トゥルース・サクリファイス
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前書き
グロ回はまだ来ませんね。
来るとしても二話ぐらいあとのことでしょうね・・・。
「よく来てくれたな」
「ああ、それで・・・こいつでいいんだよな?」
俺が持ってきたのは犬の死体。
だいぶ腐敗が進んでいて原形をとどめていないが、自然と腐敗臭はしてこない。
それに、柔らかいはずの体は氷を触っているはずで周りには冷気が漂っている。
・・・なんか異常だ。
「これが・・・ロズミアにかみついた犬の死体だな」
「ああ」
「まあ、はいりたまえ」
そう言って、病院の扉を開けて俺を中へ案内する。
「珈琲か紅茶・・・どちらがいいかね?」
「珈琲で」
「わかった」
そう言って、フルユエンスは珈琲を持ってくる。
もう片方の手には紅茶が入ったカップがあった。
きっと、両方一つずつ入れていたのだろう。
「さて・・・先ず、あの君がいた町はもう狂気の町と化しているだろうな・・・」
「・・・どういう・・・ことだ・・・?」
「先ずは、あの事件の真相を話さなくてはならない」
そう言って、紅茶を一気に飲みほすフルユエンス。
「少し長くなるが・・・。先ず、あの事件の大本はそこにいる犬の死体だ。誰かが、その犬の死体に『ある寄生体』を注射か何かした。そして、その寄生体の話になるが、こいつは生き物の体に入る前はいわゆる『仮死状態』に入っている。そして、生き物の体内に入るとこいつは『怒りや憎しみ』などの感情を何倍、何十倍・・・いや、下手すると何千倍にも増幅する。そして、そいつは『自分が住みやすいように宿主の体を変化』させる。その犬がいい例だ。そして・・・いや、ここから先は場所を変えよう。ついてきてくれ」
と、フルユエンスは犬の死体を持ち、地下室へと降りて行った。
地下なんてあったんだな。
「さて・・・先ほどの寄生体のことを簡単にまとめてみた。説明させてもらうと、先ほども言った通り、この寄生体は宿主の体を自分が住みやすいように変化させるんだ。つまり、その犬は既に犬ではないということになる。全く新しい生物なわけだ。同様にして、ロズミアもそうだったのだろう。具体的にどのように変化させるのかというと詳しくは分からないが、最終的には化け物になるといった感じだろう。その犬はまだ中間段階だ。そして、失敗した場合もあるらしい。適性がなかったとかそんなのだ。だが、まれに完成体ができる。その完成体というのはまさに・・・君だ」
「は・・・?」
「まあ、そこは置いておこう。またあとで説明する。とりあえず、この犬もその完成体の一つ・・・というより、なりかけ・・・つまりあと一歩だったというのだろうかな・・・。見た感じそんなのだ。とにかく、この寄生体の行動は大分パターン化されてる。その一、先ず乗り移る。これを達成しないことには意味がない。乗り移る経路は空気中など液体中などを通じたり・・・と様々だ。ただし、空気中の場合はかなり至近距離でないといけない。液体中の場合は直接摂取しなくてはならない。条件は普通だ。だが、こいつの生命力は異常だ。『適した環境』でなくとも人間何人分の人生を生きていけるのかすらわからない。そこはまだ研究段階だ。次に変化させる。さっきも言った通りこいつは宿主の細胞を自分が住みやすいように変化させる。そして、変化させた後はその生物は最早まったく別種の生き物でそれは新しい生物がこの地球上に誕生したといってもいい瞬間だろう。第三に脱出する。これは、宿主を変化させた後に適性がなかった場合の話だ。そうした場合は宿主の体内から脱出する。すると、宿主は中途半端な体のため抜け出すと体のバランスが一気に崩れて・・・死亡する」
「・・・それでロズミアが?」
「ああ・・・実際に毒を盛られていた可能性もあるが、その程度だとこの寄生体が除去する。おそらく、既に抜け出していたのだろう。・・・さて、次は変化させることの特徴にいこう。この変化のさせ方は宿主にとっても得が多い。先ず第一に先ほども言った通り毒などのものはすべて無効化する。これは宿主に死なれては困るからという一種の防御反応だな。次に筋力や反射神経などあらゆる面で強化されること。それがあのロズミアのようなものだ。まあ、中途半端で終わったようだが・・・。だが、それでよかった・・・。完成体になっていた場合は手が付けられなかっただろう・・・。完成体になるともはや怪物といったほうが正しい・・・。先日、マウスに試験的に寄生体を投与してみた・・・それがこの結果だ・・・」
「な・・・!?」
そこにいたのは怪物だった。
俺は思わず後じさりする。
「・・・大丈夫だ。死体だよ。寄生体は全て抜いてある。だからもう復活することはないだろう。それと、この寄生体の特徴で寄生体が残っていたらいくらでもよみがえる。さらに、よみがえるごとに強化されるという厄介なのがある・・・」
「・・・どうやって殺したんだ?」
「ああ、だが、逆に弱点はその寄生体にあるんだ。先ほども言った通り寄生体を抜いたら体のバランスが崩れるんだ。それは完成体であればあるほど反動が大きい。もうこの状態となると完全に共存し合っているからだ。・・・以上だ」
「・・・それで、俺が完成体ってのはどういうことだ?俺もその化け物みたいになるってことか・・・?」
「いいや・・・わからん・・・。だが、見たところそのような兆候はない・・・。精密検査でもしない限りは分からないだろうが、この病院にはそんな施設はないし、普通の病院に行ったところで体を弄繰り回されるだけだ・・・」
「・・・なるほど。放置するのがいいわけだな。で、その寄生体ってのはどうやって抜くんだ?」
「あ、ああ・・・それは抗体をうつんだ・・・。そうすると、数日で寄生体は死に絶えるか、抜け出すかする。そうすると、そいつは全ての寄生体が抜けたら一日以内に死ぬ」
「・・・それを銃弾として打ち出すことは可能か?」
「可能だ。それにもうできている。装弾数は十二発だ。そのうち一発はそこのネズミに撃ったから残りは十一発だ」
「よし、それをくれないか?」
「ああ、わかった。だが、なんでもない奴に撃つなよ?逆に毒になるからな」
俺は銃を受け取る。
・・・普通のより少し重いな。
それに、心なしかゴツイ気がする。
「弾は十一発しかないから気をつけろよ」
「ああ、わかった」
と、ドアが勢いよく開けられ、床に靴の音が響く。
「おい、フルユエンス!よそ者はまだいるのか!?」
「ああ」
「おい、よそ者!いい加減に出ていけ!!」
と、ショットガンを向けてくる村人。
・・・よく見ると、こいつ入口のあいつじゃないか。
「おい、ここは研究資料とかそういう重要なものが置いてあるんだ。そんな物騒なものはおろしてもらおうか」
「ッチ、それで、オー。どうするんだ?」
オー?
こいつの名前はフルユエンスのはず・・・。
それとも、それが本名なのか?
ここも『オー』精神病院だし。
「オー?それって・・・」
「気にしないでいい。それとこいつなら、ここにとめる気だ」
「何!?」
ショットガンを持った村人が驚く。
奇遇だな
俺も内心びっくりだぜ?
「何・・・お詫びにこいつが村中の連中に酒を山ほどふるまってくれるらしいぜ」
「何!?」
今度は俺が驚く。
それを聞いた村人はこういった。
「そうか。ならいいだろう。おい、お前。・・・今夜はたっぷりいただくぜ?ハハハハハハハハハハハ・・・」
そう言って、村人は乱暴な足取りで去って行った。
因みに村人は鼻歌交じりでかなり上機嫌だった。
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