機動戦士ガンダムSEED DESTINY~SAVIOUR~
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第二十二話 叱責
前書き
クレタ沖で生き延びたミネルバ。
甚大な損害を受けたミネルバは…?
戦闘を終え、ミネルバに帰還したシン達。
インパルスとセイバーを除いた機体は多少の損害はあったが修理出来ない程ではない。
フリーダムを撃墜寸前まで追い詰めたシンを褒め称えようとして、整備士達がインパルスの近くまで来たが、シンはそのまま俯いているクレアに近づくと彼女の頬を叩いた。
クレア「っ!!」
シン「馬鹿野郎!!どうして指示に従わなかったんだ!!お前が敵に突っ込んだせいで、ミネルバのみんなの命が危険にさらされたんだぞ!!」
クレア「…………」
シン「確かにお前は強いよ。でも何でも1人で出来ると思うなよ」
レイ「シン、そのくらいにしてやれ。彼女も反省しているだろう」
シン「ああ、今回は指揮官の俺の責任だからな。俺の力不足だ…。クレア、前にアレックスが言っていたことがある。力を持つならその力を自覚しろ。」
それだけ言うとシンはMSデッキを出ていった。
あれから数週間後、ミネルバは現在クレタ島の港にてクレタ基地のザフト軍と合流し、補給に当たっていた。
とは言うものの、艦自体はまだまだ元の姿とは程遠い外観だが、今は艦の修復に手一杯のようだ。
甲板に出ると、すでに日が傾き始め、辺りは夕陽に染まっていた。
クレアは手摺りを掴みながら空を見ていた。
レイ「クレア」
クレア「レイ…」
クレアが後ろを見遣るとそこにはレイがいた。
クレア「…何?レイまでお説教?」
レイ「…全く、お前はアカデミーの頃と変わらないな……突っ掛かるような言い方しか出来ない。まるでアレックス達と会うまでのシンのようだ……」
“シン”という単語を聞いた時、クレアは今まで気にしていたことを口にする。
クレア「レイ…」
レイ「何だ?」
クレア「シンが言っていた“力を持つ者なら、その力を自覚しろ”って…どういうこと?」
レイ「ふむ…」
クレアの問いにレイは顎に手を当て、しばらく考えると口を開いた。
レイ「クレア、俺達は何故軍から機体を預けられていると思う?」
レイは海を見つめたまま、クレアに問いかけた。
クレア「それは戦闘になった時に、戦うために……でしょ?」
武器がなければ、戦えない。
だからその武器を自分達は預けられている。
レイ「確かにそれもある。だが、ただ戦闘をするためだけではないんだ…MSには軍の力を見せ付けるという役割も担っている」
クレア「軍の力……?」
レイ「ああ。その力は弱すぎても、逆に強すぎてもだめなんだ。弱すぎれば、こちらがやられ、強すぎれば…ただの破壊になる可能性もある…。敵の戦意を失わせるのが目的なんだ、それ以上の力を振るえば、戦闘意思のない者までを殺してしまう。それは破壊者にすぎないだろう?」
クレア「……確かに、そうだね。僕達は破壊を楽しんで戦っているわけじゃない」
レイ「そうだな。お前は前の大戦で父親を失ったんだったな?」
クレア「…殺されたの、フリーダムに」
レイ「ああ…俺もお前の気持ちは分かる。俺もフリーダムを憎んでいるからな」
クレア「レイも…?」
レイ「俺には兄がいた。兄は人に恐れられたりもしていたが、俺には優しい兄だった。兄を殺したフリーダムを俺は許すことは出来ない。だからクレアの気持ちは理解出来るつもりだ」
クレア「レイ…」
レイ「クレア、ミーティングルームに行くぞ。議長が俺達に話があるらしい」
クレア「うん…レイ」
レイ「?」
クレア「…ありがと」
レイ「…ああ」
2人は甲板を離れ、ミーティングルームに向かう2人であった。
ミーティングルームには既にシン達が来ていた。
他には艦長がモニター横の席に座っていた。
タリア「あなた達。そこに並んで頂戴。デュランダル議長からあなた達にお話があるそうよ。議長もお忙しい方だから30分しか時間は取れないけれど、心して聞きなさい」
アレックス達がモニターの前に並び、しばらく待っていると椅子に座ったデュランダル議長が映し出された。
アレックス達は敬礼する。
デュランダル『皆、クレタでの戦闘は非常に大変なものだったようだね。取り敢えずパイロットの君達が無事で何よりだ』
そう言うと議長はすぐに目を細めた。
デュランダル『しかしながら、死者も多数出た上にミネルバの損害も甚だしい。オーブ軍は相当数の戦力を先の戦いに注いだようだ。それだと言うのに君達は誰1人欠けることなく生き抜いた私は君達を誇らしく思うよ』
アレックス「ありがとうございます。」
デュランダル『それにしてもAAとフリーダム…彼らは一体何をしたいのかね?オーブの国家元首をさらい、ただ戦闘になると現れて、どこにも属さないという立場をいいことに好き勝手に敵を撃つ。確かに強いが、あくまで才能によるもので特に努力はしていない。不殺を貫いているようだが、ただの自己満足にすぎない。支離滅裂な言動を繰り返し、地味な主人公から主役の座を奪い、姉と恋人のスネをかじり、自分は働かずに引きこもる毎日。友人の婚約者を奪い、詰め寄られると“止めてよね”と逆ギレ。そして飛び出した、コズミック・イラ史上に残るあの極悪台詞。彼の台詞は友人の眼鏡を涙で濡らした。原作どころかOPやED、この作品にすら登場しない眼鏡だが、彼はきっと婚約者の遺影を見るたびに思うのだろう。キラがいなければ今頃は……と、この先ずっと』
ハイネ「(酷え…ボロクソじゃねえか…)」
シン「(そんなことすれば恨まれるよな普通…というか地味な主人公って俺のことか?)」
レイ「(眼鏡とは一体?誰だか知らんが哀れだ…)」
ルナマリア「(というか議長、ちょっと台詞が危ないですよ?)」
ステラ「(眼鏡って誰?)」
クレア「(会ったことないけど何か凄い同情出来るんだけど)」
アレックス「(キラ…お前という奴はラクスだけでは飽きたらず…というかギル…何故あなたがサイ・アーガイルを…?)」
ナオト「(誰だか知らないけどその眼鏡君可哀相…)」
ボロクソに言われている眼鏡ことキラの友人、サイ・アーガイルにシン達は思わず同情した。
デュランダル『とにかく、新しい機体については一考するとしよう。向こうの被害もただならぬものだろうし、しばらく戦闘は無いだろう。ゆっくり休み給え』
全員【はい!!】
全員が敬礼した頃には時間は30分を経過しようとしていた。
艦長が通信を切る準備をしようとすると…。
デュランダル『艦長、君も本当によくやった。ご苦労様。』
そう艦長に微笑む議長の顔が映し出され、向こう側から回線は切られた。
しばらく部屋に沈黙が流れる。
しばらくして、艦長は端末に目を落としながら言った。
タリア「議長が仰られた通り、パイロットは全員これより休暇、休養とします。解散!!」
そう言うと艦長はミーティングルームから出ていった。
クレア「シン」
シン「ん?」
クレア「ごめん!!」
ミーティングルームを出ようとしたシンにクレアが駆け寄ると謝罪と同時に頭を下げた。
シン「は?」
クレア「命令無視して、挙げ句にフリーダムに挑んで迷惑かけて…」
シン「そのことかよ。反省してるんだろ?」
クレア「う、うん…」
シン「ならいいさ。反省してるなら次の戦闘で挽回して見せろよ、お前はデスティニーインパルスを託された優秀なパイロットなんだからな」
クレアに向かって笑いながらそう言うと、シンはクレアに背を向け、ミーティングルームを後にしようとする。
クレア「えっ!?」
優秀なパイロットと言われたクレアは驚き半分、嬉しさ半分といった様子だった。
シン「でなけりゃ、ただの無鉄砲の馬鹿だけどな」
そう言うと、悪戯な笑みを浮かべてシンはミーティングルームからいなくなる。
最後の一言がなければ、完璧だったと思うけれど。
やはりクレアはシンの去っていったドアを睨んでいた。
どこかしら、前とは違う雰囲気で……。
そして、パイロット達は残された時間を無駄にしないように訓練をしていた。
主にクレアの技量向上になっているが。
クレア「この!!」
シン「甘い!!そんなんじゃルナにも勝てないぞ!!」
クレアとシンのインパルスが近接訓練をしていた。
性能差もあり、クレアのインパルスの猛攻にシンのインパルスが徐々に押され出し、少しずつ後退を始める。
クレア「とどめ!!」
追い込んだクレアのインパルスが模擬刀を大振りした瞬間、シンのインパルスがコクピット部に模擬刀を宛てがった。
シン「…俺の勝ちだな」
クレア「何で!?私のインパルスの方が性能が上なのに!!」
シン「お前はインパルスの性能に頼りすぎなんだよ」
2人は訓練を中止して、同時にコクピットから出る。
アレックス「クレア。君は確かに強いが、熱くなると動きが雑になる。まるで昔のシンのようだ。」
ナオト「前よりは良くなってはいるんだけどね」
クレア「うぅ…」
レイ「クレア。まだ乗れるか?今度は俺とやるぞ」
クレア「え?でもレイのグフは?」
レイ「俺は訓練用のディンで構わない。さあ、始めるぞ」
クレア「いいの?インパルスとディンじゃ性能が…」
レイ「性能だけで優劣が決まるわけじゃない」
クレア「分かったよ。後悔しても知らないからね!!」
レイとクレアがそれぞれの機体に乗り込む。
ステラ「シン、クレア…大丈夫?」
シン「ん?大丈夫だよ。クレアは強い。鍛えれば今よりもっと強くなれる。赤服は伊達じゃない。」
ルナマリア「そうよね。レイやシンの次に成績良かったのクレアだし」
シン「まあな、でもまだ早いようだけどな。見ろ」
ステラ「?」
シンが指差した方向を見ると、僅か数秒で模擬刀を喉元に突き付けられているインパルス。
ハイネ「おいおい、もう終わりかよ」
あっさりと終了した模擬戦にハイネが呆れたように言う。
クレア「何でディンがインパルスより早く動けるの!?グフでもないのに!!」
レイ「熱くなっているからだ。動きが雑になって動作が分かりやすい」
結局、しばらくしてもクレアはレイに一本も取ることなく訓練終了した。
レイ「いいかクレア。お前は落ち着いてさえいればインパルスの性能を限界まで引き出せる。」
クレア「ぼ、僕はいつでもインパルスを限界まで…」
レイ「ならば何故お前のインパルスより機体性能が低いシンのインパルスやディンに負ける?」
クレア「…返す言葉もございません。」
レイ「デスティニーインパルスの機体性能はフリーダムすら凌駕するが、燃費が悪すぎる欠点がある。攻撃はビームシールドで防がず、かわせ」
クレア「う、うん。デスティニーインパルスは機動力があるからかわした方が有利なの?」
レイ「一概にそうとは言えないが、かわし方一つでいくらでも有利な体勢に持ち込める…。アカデミー時代のお前は余裕のある時はそうしていたぞ」
クレア「へ?そうなの?」
レイ「ああ、シン達も努力して今の実力を身につけた。お前も努力を怠らなければ今より強くなれる」
クレア「うん!!シン、次は負けないからね!!」
シン「期待しないでいるよ」
ハイネ「俺も先輩として負けられないな。代機が来たら腕を鍛え直さないとな」
ミネルバでの束の間の平穏の時であった。
後書き
シリアスとギャグが混ざり合った話。
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