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Monster Hunter ―残影の竜騎士―

作者:jonah
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 モノローグ - monologue -

 
前書き
モノローグ突っ込むの忘れてた…
すみません…(´・ω・`) 

 
――――――…
――――…
――…



「何故だ。何故だ何故だ何故だ!」
「ド、ドクター。落ち着いて…」
「これが落ち着いてなどいられるものか!!」

 薄暗い部屋の中。日光を浴びたのは先日が半年ぶりといえるほど籠もりっぱなしの、愛すべき私のラボ。半生をここでの研究と実験に費やした。
 床に叩きつけたレポートを、歯軋りしながら睨みつけた。後ろの研究員が神妙な面持ちでそれを拾い上げ、埃を払う。

「私の研究の何が間違っていたというのだ!?」

 白熱灯に浮かび上がる題――――“合成竜の創造法と人の生活におけるその有効性”。

 合成竜の創造!

 まさにヒトが神の領域に手を届けんとする最高の技術の確立を、何故ヒトが自ら拒否するのだ? これこそ人類が長年探し求めてきた、竜に怯えること無く安住するための生物兵器となるではないか!
 強くガラスを殴りつける。強化ガラスの向こう側、緑色の養殖液がゴポリと泡立った。十数のコードにつながった私の作品は、虚ろな金の瞳をあけ、再び閉じた。

「あと…あと少しで私は、先祖に追いつく…! あの古代人に手が届くかもしれないのに……!」

 空を飛ぶ鉄の船。
 馬より速く陸を駆ける車。
 海を隔てた地においても相手の声や姿を届ける箱や、一瞬で精巧な絵を写し出す小箱!
 古代人は、そんな高度なカラクリを数多く作ったという。
 そのうちの1つに、“融合生命(キメラ)”というものがあったらしい。融合生命とは私が呼称したものだが、つまり、数種の動物の特徴を持った生命体のことだ。例えば獅子の頭、鷲の翼、蛇の尾をもつ魔獣。「きまいら」と古代人は文献に記していた。キメラの語源なのだろうか。それとも別物? 考えただけで心が踊る。
 話を戻そう。
 それ――融合生命の技術、といっても遥か昔に記された文献なので、多くのことは載ってはいなかったのだが、とにかくそれを私なりに応用して出来上がったものこそが、この合成竜なのだ。人を襲わず、竜が襲来したら民を守る兵となって命を賭して戦う、竜の兵。まるで古代人最大の発明と謳われる幻の竜機兵のようではないか。
 あと1歩で完成するというのに、上の役人共は一切援助を打ち切ると云って寄越した。曰く、それは危険であると。道徳に恥じると。

「クソッ。あの忌々しい役所勤めの石頭め。奴らのような爺ばかりが上席を占めるから、この国はいつまで経っても変われないのだ!」

 太古の叡智に満ちた世界は、私達の想像もつかないような物で溢れていたのだ。失われた智恵は、なによりも大きな人類の損失である。
 それを取り戻さんとして何が悪い。手を届かせんとして何が悪いというのか!
 人類の過去の栄華を蘇らせるためには、“今”の殻にはまったままではいけないということが何故分からない!
 危険? 実験に危険はつきものだ、今更何を偉そうに!
 誰もが夢見る、竜の脅威から解放された安息の地。
 街から街へと馬を駆る商人も、人々を守るため体を張って竜を狩るハンター達も、彼らの帰りを待つその家族も。誰も竜という恐怖、その身と愛する者の“死”に怯えずに済むのだ。
 そんな世界の実現のさきがけとなる合成竜の研究は、剣やら槌やらを振り回すより余程能率的ではないか!
 いつまで原始的な行動しか取らないのか。我々人間は、鋭い爪も牙も、堅い鱗も、空へ逃げる翼も持たない。だが、なによりも切れる頭脳を持っているからこそ、今までこの凄まじい野生の脅威から身を守ってきたのだ。
 それを今使わないでどうする!
 クソッと悪態をついたとき、後方、研究室の入り口から不思議な響きの声が響いた。

「その通りよ」

 低い、しわがれた老人の、しかし瑞々しく、若き青年のような力強さも秘める声だった。


 その場にいた誰もが振り向く。闇からぬらりと現れた影は――――光だった。



――…
――――…
――――――… 
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