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魔法少女リリカルなのはANSUR~CrossfirE~

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Ep28女帝の洗礼~Emperatriz Bautismo~

†††Sideシグナム†††

「アギトッ!!」

『おうよ! 猛れ、炎熱! 烈火刃! 』

――紫電一閃――

愛剣“レヴァンティン”に紅蓮の炎を纏わしての一閃。きわめて単純だが絶対の信頼を置く一撃・紫電一閃を放つ。剣閃の向かう先は、我ら守護騎士ヴォルケンリッターに復讐するために蘇った復讐者、元管理局員3人で構成されたカルド隊、そのリーダーであるカルド。

(ガウェイン・クルーガー三等空佐・・・)

その正体は、かつての私が殺めた男だ。“闇の書”の守護騎士として、主の命がままに生物を殺し、魔力を収集していた頃の・・・。
カルドは手にする大剣で迎撃をするつもりなのか、大きく横に薙いできた。激突する私の“レヴァンティン”の紅蓮の炎と、カルドの大剣の闇色の炎。

「っく・・・! 貴様・・・っ!」

「許されようとは思わん。恨まれても憎まれても仕方がないことをしてきたのは事実だからだ。だが、それでも私はここで死ぬわけにはいかんのだ」

「貴様らの主・・・八神はやてのためか・・・」

周囲に2色の炎が散っていく。鍔迫り合いは完全に拮抗し、少しでも気を抜けば押し切られる。カルドの実力を読み違えていた。確かにこの男の実力は高くはない。それは当たっている。しかし問題なのが、カルドを動かす原動力である“復讐心”。それがこの男をより強くしている。

「そうだ。我らに居場所を与えてくれた愛おしき存在(おかた)。何に於いても守るべき大切な存在(おかた)。故にこそ、同じ相手に、敗北は許されない・・・!」

さらに力を強める。私が少しずつ押し始め、拮抗が崩れ始める。だがそこに邪魔が入る。こちらに迫るのはカルド・イスキエルド。
彼もまた、我ら守護騎士に復讐する者。ジータ・アルテッツァ空曹だ。

「死ねぇぇーーーーーーッ!」

闇色の炎を刀身全体に纏わせた大剣を担ぐように突進してきて、裂帛の気合と共に私に大剣を振り下ろす。

――パンツァーガイスト・パンツァーシルト――

私は鞘、そしてその上からシールドを二重展開し、完全防御体勢に入った。フライハイトの神秘(チカラ)が発揮されている今なら、これで防げるはずだ。

「ふんっ!」「せい!」

イスキエルドへの防御態勢のまま、カルドとの鍔迫り合いを続行する。片手になったことで押していた“レヴァンティン”が押され、再び拮抗する。イスキエルドの大剣がまず1層目のシールドに衝突。莫大な闇色の炎がシールドを隔てて周辺の大気を焼いていく。

「そのまま燃え尽きろ・・・燃え尽きてしまえ・・・!」

左右の腕が徐々に押され始めていくのが判る。1対2でこうまで苦戦するのか・・・。ヴォルケンリッターの将が聞いて呆れる。

『シグナム!!』

「『安心しろ、アギト! この程度では、私は墜ちん!』おおおおおおおおおおッ!!」

咆哮と共に“レヴァンティン”でカルドの大剣を捌き、全力の蹴りを顔面へと入れる。脚甲とカルドの兜が激突した金属音とは別に、カルドの首より鈍い音が耳に届く。
「むごっ!?」

まともに私の蹴りを受けたカルドが吹き飛ぶが、私は気にも留めずにイスキエルドへと“レヴァンティン”を振るう。イスキエルドは防御でもなく迎撃でもない回避を選択し、私の側から瞬時に距離を置いた。

「相手が神秘を手にしただけで、俺たちが後れを取るだと・・・?」

「魔族があれば、復讐は果たせるはずだったのに・・・」

コキコキと首を鳴らすカルドと、イスキエルドが俯きながらそう呟いているのが聞こえる。

「お前たちの復讐という想いは確かに強い。だが、我らの主を思う想いの方が遥かに強い」

殺したい想いか守りたい想い。どちらの方が強いとは決められん。しかし、我ら守護騎士に限って言えば、守る想いの方が強いと断言できる。

「ふざけるなよ・・・。何が強いだ。そんなモノ、俺たちが根こそぎ刈り取ってくれるわッ!!」

「俺たちの(いかり)が、貴様程度の(おもい)に敗れてなるものかッ!!」

――我に滾るは怨嗟の業火――

2人同時に闇色の炎による斬撃を飛ばしてくる。ならば証明しよう。これが、私の想いの強さだ。“レヴァンティン”を横一文字に構え、もう1発カートリッジをロードする。全身を駆け抜けるフライハイトの神秘を宿した魔力。身体が軽くなる。今まで感じたことの無い高揚感。

「はぁっ!!」

≪Sturm Winde≫

扇状に衝撃波を打ち出す。闇色の炎が不可視の衝撃波によって掻き消されていく。その光景に驚愕しているのか、一切の動きを止めたカルド隊へと一気に接敵する。

「はっ!!」

まずはイスキエルドを薙ぎ払うように“レヴァンティン”を振るう。反射的なのだろうが奴は斬撃を大剣で防ぐ。が、直前まで呆けていた所為で踏ん張りきれずに弾き飛ばされた。すぐさま2人目、カルドへと“レヴァンティン”を振るう。

「おのれ・・・!」

カルドはイスキエルドとは違い、しっかりと私の行動に付いてきた。それでも大剣の防御もろともカルドを弾き飛ばす。

「アギト!」

『よっしゃ! もう1発、烈火刃いくぜっ!!』

もう1度、私の炎熱変換能力をアギトの炎熱加速によって強化。空いている左手に紅蓮の炎の剣を作り出す。

「『剣閃烈火!!』」

そして、全てを薙ぎ払うように左腕を振るう。

「『火龍・・・一閃!!』」

「「ぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」」

私の最強の一撃は、体勢を整えた直後のカルドとイスキエルドをまともに飲み込んだ。爆炎が私たちの戦っていた空域を紅蓮に染め上げる。アギトが『直撃! これで決まりか!?』と興奮気味に様子を窺っているが、私としては喜びより、虚しさの方が大きかった。

「油断はするな、アギト。今まで戦ってきた者たちとは文字通り次元が違う」

『解かってるけどさ、あたしらの火龍一閃をまともに受けて無事なはずがねぇよ』

そうは言うが、やはり油断は出来ん。初めての交戦の時も、その油断で撃墜された。

『・・・ん? なっ!? シグナム、アレ! 後ろっ!!』

いきなりのアギトの焦り様。何だ?と思い、前方への警戒を怠らぬよう、言われた通りに後ろを見る。

「アレは・・・!」

移した視線の先、そこには見憶えのある建造物が佇んでいた。

†††Sideシグナム⇒スバル†††

「なかなか数が減らないよぉ、ティア~」

「弱音吐いてないで、きっちり仕事しなさいっ!」

あたしのお母さんと、ティアのお兄さんが居ないことで、あたしとティアはシャルさんの指示に従って地上の“レジスタンス”相手に奮闘している。
クロノ提督のところの武装隊や“五課”の人たちも頑張っているけど、一向に“レジスタンス”の数が減らない。それはそうだ。何せ“レジスタンス”はあるゆる管理世界に居るのだから、その数は計り知れない。

「隙ありぃぃッ!!」

あたしに向かって“レジスタンス”数人が銃を向けてきた。あの人たちのトリガーに掛かっている指に力が入るのが見える。

――クロスファイアシュート――

でも焦ることなんてない。あたしには長年組んでいたパートナーが付いているんだから。ティアの魔力弾はすごい精度で“レジスタンス”の人たちの武装を弾き飛ばしていく。その衝撃で動きを止めてしまってるその人たちに、あたしが止めに一撃必倒の打撃を鳩尾に入れて、それでおしまい。これをひたすら繰り返す。もうどれだけ殴ってきたか数えられなくなってきた頃、“ヴォルフラム”から通信が入った。

『スターズ3、4! アグアマリナとアマティスタの接近を確認しました!』

アグアマリナとアマティスタ。お母さんとティアのお兄さんのコードネーム。ティアと頷き合って、お母さん達の居る位置を聞き返す。返ってきたのはお母さん達が居る位置が、遥か後方とのことだった。

『特務六課スターズ3と4。テスタメント幹部との交戦に移るため、この戦域から離れます!』

『ごめんなさい! あとはお任せします!』

そう通信を入れると、あちこちから『頑張れよ』とか『任せたぞ』って声援が返ってきた。嬉しいのは嬉しいんだけど、相手はお母さんとお兄さんなわけで。でもみなさんはそれを知らないわけで。何だか複雑な気分になったり・・・。

『行くわよ、スバル! あたし達が2人を止めるんでしょっ!』

ティアがそう念話で言い放ちながら先行していく。あたしも『うん!』と強く頷いて、ティアの後に続く。でも “レジスタンス”が「行かせると思うなよ!」って、あたし達の行く手を拒むために立ち塞がった。

「邪魔をするな!」

――鋼の軛――

そんな“レジスタンス”を閉じ込めるように白い帯が地面から生えてきた。

「往け。たとえ我に神秘が無くとも、お前たちの道くらいは作れる」

「「ザフィーラ!」」

狼形態のザフィーラが佇んでいた。あたしとティアは「お願いします!」と頭を下げつつ、ザフィーラの脇を通ってお母さん達の元へと急ぐ。

「ティア! あそこ!」

「ええ! 確認したわ! 間違いない、お兄ちゃんと、あんたのお母さんよ!」

大混戦だった戦域から少し離れた場所。そこにお母さんとティアのお兄さんが居た。向こうもあたし達に気が付いたのか歩くのを止めて、ただ、あたし達の方を見る。

「お母さん。お母さんは・・・ううん、お母さんの目的は何?」

「お兄ちゃんも。お兄ちゃんはどうして、何が目的でここに居るの?」

問い質す。お母さん達の目的を知りたい。そう、“テスタメント”の目的としてじゃなくて、未練(ねがい)の方が知りたい。

「さっきね、ギンガやゲンヤ(おとう)さんにも同じこと聞かれたの」

「え・・・? ギン姉とお父さんに・・・会ったの・・・?」

予想外の返しに呆然となる。お母さんはただコクリと頷いて、被っていたフードを脱いだ。視線はひたすらあたしに向けて、お母さんはゆっくりと続きを話し始める。

「ついさっきまでミッドで、ある違法魔導師集団を追っていたの。追い詰めるところまで行っていたんだけど、ゲンヤ(おとう)さんの108部隊に捕捉されててね。それで少し話をしたの。そして、今のスバルのように聞かれた、目的は何?って」

「それで、どう・・・答えたの・・・?」

「それは――・・・って! 何をするつもり!?」

お母さんがあたし達の背後を見て、驚愕の声を上げた。さらにティアのお兄さんも「何を考えているんですか、マスターは!?」って、あたし達の背後を見て驚いている。だからあたしもティアも後ろを振り向いたんだけど・・・。
山脈と山脈の間にあったポッカリ空いていた空間。確かに、そこはさっきまで何も無かったはず。それなのに今は違う。しっかりとそこに存在している。

「ねぇ、スバル。アレ、もしかして・・・大きさが違うけど・・・」

「う、うん。シャルさんとルシルさんの記憶の中で見たアレ、だよね・・・」

大きさというより高さは2倍くらいだけど、確かにアレだ。

「スバル、今すぐここオムニシエンスから離れなさい!」

「もうすぐ障壁が展開され直す。その前に、ここから離れた方が良い!」

お母さんとティアのお兄さんは、少し焦り気味でそう言ってきた。

†††Sideスバル⇒フェイト†††

ルシルが前線に居ないことで私は、クラウディアの武装隊や“五課”の混成支援部隊の援護に回っていた。その大半がシャルと合流しての、敵の航空戦力である戦闘機、“アギラス”の掃討。

「結構減らしたね、シャル。これで地上の部隊が動きやすくなればいいんだけど」

もう何機目かの“アギラス”を撃墜し終えて、シャルに声をかける。

「そうだね。にしても、ルシルは何をしているんだろう・・・ね? 愛しのフェイトがこんな戦場で待ち恋い焦がれているというのに。はぁ、時間にルーズというか何というか・・・はぁ」

「ルーズも何も約束してないから。恋い焦がれても・・・まぁ少しは。じゃなくて!って・・・シャル、アレ・・・!」

シャルに振り向いて、気付く。“レスプランデセルの円卓”と呼ばれる円形の山脈の間にポツンと空いていた空間に、さっきまでは無かったモノがあった。

「え、なに?・・・うそ、でしょ。なんで・・・アレが・・・!?」

高さが3kmくらいの銀の塔が1基。その周りにも円形に並べられた8基の銀の塔。さらにその周りに、は同じく円形状に設置されているソーラーパネルかな?と何かの建物が20基。さらにさらに、その周りに10基の砲台が円形状に設置されているのが、こんな遠く離れた場所からでも見て取れた。

「ちょーーっと待て。おいおいおいおいおいおい。そんなモノまで引っ張り出してくるのか、ヨツンヘイムの魔術師・・・!」

「ねぇ、シャル。アレって、アレ、だよね・・・?」

完全に呆れ果てているシャルに尋ねると、シャルは呆れか怒りか判らないけど、大きく溜息を吐いた。

「ヴァナヘイム帝都・防衛魔道砲塔エンペラトゥリス・バウティスモ。高さが尋常ないけど、間違いない。あんなモノを持ち出してくるなんて・・・何考えてるわけ?」

頭を抱えて唸り始めた。地上部隊と航空部隊がざわつき始めてる。

「ちょっ、ちょい待ち! 撃つつもり!?」

「え!? 撃つって何を!?」

私とシャル、2人同時に焦り始める。何せ1番高い中央の塔、“エンペラトゥリス・バウティスモ”の先端に、白銀の閃光が生まれたからだ。

「あの光、あの色・・・! 間違いないよ!」

白銀の光。それを見て一瞬で理解した。アレだ。アレが、艦の駆動炉の魔力結合を分断した次元跳躍の砲撃だ。

「くっ! どれだ!? どれを狙っている!?」

シャルが“トロイメライ”を待機形態の指環に戻して、右手に“キルシュブリューテ”を携えた。そして「我が言の葉は幻想紡ぐ鍵」と詠唱して、取り出した黄色い陽炎のような短槍を左手に携える。

「砲速がどれだけか判らないけど、確実に迎撃しないと!」

「迎撃って! そんな無茶な・・・!」

さらに強くなる白銀の光。そして、それは放たれた。遥か上空。私たちが居ない、何もないところへと。空に波紋が浮かんで、その波紋へと吸い込まれた白銀の特大砲撃は消えた。次元跳躍したんだ。狙いは何なのかは判らないけど、何処かの世界の何かが・・・たぶん狙われて、消された。

「何を狙ったのかは知らないけど、とりあえずはよかった」

シャルが小さく安堵の溜息。そして左手に持っていた黄色い短槍を消した。私も「そうだね」って返すけど、シャルとは違って素直に安心できない。あの砲撃の威力や効果は知っている。ほとんど回避が出来ずに防御も出来ない。そんなモノに狙われたものが何なのかが気になって仕方がない。

「・・・フェイト、来たよ」

「え・・・?」

声を掛けられて顔を上げると、シャルがある場所を指差していた。私はその指の差す場所に視線を移す。そこには蒼い翼アンピエルを背負ったルシルが居た。だけど今までとの唯一の違いは、ルシルが空戦形態のヘルモーズだってことだった。

・―・―・―・―・―・

「これは一体どういうことですかっ、ディアマンテ!! 洗礼の一撃の発射命令など出していませんし、許可を出した憶えもありません!」

ハーデは椅子から立ち上がって、モニターに向かって怒鳴る。そしてすぐに咳き込み、大きく肩で息をしながらもモニター越しに居るディアマンテを睨みつけた。しかし彼は、ただ静かに『必要なことだったからです』と弁明する。ハーデは椅子に座り直して1つ溜息を吐き、「聴かせてください」と先を促した。

『追跡していた違法武装集団の次元航行艦を発見。なかなか尻尾が掴めない連中でしたので、これを好機と思い、洗礼の一撃を使用。少しお待ちください・・・5、4、3、2、1、着弾・・・』

モニター越しのディアマンテは落ち着き払ってそう言い、

『敵艦の撃沈を確認。マスター・ハーデ。私の選択した任務はこれにて完了です』

そう締めくくった。ハーデは「乗組員はどうなりましたか?」と尋ねる。ディアマンテはこともなげに、『無論全員死にました。わざわざ管理外世界で悪事を働く集団です。生かしておいても無意味でしょう』そう告げた。それを聞いたハーデは大きく嘆息する。

「その件に関してはもう何も言いません。相手の自業自得ということにしましょう。用が済んだのでしたら、今すぐに結界を展開し直してください」

納得はいかないようだが、撃沈された違法武装集団の非道さにも怒りを覚えていた彼女は、それも仕方が無いことだと諦めた。そして、“レスプランデセルの円卓”の結界を戻すように言うが、ディアマンテは首を横に振った。

『このままオムニシエンスの障壁が展開されるまで、オラシオン・ハルディンの砲を使う方が良いかと思いますが?』

「どういうことです?」

心臓付近に手を添えて、深呼吸を繰り返す彼女は聞き返す。

『お解かりなはずです。戦況は芳しくありません。アギラス3隊の内、カプリコルニオが全滅。残りの2隊も半壊状態。レジスタンスに関しても被害は深刻です。幹部たちに関しても、特務六課の連中に苦戦を強いられています。ならば、オラシオン・ハルディンの防衛システムで時間稼ぎを行う方が効率的、かつ確実です』

ハーデにもそれくらいのことは理解していた。このままでは押し切られる可能性があることくらい。そして、自分自身やディアマンテが出撃すれば、まだ押し返すことくらい簡単なことも理解している。しかし今は出られない。何故ならサフィーロことルシリオンを縛っている制限を2段階も解いているからだ。

(私が直接出られれば・・・。ですが・・・)

ルシリオンの“力”を喰らっているからこそ、今もこうして生きていられる。その“力”を少しとはいえ返した。その状態で自ら戦線に出れば、どういう異常が身体に出るか判らない。
それ以前に今こうしているだけでも、辛そうな表情を浮かべている。無論それは見えない。フードの中に隠れているのだから。それに、彼女はまだハッキリと表舞台に出たくなかった。いや、目的が果たされた後であっても出たくはなかった。
彼女は思案する。そして結論を出し、ディアマンテに命じた。

「アギラス及びレジスタンスに後退命令。オラシオン・ハルディンの防衛システムを始動。各幹部に、各部隊の後退援護を。ですが、防衛システムはあくまで牽制砲撃としなさい。決して当ててはいけません。いいですね、ディアマンテ」

『了解しました。砲撃による防衛線を築きます』

通信が切れる。彼女は自らの胸、日に日に鼓動が弱くなっていく心臓付近に手を添えて、鼓動する自分の命を感じる。

(日常生活にすら支障が出てきましたね。戦闘になればどうなるか・・・)

最強の戦力を持ちながら最弱の身体。情けない、と彼女はひとり自嘲した。
 
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