パンデミック
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第五十四話「報告と処遇」
―――【エクスカリバー本部・会議室】
本部防衛作戦の報告と交戦記録、そしてブランクの今後の処遇を決める会議が始まろうとしていた。
会議室には、支部長以外の上層の人間がほぼ全員揃っていた。
全部隊統括指揮官であるヴェールマンも参加している。
ヴェールマンの両隣には、"クラウソラス"と"カラドボルグ"のメンバーがそれぞれ座っていた。
しばらくして、会議室の一番奥のドアが開かれ、支部長が入ってきた。
「さて、私で最後ですか?」
支部長の質問に、全員が頷いた。
「それでは、会議を始めましょう。…………まずは被害報告から」
ヴェールマンが立ち上がり、報告を始めた。
「第1装甲壁のゲートは大破。装甲壁自体のダメージが大きく、元通りに修復するのに約2ヶ月。
第2装甲壁のゲートも破られましたが、装甲壁へのダメージは少なく、ゲートさえ修復すれば
問題は無いでしょう。必要な資材の60%は揃っていますが、全て揃うまでどれほどかかるか…………」
「…………そうですか」
「あれほど大量の感染者に囲まれていたにも関わらず、被害は思ったより少ないな」
「ヴェールマン、君の指揮能力の高さには感服した」
「ありがとうございます」
ヴェールマンは一礼し、席に座った。
「では次に、襲撃者に関する情報について、です」
タガートが立ち上がり、報告を始めた。
「実は………あの感染者による本部の被害は、司令が報告した通りなんですが………どういうわけか
本部前の市街地には全くと言っていいほど、被害がありませんでした。グリーンゾーンは健在のままです」
「どういうことだ?」
「はっきりしたことは分かりません………ただ……」
「ただ?」
「これは主観でしかないんですが……感染者の群れは、まるで本部のみを狙っているように見えました」
タガートの言葉に、全員が黙り込んだ。
少しして、支部長が口を開いた。
「まさかとは思いますが………感染者の制御、でしょうか……」
その意見に、ヴェールマンは賛成だった。
「あり得ない話じゃないですね。感染者の中には適合者が数人紛れ込んでいました。おそらく彼らが
感染者を手引きしたんでしょう」
「感染者を手引きした?」
「もしそうだとすれば…………敵は何故、どうやってこの本部を襲撃した?」
一番の問題点は、敵の目的と方法。
何故、全世界で一番防御の硬い本部を襲撃したのか。
どうやって大量の感染者を本部まで連れてきたのか。
「目的と方法がはっきりしない分、敵の脅威は計り知れないものです。皆さんには、引き続き調査を
お願いしたい。よろしいですね?」
「「了解」」
「では次に、ブランクの処遇についてです」
この言葉を聞いた途端に、支部長の隣に座っていた幹部が立ち上がった。
「彼は敵と同じ適合者だ。暴走して敵に多大なダメージを負わせた。そこまではいい。しかし、問題は
暴走したブランクがヴェールマンを殺そうとしたことだ。……もしもう一度暴走した時は、どうする?
今度は味方を皆殺しにするかも知れない。ブランクを今まで通りにさせるのは危険なのではないか?」
ヴェールマンは座ったまま、その意見に反論した。
「暴走はしましたが、それで彼を危険視するのはどうかと思います。彼は我々にとって必要な戦力です。
暴走しないように導いてやるために我々がいます」
「彼は暴走し、君を殺そうとした。その時点で彼は敵と繋がっているかも知れないんだぞ!?
感染者の手引きを手伝った可能性だってあるんだ!」
幹部の言葉を聞き、座っていたネロが立ち上がり、反論した。
「おい、ブランクはエクスカリバー結成当初からのメンバーだろ。疑うってのはおかしいだろうが」
「座れネロ。立場をわきまえろ」
タガートに諭され、ネロは幹部を睨みながら席に座る。
ネロが座り、ヴェールマンが再び口を開いた。
「確かにブランクは私を殺そうとしました。しかしそれ以前に敵を殺そうとした。ブランクの攻撃で、敵も
少なからず損害を受けたはずです。そう考えると、ブランクは責められるどころか、称賛されるべきです」
「………しかし!」
「それに、ブランクはエクスカリバー結成当初からのメンバーです。なので、ブランクのことは知っている
つもりです。…………彼は敵ではありません」
「分かりました」
「支部長!?」
「ブランクについては、今後もヴェールマン司令に任せます。始めから恐れて行動を制限していては
窮屈でしょう。今回はブランクの功績に免じて、暴走の件は不問にしましょう」
「ありがとうございます」
「しかしヴェールマン司令。彼がもう一度暴走し、味方の命が危険に陥った場合……分かりますね?」
「………………始末は私がつけます」
「…………結構」
「では、今回の会議はここまでにしましょう。報告がある方は、早急にお願いします」
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