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ラーメン馬鹿

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第二章


第二章

「さもないとこれだけの味は出せんとよ」
「まずかラーメン出したら鹿児島の母ちゃん達に怒られるったいね」
「鹿児島たいね」
「けんどもここのラーメンの味は鹿児島じゃなかとね」
「九州たい」
「そればい」
 二人は自分達のラーメンを九州のものだと言うのである。
「おいどん等は九州ラーメンば作っとおとよ」
「最高の九州ラーメンたいよ」
「へえ、じゃおい等今九州で最高のラーメン食っとるとね」
「その通りばい」
「じゃあ次は日本で最高のラーメン食いたいとね」
「そうたいね」
 調子に乗ってか今度はこんなことを言う彼等であった。
「日本で最高のラーメン」
「食いたいと」
「ああ、すぐにそうなったるったい」
「待っとるとええばい」
 二人も彼等の今の言葉を笑顔で受けた。そうしてまたラーメンの勉強に励む。そんな日々を過ごしているうちに二人のラーメンは地元で話題になりやがてネットやマスコミで全国に知られ。遂にはテレビで放送されるまでになった。この日テレビで有名な美人アナウンサーが来て二人のラーメンを取材に来たのであった。全国区の番組である。
「ここのラーメンが今話題になってるんですけれど」
「んっ!?そうばい?」
「初耳とよ」
 実は取材が来るというのも今はじめて思い出した二人だった。テレビのカメラやマイクを見てキョトンとさえしている。話は聞いていたが完全に忘れてしまっていたのだ。
「道理で最近客が多かと思ったら」
「そんな訳だったとよ」
「そうなんですよ」
 アナウンサーは流暢な標準語で二人に言うのだった。
「それで今回こうしてですね」
「うちのラーメン食べにきたとね」
「そげんことね」
「はい、そうです」
 こう二人にまた言った。
「それでですね。是非一杯」
「よし、わかったとよ」
「今作るばい」
「最高のラーメンを」
 こう応えてから早速ラーメンを作りはじめる二人であった。その間にアナウンサーは屋台の席に座りカメラがそこに向けられる。しかしここで二人が出したラーメンは一つではなかった。
「えっ!?」
「あんた達も食べるとよ」
「ほら、遠慮せんと」
 周りのスタッフの分もであった。
「今からどんどん作るとね」
「食べるばい」
「あの、それは」
「いいとよ」
「だから遠慮せんとね」
 戸惑いを見せるアナウンサーに対しても言うのであった。彼女の前にラーメンを一つ差し出しながら。そのラーメンの乳白色のスープからは湯気が立ちその中には麺とチャーシュー、それにもやしと紅生姜、ゴマが奇麗に置かれていた。豚骨独特の香りさえしてきている。
「ほらほら、食べて」
「皆で」
「冷めんうちにね」
「あの、僕達もって」
「それって」
 スタッフ達は生放送にも関わらず戸惑いの声を出してしまった。
「いいんですか?」
「けれど」
「けんどももそんでももなかたいよ」
「そうばい」
 その戸惑う彼等に対して言う二人であった。
「うちの店に来たらラーメンを食べる」
「それしかなかとね」
「それはそうですけれど」
 アナウンサーはここでも戸惑った声になっていた。
「でも」
「だからでももなかとよ」
「ささ、早く」
 いささか強引にまた彼等にラーメンを勧める。
 
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