ソードアート・オンライン 守り抜く双・大剣士
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第8話 =シリカとの出会い=
=第35層 ユカSide=
いま私…私とサチはオレンジギルド《タイタンズハンド》の情報を求め街を歩き回っている。
正直言って情報は集まっていない。
まぁ、無料で情報を提供してくれるプレイヤーなんて罠を仕掛けているかお人好ししかいないだろう。
いま私が持っているのはここに来る前、
相手側の狙いの竜使いはアイドルやマスコットのような扱いを受けている…というどうでもよさそうな情報だけだった。
「なかなか…集まらないわね…」
「そうだね…でもこういうものは根気がものをいうから」
「それもそうね。…仕方ない、妹から聞いた竜使いを待っているってギルド片っ端から探しますか」
「…妹もSAOプレイしてるの?」
…そうだった。誰にも言ってないんだったっけ。
ついでだからここで説明しておきましょうか…
私の妹のプレイヤー名は『アスナ』。
あの血盟騎士団副団長の座に君臨してるあの『閃光』よ。
このゲームが始まってアスナは最初、しばらくは引きこもっていて…そして私が引き篭もりになると同時にはじまりの街から出て行った。
入れ違いで姉妹引き篭もってたってわけね。
私は時々外へ出てレベル上げしてたから引き篭もり未遂なんだろうけど。
あの子はどんなことにも腕が立ってたからこのゲームのコツも速攻でつかんだんでしょう。
ただ、その代わり私以外には心を開かなくなった…ううん、私にも心をあまり開いてくれなくなった。
一応姉妹だからってことで情報はくれたんだけど、
なんか…自分のことなんてどうでもいい。まずはクリアを優先すべきって考えが根本にあるらしく…
私がアスナから先ほどの竜使いのことを聞いたときに「自分の体をもっといたわりなさい!」って言ったけど聞く耳持たなかったわ…
姉よりか出来がいいって家族内でも言われてたからプレッシャーなのかもね。
「あ、あの『閃光』がユカの妹さん…」
「そ。だから情報は間違っちゃいないでしょ。」
その情報が「相手側の狙いの竜使いはアイドルやマスコットのような扱いを受けている」なんだけどね…
「ならマスコット欲しがってる寂しい集団探しに行きましょうか」
「寂しいって…でもそれが一番近いかもね。」
私の発言に苦笑いしながら応えるサチ…
寂しいのは外れちゃいないでしょ?
でも、竜使いが35層にいるって話は有名らしく竜使い目当てのギルドが多数いた。
「あそこの人たちに聞いてみよっか。…すいませーん」
サチが早速見つけたらしく声をかける。
ていうかリクヤといいサチといい行動力ありすぎでしょ…なにか原動力になってるものでもあるのかしら?
「竜使いって知ってますか?」
「竜使い…あぁ、シリカちゃんのことだね。次フリーになったら僕たちのところへ入ってもらうんだ」
でかい鎧を着た男性プレイヤーがそう応える。
…そんなごつい鎧着て一人称僕とか…ちょっと引くわね…
「いまどこにいるか知ってますか?」
「私たち、少しそのシリカって子に用事がありまして」
サチの質問に私は補足を加える。
一応目的ははっきりさせておかなきゃ情報くれるとは思わないし。
「シリカちゃんは…いまはほかのギルドについてって<迷いの森>かな」
その情報を手に入れた私たちはその男性にお礼をいいそこを立ち去る。
これ以上いたら目的を問い詰められるわけだしね。
「…<迷いの森>…ね…」
「今はリクヤの帰りを待つしかないのかな…」
「そうね…私たちが行ったら逆に迷っちゃいそうだしね」
そういうことで私たちは街で待機をせざるをえなかった。
=35層 迷いの森 リクヤSide=
「はぁ…はぁ…!」
俺は今、【Title・ラタトスクの騎士】で森を駆け抜けている。
この【Titel】…おそらく称号って意味だと思うんだけど…これは正直大剣士ではありえないスピードで走ることが出来る。
このキャラクターが空中技を多く持ってたからかな…とにかく身軽だ。
「…よし!…さっき別れた光点と同じエリアに入れた!」
エリア編成が変わってしまうこのエリアでは予測して走るのはほぼ不可能だ。
だから俺は無我夢中で走り続けたんだけど…
すると地図上では自分の前を通る光点、俺は遠くの木と木の間から少女そして傍らには水色の小さな竜が走り去るのを見た。
そしてその後から巨大なゴリラが追いかけているのを…
「あれって相当ピンチじゃねぇか!!…くそっ、木が邪魔!!」
森なので木があるのは当たり前、そして今までも獣道だったからそのまま直線であるとは限らない。
…ああそうかよ…さっきサチに聞いたけど俺には『破壊神』って2つ名があるらしいじゃねぇか…
なら見せてやる…誰も見てないけどな。
そう思いながら真っ直ぐいこうとした俺を邪魔した木の前に立つ。
「…獅子戦吼!!」
どんなものにも耐久値は存在する。街が壊せない理由は壁が耐久値∞なのだ…多分…
だが木なら話は別だ。
現実と同じように折れる。燃えるのは確認したことないけど…
ほぼ賭けで俺は大剣を前に突き出しながら獅子の闘気を放つ……ソードスキルを発動させる。
一応システム上なので特技、秘技、奥義、スキル変化技という区別はなく1つにまとめられているが
根本となっているので連携は可能だ。
「…間に合え!!」
全力で先ほどの少女の元へとかけていく。
もう目の前でプレイヤーが死ぬのなんて見たくもない…
結構走ってまだ剣の射程範囲内ではないがここからならモンスターが確認できる…
猿人型モンスター「ドランクエイブ」が三体。
確認した直後、その一体の攻撃をモロに受けてしまう少女を俺は見てしまった。
「っ!?…」
どうする…あの時サチを救った絶風刃を……駄目だ、あれは発動モーションに隙が大きすぎる。間に合わない。
簡単に出せる遠距離攻撃なんか絶対採用されてないだろ、このゲーム。
と、その間にもドランクエイブは少女に向かって棍棒を使ったソードスキルのモーションに入る。
「…俺はまた守れねぇのかよっ…!絶対にさせるかよ…!」
よく見てみると、少しは回復しているようだが少女のHPは既に黄色の注意域に達していた。
レベル差があっても、無防備な状態でソードスキルを受ければ、一瞬で全ゲージを持っていかれる可能性の所にあの少女はいる。
俺には35層なんて早々『死』を感じる場所ではないがあの少女は絶対にいま『死』に直面している。
…一か八か走りながら撃ってみるか…?これも駄目だ。あの子にあたる可能性がある。
絶風刃は遠距離攻撃というすばらしい特性を持っているが命中率が非常に悪い。
ソードスキルで死なないことを祈るしか出来ないのは…辛すぎるだろ…。
そして棍棒が振られる瞬間、通常では信じられない事が起こった。
あの少女の傍らにずっといて回復をしていた竜『フェザーリドラ』が主人を守るようにその攻撃をかばったのだ。
もう長い間このゲームをやっているおかげで
こういったオンラインゲームの常識+AIのパターンも学ぶことが出来た俺には今の行動は信じられなかった。
この世界では、使い魔モンスターとなったモンスター達のAIには、
主人を護るどころか自分からモンスターに襲いかかると言う行動パターンすら存在しない。
とにかく上に決められていることに従う1つのプログラムでしかない。
…はずなのに…な…
さっきのあのフェザーリドラの動きは、どう見ても自らの意思で主人を護るための行動を起したようにしか見えなかった。
絆ってのはすごいな…上からの命令さえぶち壊すんだから…
そんなことを思っていたが一瞬で視点は少女のところへ向かう。
へたり込んでいた少女が、三体のゴリラの群に対して猛然と襲いかかり始めたからだ。
「………っ!!!?…わああああああ!!!!!」
先ほどとはぜんぜん違う動きだった。
俺が見てた限り先ほどまでは自分のHPを最優先にして逃げ回っていたのにな。
明らかに、自分へのダメージを警戒していない無茶苦茶な攻め方だ。
完全に怒りで我を見失っている…
「あのままだとよくて相打ち、悪くて『死』ぬぞ!!」
あの使い魔がせっかく助けた、あの子を死なせたくない!
「はぁぁぁぁ!!虎牙破斬!!」
少女にとどめの一撃を与えようとしていたゴリラのうしろから斬り上げ、そのまま落とす。
単純だが威力はでかい。そのままゴリラはポリゴンとなりはじける。
残り2体!このまま蹴散らす!
「まだまだ!!断空剣!!」
おそらくHP満タンなやつらしいがそんなやつでもお構いなしなのが今の俺。
横になぎ払いそのままの勢いでジャンプしながら斬りあげる。
…よし、1列に並んだ!!
「雷神烈光刹!!」
いまだ少しひるんだままのゴリラを連続で斬りつけ、
うしろのゴリラもろとも通り過ぎ去るように駆け抜け斬りつける。
一種のソードスキルには属性が付くらしく今放ったソードスキルには「雷」らしい。
そして最後に残った2体もいっせいにポリゴンとなり弾けていった。
「…大…丈夫じゃ…なさそうだな…」
「…あたしを独りにしないでよ…ピナ…」
やっぱりショック大きいか…少女は地べたに座り込んで泣いていた。
俺、年下の知り合いなんていないからこういうときどうすればいいのかな…
…羽が落ちてる…さっきの使い魔の羽か?
「えっと…ごめんな、友達助けられなくて…」
「……いいえ…あたしの、あたしのせいですから……。助けてくれて……ありが、とう、ござ……」
と言われても、話すたびに涙が出そうになっててそれを必死に堪えてる顔みると
このままほっとけないんだよな…ていうか罪悪感が、な…
なんだこのネガティブスパイラルは…俺まで落ち込んできた…
「ね、ねぇ…この羽ってアイテムだったりするか?」
1枚だけこの場で残ってるっていうのは珍しい、ていうかほぼありえないことだからな…
奇跡かもしくは…これが必要な場所があるのか…
戸惑ったように少女が顔を上げてきた。
そら、いきなりこんなことをこんな場面で聞かれちゃそうなるか…
遠くじゃわからなかったけどこうしてみると髪は薄い亜麻色で、左右を赤い玉にリボンが付いた髪飾りで結んでいる。
顔立ちはやはり幼く俺たちに比べれば年は絶対に下だ。
こんな可愛ければ中層プレイヤーたちのアイドルにもなるわけだ。
その少女はゆっくりと、恐る恐る羽に触れ、半透明のウィンドウが開かれアイテム名が表示される。
「…ピナの…心…って…」
「ちょっとまって、泣かないでくれよ…心アイテムってどっかで…」
再び泣きそうになる少女をなだめる俺。
罪悪感半端ないって…確かに守れなかったけどさ…
心とついたアイテムをどっかで聞いた覚えがあるのでそれを心の中で復唱する。
心…心…
「あっ!!」
「ひゃぅ!?」
「あ、あぁごめんごめん…」
思い出した!!
確か52層クリアしたくらいにキリトが「47層の<思い出の丘>で使い魔蘇生アイテムが発見された」っていってたな…
「確か47層の<思い出の丘>って場所に蘇生アイテムが…」
「本当ですか!?……47層…」
うぉい!?び、びっくりした…
まだ話は終わってませんよー…でも告げたら酷だけど告げなきゃな…
そう思う前にも少女は肩を落としていた。
安全マージンをとってあせっていたとはいえあの戦い。
おそらくこれ以上上の回は無理があるだろう…
「あの、ありがとうございます…情報だけでも十分です。いつかは、きっとそこまで……」
「…いつか、なんて悠長なことは言えないんだ…
蘇生にはタイムリミットがあるらしくて、3日以内に蘇生を行わないと、
「心」が「形見」に変化して二度と蘇生できなくなるそうなんだよ。」
言ってしまった…でも言わないといけないことだったんだよ…多分…
「そ、そんな……!」
やっぱりショック受けるよな…
大事な友達とあえる猶予が残り3日なんだもんな…
「…ちょっとまってよ…?」
そういえばモンスターがドロップしたけど女性ものだから俺は絶対に不可能、サチも装備できないってやつがあった気がしたな…
ユカは…大丈夫だろう、きっと。
いつも俺に勝ってるうざいやつだけどその分信頼も出来る。
「これがあればレベルが5~7底上げできる…
俺らが一緒に行けば多分その、ピナ…を生き返らせてあげれると思うんだ」
俺が出したのは短剣『イーボン・ダガー』、そして防具『シルバースレッド・アーマー』
それをトレード機能でその少女に送る。
「…あの…なんで」
ここまでしてくれるんですか?だよな、質問って。
何でって言われたら…
「守りたいって思うのに理由は必要か?
そして君の友達を救えなかった罪悪感って言うのかな…それもあるからさ」
うっわ、かっこわるっ!!
恥ずかしい…けど…理由が見つからなかったから仕方ない…
顔を赤くしていると「プッ」と声が聞こえた。
どうやら笑いを我慢できず噴き出しているらしい…
「やっと笑ったな?…あぁもう、笑いたきゃ笑え!!」
「フフフっ…あの、ありがとうございます。あの……これだけじゃ全然足らないと思うんですけど」
足らないって…層思い見ると、ウィンドウの少女側のアイテム欄に、結構な額の金が入力されていた。
恐らく桁が半端な所を見ると、彼女の持つ全財産だと思う。
普通なら確かにこれだけではこのアイテムの相場とは到底釣り合わない。店で売ったほうがいい金になる。
でも…
「金はいいって。どうせ余り物だからな。売って消えるよりもっと友好的に使えるならそっちを俺は選ぶぜ」
「で、でも…」
「俺がいいって言ってるんだからいいんだよ」
「う…はい、分かりました」
意外と物分りがいいな…あの幼馴染なら絶対に引かないだろうけど…
うん、物分りのいい子は大歓迎だな。…ロリコンじゃねぇぞ?
「でも、ほんとに何からなにまで……。あの、あたしはシリカです!改めて、宜しくお願いします!」
ああ、そう言えばお互い名乗って無かった…すっかり忘れてた…
まさか年下から先にされるとは…
俺もしないわけにはいかないな。
「俺はリクヤだ。こちらこそよろしく、シリカ」
俺と少女―シリカ―は握手をした。
新しくこれからよろしくって意味なんだろうな、きっと。
「それじゃあ、サクっとこの森ぬけようぜ!」
そういい俺は地図を出す。
今回は本当にこれに助けられたな…感謝したくないけどあいつに感謝するか…
「あ、地図お持ちなんですね」
「正確には仲間のだけどな。なかったらなかったで多分俺もここきてたぜ?」
俺も正直悪い意味?かどうかは知らないけどシリカ探してたわけだしな。
あの人の依頼を達成しなきゃ行けないし…
さて、街に戻ってサチとユカに合流していろいろしないとな~…
「それじゃあ出っ発ー」
「おぉー!」
俺が称号を変え、白い服に急に変わったのを見てシリカが驚いたのは別の話…ではないぞ?
ひゃぅって可愛い声上げてたし。
ページ上へ戻る