微妙な表情になった。
「お前が復帰したのは喜ぶべきだが……お前の最近の評判は分かっているか?」
「あぁ、暴走したことで俺は一気に危険視されるようになった……結成当初から積み重ねた信頼が
あっという間に崩れた………はぁ……どうしたものかな」
ブランクの言葉に、レックスは笑顔で答えた。
「決まってんだろ! これから作戦に参加して大手柄立てりゃ、すぐに信用取り戻せる!!」
「そうだね。ブランク、皆のために戦えば、皆またブランクのことを分かってくれるよ」
レックスとクレアの言葉に、ブランクは思わず笑みを浮かべた。
「待て、ブランク。次の作戦に参加するな」
タガートの言葉に、全員が一瞬沈黙した。
「……はぁ? 何言ってんだ、タガート?」
「……………タガート。まさか本当に実行する気か?」
「あぁ。危険で無謀な賭けだが……ブランクの信用が"強制的に"取り戻せるかもしれない」
―――ブランクが旧第3会議室に来る2時間前………
タガートはネロと共に、ヴェールマンの部屋の前に来ていた。
「…………お前の考え……"小を殺して大を生かす"を認めない司令に通じると思うか?」
「思っていない。だが、これしかない。半ば強引にでも信用を取り戻すんだ………」
「ん? タガート、ネロ……お前達が私の部屋に来るなんて珍しいな。どうした?」
ヴェールマンは穏やかな表情で2人を迎えた。
「司令、ブランクの信用を……強引ですが、取り戻す方法を提案します」
「! ………聞かせてくれ」
「"エリア4"に、ブランク抜きで大多数の兵士を動員した作戦を展開するんです」
"エリア4"とは、防壁の高さが80mにも及ぶ、"世界最悪のレッドゾーン"だ。
感染者、突然変異種の個体数は最多。これまでの兵士の犠牲者数も最多。
全世界のエクスカリバー各支部も、"エリア4"だけは敬遠するほどの地獄。
そんな場所に、本部の戦力であるブランク抜きで作戦を展開すると言うのだ。
「タガート………自分がどんな無茶を言っているか分かっているのか?」
「無茶だからこそ成り立つんです。クラウソラスの実績を改めて確認すると、討伐数が最も多いのは
ブランクです。いや、最早本部で一番の手柄を立てていると言ってもいい。このまま作戦に参加しても
ブランクは問題無く戦えるでしょうが………問題なのは周りの兵士です」
「兵士達の間でも、ブランクの暴走が"不信感"として広まっています。周りの兵士達がブランクに不信感を
抱いたまま、連携もまともに出来ないのでは話にならない。………そのための提案です」
「"エリア4"はたとえブランクがいたとしても、攻略は不可能です。でも…………」
「"ブランクがいれば、人的被害はより抑えられたかも知れない"」
「タガート………まさか………」
「はい……次の作戦は、多数の兵士に犠牲を強いて、ブランクへの信用を強制的に取り戻します」
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