戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十二章 幕間劇
相談事
さて、今夜は出撃が完了次第先に京に行くんだが。今は夜の散歩をしている、無論トレミーが空から見てるから何が来ても大丈夫だが。
「ん?何か水の音がしたな」
そういえば、この近くに川があったな。まあ、こんなに大きな音を立てる密偵馬鹿はいないと思う。でもまあ気になるので行ってみた。歩いてすぐ着いたけど、水の精霊に聞くと誰かが水浴びをしているようだ。男か女かを聞くと、女性だそうだ。詳細は知らないとさ。ならばその目で見てくるかと思い行ってみた。
「何だ壬月か」
「ん?」
俺の声に反応したのか、壬月がこちらに顔を向ける。服では分からんが、いい身体をしているなと思ったな。身体も引き締まっているし、胸はデカくて腰は細くて麦穂と同じくボンキュボンだった。月光のお蔭か、より見えるけど。しかも普段と違い髪を下ろしていて水に濡れているのか、妖艶な雰囲気が出てた。
「この辺りを散歩してたら水の音が聞こえてな、行ってみる途中で水の精霊に問うと女性との事だからな。来た訳だ」
「水の精霊に監視されていたのか、私は?いや何水浴びをしていたのだが、一真様は他の男とは違うのだな」
「何の事だ?」
「他の男共は私が着替えている時に怯えているような感じなのだが」
たぶん怯えているんじゃなくて、照れてたんじゃないのか?俺だったら、仁王立ちしている壬月が着替えていても、普通に話しかけると思うのだが。
「だったら、さっさと上がって来たらどうだ?そろそろ冷えるだろう?」
「そうだったな。そこに私の服があるんだが、頼みとして翼を出してくれるか?」
壬月が上がってきたので、俺は翼を出す。出た壬月は、俺の方に向かってきたので壬月に向かって体を暖める粒子を翼から注いだ。そしたら抱き合ってきて何だと思えば、密着の時が一番早いとか言ってきた。前から、壬月の身体が来たので翼を大きくして6対12枚のを包み込んだ。
正直理性が飛びそうだったが、ここは我慢だ。俺の愛妾だったらやっていたが、壬月とは上司と部下みたいな関係である。久遠の恋人だから自然とそうなったのだが。身体が温まったので、翼を元の大きさに戻してから壬月は服を着替えはじめた。一応俺は後ろを向いてるけどな。
「ふぅ・・・・」
俺は座っていたのか、俺を背もたれのように壬月が俺に身体を預けてきた。服を着ているのか、もう俺の理性は平常に戻っている。あとでこの欲は女性隊員に当てようかな。ただし髪は下ろしたままだそうで、乾かした後でまだ温かいようなのか俺の首筋がくすぐったい気がする。
「っ、くしゅんっ」
「ん?身体、ちゃんと温めたはずだが、拭いたのか?」
「まあ大丈夫だろう。それにこのくらいはいらぬ心配だ」
「そうか。そういえばどうして夜遅くに水浴びしてたんだ?」
「ん?まあその・・・・なんだ・・・・」
「もしかして戦の前に興奮して眠れなかったとか?」
「まあそうかもしれんがな」
壬月は新兵じゃないから、冗談のつもりで言ってみたのだが、何かあるな。しばらく無言の状態で目を瞑り、頭の中に映像が映った。これは過去の事だ。誰でも見れるという訳ではない、こうやって背中でくっつけたり手を握った状態なら少しだけ見れるのだ。そしてしばらく見たら、目を開けて言った。
「壬月よ。悪い夢でも見たのかな?」
「一真様は何でもお見通しのようだ。今日は早めに用事を済ませて寝たのだが、夢の所為かすぐに目を覚ましてしまってな」
「壬月の考えというより過去を見ただけだ。それでどういう夢だった?」
「過去か。そうだな、つまらない夢だが、昔から血塗れになった自分が死者達に罵倒されるという夢を、たまに見る事がある」
「そうか。・・・・それで?」
俺は壬月に振り向かずに答えた。
「その夢を見て思うのだが。自分は呪われているのではないか?と。何しろ罵倒してくる死者達の中には敵だった者だけでなく、戦で散っていった味方の顔がある。まあ奴らに恨まれるのも無理はない。一軍を率いる将としての私の命令は、敵だけでなく、時には味方の命までを悪戯に奪う事がある」
「それは壬月が悪い事では無い。結論から見てそうなる運命なのかもしれないのさ」
「運命か。それもそうだが、誰かが請け負わねばならぬ役目なのだから、命令を下しても誰も後悔はしない。だが、多くの命を奪っているという事実は変わりはない。そういう罪の意識が、呪われているようにしか思えぬ夢を見せているのかもしれん。その夢を見て起きると、汗だくなのでこうして水浴びでもしたくなるのさ」
全てを聡い、受け入れているように感じた。俺はすぐには答えずに、黙っていたが。水の精霊が語りかけてきた。それなら、聖なる水を飲めばその悪しき夢を浄化できるのではないか?と。なるほど、確かにそれは良さそうだが、それでは一時的だなと思いながらも考えていたが。
「大丈夫だ」
「・・・・大丈夫とは?」
「壬月には仲間がいるではないか?それに悪夢を見たら仲間に話してスッキリするのもいい事だと思うぞ」
「・・・・・・・・・・・・」
「まあ、俺は付き合いは長いような気がするが、田楽狭間よりの過去は知らない。が、俺が思うに頼れる仲間がいる事を忘れない方が良い。人間っていうのは、何か悪い事があれば知人や友人に愚痴を語ったりする。そしたら相手は励ましてくれるだろう。それに俺は神だ。悪いモノがあれば、浄化という力で心身を浄化するから、その悪夢に出てくる兵達の罵倒を排除できるかもしれないけどな」
「一真様が皆を引きつける理由が、改めて分かった気がします。そろそろ引き上げましょう。それにもう悪夢は見ないと思いますので」
と言って立ち上がり、俺に手を差し伸べた。まだ色々気にはなるが、もうさっきのような弱音みたいな声ではなかった。まあ、俺が聖なる風で邪を払ったのさ。聖なる水だと効果はすぐ無くなると思ったからだ。そしてその手を握る。が、何かを考えているのか引き起こしてくれなかった。
「壬月?」
「いや、何でもない」
と言って引き起こしてくれた。そして、あまり遅くならないようにと告げて立ち去っていった。俺は壬月に、気付かないように夢に出てくる者達を浄化をし、壬月が血塗れの姿にならないようにしといた。
「そこにいるのは麦穂だろ?出てこいよ」
「あら、気付いていましたか」
「壬月の話を聞いていたら、気と気配と風の精霊で気付いていたよ。盗み聞きしてたな?」
「申し訳ありません。ですが、ありがとうございます。一真様のお蔭で、壬月様は笑みを取り戻しました。それと何かしましたね?」
「まあちょっとした浄化だ。悪夢の種である死者の罵倒は、恐らく死者が霊となって壬月に何かを問いかけてると思ってな。その死者達を壬月から祓った訳だ」
「さすがですね。それにああいう時の壬月様は昔から私の番だったのですが、もうその番はありませんね。では、私も失礼させていただきます。おやすみなさいませ」
俺はおやすみと言った後、優しく微笑んで会釈をして去って行った。ついでに、麦穂にも壬月同様に運を上げといた。麦穂にはそういう邪な事はなかったので、無言だが神の加護をと。
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