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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百六十八話 酷い話

 
前書き
お待たせしました。

テレーゼがはっちゃけています。

数話前のテレーゼが国防委員長がトリューニヒトだと言っていますが、テレーゼが勘違いしていただけです。後々指摘されるシナリオです。 

 
宇宙暦794年帝国暦485年7月20日

■自由惑星同盟最高評議会ビル

帝国による拉致被害者の解放及び、捕虜交換の放送により、同盟政府及び軍部も混乱に拍車がかかっていた。ひっきりなしに電話、メール、更に直接公共機関に来る者達が現れていた。それらの殆どの市民が口々に拉致被害者の早期解放を求め、市内では既に集会が開かれる状態になっていた。

そんな中でも、一時はバーナード副議長により落ち着きを取り戻した最高評議会では、3日たった今でも各委員長が困惑しながらも正確な情報収集を行わせた部下達から種々の報告を受け取りながら、喧々諤々と口々に発言していた。

「議長、どうなさるのか?」
「議長、本当に帝国からのアポはなかったのですか?」
「国防委員長、軍部が握り潰したと言う事は無いのかね?」

「何を言うかと思えば、情報交通委員長こそ情報の遮断をして居たのではないのかね?」
「なに!」
「此処で啀みあっても仕方がないぞ、今はどうするかが問題だ」

バーナード副議長が再度意思統一を図る。
「しかし、このままでは、支持率が落ちるばかりだぞ」
選挙に自信のない委員長がポツリと呟くと、それに同調する数人の委員長。

「諸君、問題は支持率云々より、帝国側からの拉致被害者と捕虜の交換を受け入れるだ!」
バーナードの言葉に、皆が考え始める。

「拉致被害者の送還はこの上なく利点がある」
「しかし……問題は、帝国の言う、亡命者の送還か……」
「法秩序委員長、実際の所、スパイ容疑はどうなのだね?」

心配げにアンダーソン議長が質問する。
「はぁ、確かに一般の亡命者にはスパイ活動をしていた形跡は無いのですが……」
ゾマホン法秩序委員長は歯切れの悪い回答を行う。

「法秩序委員長、歯切れが悪いようだがどうしたのかね?」
「はぁ、帝国側へ情報を漏らしていた人物は発見できなかったのですが……」
「なら良いのでは無いかね?」
「いえ、実は取り調べの課程で、法秩序委員会職員が犯罪組織に情報を漏らしていた事が判明しまして」

「なに!それは一大事ではないか!」
「はぁ、その為に、現在内部での取り調べを強化しているのです」
「なんて事だ、帝国のスパイではなく、犯罪組織の協力者が炙り出されるとは」
バーナード副議長が天を仰ぐ。

「軍部としては、今回の件を有耶無耶にする為に、早急に軍事的な勝利が必要であればイゼルローン要塞攻略戦の許可を頂きたいと来ているのですが」
「国防委員長、それは軍部全体の意志じゃないだろう、一部主戦派の考えじゃないか?」
「確かに、宇宙艦隊司令長官ロボス元帥の参謀フォーク中佐からの発案だと聞いたが」

「シトレ元帥からは、とてもじゃ無いが今の状態で軍は戦えないと来ているぞ」
「副議長、その情報は何処からですか?」
「財務副委員長がシトレ元帥の知り合いだ」

「ああ、レベロ議員か」
「そうだ、彼が昨日シトレ元帥と面会して、確認している」
「副議長、困りますな、国防関係は私の元を通して頂けないと」
カスター国防委員長が苦言を吐く。

「すまんな、緊急事態だったからな」
「判りましたよ」
アッサリ謝ったバーナードを見て、カスターも仕方が無いかという顔で頷く。

「今の時点で、軍事行動など以ての外だ。此処は拉致被害者送還と捕虜交換を政府で決定し、帝国側と折衝を始めるべきだと思いますが、議長如何でしょうか?」

主体性のないアンダーソン議長はバーナード副議長の言葉に頷いて、決を採る。
「では、帝国と拉致被害者と捕虜の件で折衝する事に賛成の方はご起立願いたい」
誰も座ったままの者がおらず、全会一致で可決された。

僅か1時間後には全てのメディアによって“拉致被害者と捕虜に関する交渉が行われること、本当に政府は知らなかった”と発表され、即刻フェザーンのベルモント高等弁務官の退任が発表された。

市民はその報道に疑念を持つ者、単純に喜ぶ者などが居たが、多くの住民が町へ繰り出し騒いでいた。
そんな中、憂国騎士団も背後の地球教も今回の件は青天の霹靂であるが故に動きが鈍かった。地球教としてもルビンスキーの報告待ちという所であった。




宇宙暦794年帝国暦485年7月21日

■フェザーン自治領 ルビンスキー私邸

ルビンスキーの私邸では帝国にしてやられたルビンスキーが愛人のドミニク・サン・ピエールと酒を飲んでいた。無論快楽のためではなく、二回にわたり虚仮にされた帝国への憤慨のためのやけ酒であった。

カランと氷の溶ける音がするグラスを片手にドミニクがルビンスキーに皮肉を言う。
「貴方でも慌てる事があるのね」
「此が慌てずにいられるか。帝国め、あの様な手を使ってくるとは」
「フェザーンの黒狐も帝国の銀狐にしてやられた訳ね」

ドミニクの皮肉に舌打ちをしながら眉を顰め考える。

帝国の変わり様は此処数年で驚くべき状態だ。やはり皇帝に変化が起こった事が要因だな、グリューネワルト伯爵夫人か、あの女が後宮に入って以来、人が変わったかのようにあの凡庸な皇帝が精力的に政務を始め改革を押し進めている。

やはりグリューネワルト伯爵夫人が最大の要点だ、確か軍人の弟が居たはずだが、姉に比べて余りパッとした噂は聞かないな、精々姉が皇帝に懇願して失態を功績として下駄を履かせていると聞く、先だっても大佐からいきなり少将へ2階級特進しているが、さしたる功績も挙げていない、しかしグリューネワルト伯爵夫人のアキレス腱と成る可能姓も考えて調べてみる必要があるな、その弟を利用して皇帝の動きを探るのも一興か……

「レムシャイド伯など、単なるメッセンジャーでしか無い」
「裏にいる人が、重要なのかしらね?」
「フン」

「まあ、私には関係無いことだけど、愚痴を聞きながら慰めて上げるわよ」
「フッ」
しかし、何処から漏れた?ドミニクを調べさせたが、怪しい動きなどしてはいない。するとボルテックか?いや、あの小心者に大胆な事が出来るはずが無い。いったい何処から……





宇宙暦794年帝国暦485年7月21日

■銀河帝国帝都オーディン ノイエ・サンスーシ

優雅な昼下がり、ノイエ・サンスーシの日本庭園の茶室ではテレーゼが日本式のお茶を点てながらケスラーと話していた。ケスラーは抹茶の苦みに壁癖しながら受け答えしている。

「レムシャイド伯は良い動きをしてくれたわ」
「些か、気の毒には思いますが」
「まあ、敵を欺くには味方からと言うし、知っていながら迫真の演技が出来るとは思えないし」

「確かに何処からか、漏れるやも知れません」
「でしょ。さて、黒狐はどんな手を打ってくるかしらね」
テレーゼは、ケスラー相手ににこやかに話しかける。

「ルビンスキーに、今のところ、主立った動きはないようです」
「なるほどね、今は総大主教猊下への報告のために資料集めと今後の同盟と帝国との動き辺りを考えている辺りかしらね」

「ニコラス・ボルテックを始め、他の者にも動きはありませんし、今のところは思案中でしょう」
「帝国と同盟を共倒れにし、絶望の中から地球教が救世主と成り、再度地球が宇宙の中心として復権を遂げる」
テレーゼの呟きにケスラーが答える。
「地球教とフェザーンの目標ですな」

「そう、馬鹿としか言いようが無い浅はかな考えよね、帝国と同盟が共倒れになったとしたら、星間国家としての基礎が完全に崩壊するって事じゃ無い、そんな世界なんて、宗教なんかより北斗の拳みたいに暴力だけが支配する世界になるわよ。それに、サイオキシンでラリッタ信者ばかりじゃ、建設的な行動なんか取れないから、各惑星が孤立してそれこそ人類自体が下手すりゃ絶滅するわよ」

北斗の拳が判らないケスラーは頸を捻るが、テレーゼがフォローする。
「13日間戦争と90年紛争の時を描いた小説があったのよ」
「それが、北斗の拳ですか?」

「そそ、暴力が支配する中、拳法で正義を貫いた男の物語なのよね」
「初耳です」
「ええ、ルドルフ大帝の焚書の時に原本は失われてしまって、帝室秘匿ライブラリーに残存していたのを発見したのよね」

テレーゼが口からでまかせを言っているが、ケスラーも其処までは調べられないために信用してしまう。
「なるほど」
「お父様もルードヴィヒもそう言った記録には無関心だったから知らないでしょうけどね」
テレーゼは、謀反人である元皇太子を呼び捨てである。


テレーゼが話を変える。
「そう言えばDからの連絡は?」
「有りません」

ケスラーの答えにも不快感を表さずににこやかなテレーゼ。
「そう、良い兆候ね、返事がないのは元気な証拠だしね」
「はい、Dからの連絡が有るときは最後の時のみ」

「そう言う事、帝国の切り札ABC兵器に次ぐD兵器がまさかあれとは黒狐も気づかないわね」
「はい、我々の指令は“汝の思うようにせよ”だけですから」
このセリフは、テレーゼが転生前によくやっていたテーブルトークRPGソードワールドの邪神ファラリスの神託なのであるが、気に入っているのでそのまま使っているのである。

「ふふふ、幾ら黒狐や地球教が調べても、スパイに関して判るわけがないよね。黒狐も地球教もよくよく考えてみればいいのよ。帝国暦373年にレオポルド・ラープがフェザーンを成立させようと運動した際に、内政面の名君と言われたコルネリアス一世が一番信頼していた側近のクーデターのせいで細心の注意をするようになっていた事を、そんな時、いきなり自治領を作るなどと言う、ラープからの話を疑念も感じずに、賄賂を貰った廷臣共が勧めたってそう簡単に許可する訳が無いと言う事をね。それにもかかわらず、許可が下りた。恐らく賄賂が効いたと思ったんでしょうけど」

「はい、その際にマクリミリアン・ヨーゼフ陛下以来暗躍していた我等の諸先輩方がコルネリアス一世陛下の命で動きました」
「そうよね、大体フェザーン人の殆どは元々帝国出身者だと言うのに、移民してきた帝国人の何%が草だったのやら、普通ならその辺を考慮するんだろうけどね。その辺が何故抜けているのかしらね、まあそのお陰で多数の草が育った訳よね、大きく育った木々はフェザーンに確り根付き花を咲かせたわ。マリアもDも見事に大輪の花に育ったわ。全く知らぬは地球教ばかりなりってね」

「ですな」
「それに、ダゴン以来、帝国から同盟に亡命した連中の中に草を仕込んでいない訳が無いんだけど、同盟もフェザーンもその辺りを考えなかったのかしらね」
「草となった以上は必要以上に動きませんでしたので、察知されなかった事が要因かと」

「通常のスパイと違い社会に溶け込んでしまうから、敵も調べようがない訳だし、こんな組織を作ってくれた晴眼帝に感謝ね」
「それでも殿下がお使いに成らなければ、宝の持ち腐れとなる所でしたが」

「まあ、お父様は韜晦していたから、使うわけには行かなかったからね」
「御意」

「それと、黒狐はルパードに接触しているのかしら?」
「今のところ、生活が安定しているため、目立った動きをしている様子はありません」
「ふーん、捨てた親なのだから、コッソリ支援でもして居るかと思ったけど」

「未だ自治領主となって4年しか経っておりませんから、スキャンダルを警戒しているのでしょう」
「ルパードは今年、19歳よね」
「はっ」

「母親を救い自分を救ってくれた足長おじさんが、まさか銀河帝国皇女殿下だとは思わないで学業に励んでいる訳か」
「478年からですから、既に8年です」
「小学生を幼女が囲っているようなものだものね」

テレーゼが笑う。
「まあ、極貧で食うや食わずの生活だった為に、死にかけた母親共々、遠い親戚だと援助しているわけだし」
「そう伝えてありますし、手紙等も偽装してあります」
「少々才走る所はあるけど、優秀な人材だし態々ルビンスキーに呉れてやる必要は無い訳だしね」
「はい」


「さて、同盟は様子見として、フェザーンが首飾り作り始める兆候は?」
「現在の所、株価、資材に関しても動きがありませんので、その兆候はございません」

「そう、出来れば、カストロプが首飾りを買う前にカストロプは始末しなきゃ成らないわね。そうすれば建造中の首飾りはフェザーンへ配備されるでしょう。そうじゃないと後々困るのよね」
テレーゼが話す計画をケスラーも本当に出来るのかと半信半疑であった。

「あとは同盟とフェザーンに流す、移動要塞D計画もね」
「直径120km、質量400兆トン、惑星破壊スーパーレーザー搭載ですな」
「まあ信じるか信じないかは向こうに任せるとしてだけどね」
テレーゼは、ウインクしながら、驚けてみせる。

「イゼルローンを越える超要塞ですな」
「指揮官にはハイドリッヒ・ラング辺りに真っ黒なコスチュームとヘルメット被らせるのが面白いのよね。|暗黒卿(ダースベーダー)とかね」
テレーゼの冗談に付いていけないケスラーは苦笑いするだけである。

「そうやって、色々ガセネタを掴ましておけば、ガイエスブルグ要塞の移動要塞化もガセネタだと思うでしょうし、建造中の超時空要塞計画も同じでしょ。序でに冗談のソロ星で異星人の遺跡発見とか、グリルパルツァー名義ででもレポート流せば混乱必至よ」
「異星人は流石にやりすぎでは?」

「まあ、嘘も100回言えば真に成るし、別に誰も困らない訳だしロマンよロマン」
「はぁ」
「それに、真実も入れているわけだし、超時空要塞計画は同盟戦艦の利点を入れた、ブロック工法で船体を作る事で、1200m級の戦艦でも建造時間の大幅な短縮が出来るわけだから、それに戦艦と別に側面に連結するアームド空母の建造で各戦艦にワルキューレを搭載しなくて済むから、誘爆の心配や、整備兵の配備を空母に集中できるから将来的にはコストパフォーマンスが良くなるわ」

「確かに、戦艦から艦載機を出す瞬間を狙われての誘爆が多いですから、理に適っております」
「でしょう、取りあえず、一番艦SDF-1は今年中に完成するから、ファーレンハイトに下賜して実験して貰うわ」

「大型艦首誘導ビームとワルキューレ120機ですか」
「ええ、彼の場合、攻撃力の大きい艦の方が使いやすいでしょうから」
そう言うテレーゼの笑顔を何とも言えない感じでケスラーは見ていた。

 
 

 
後書き
ラングと、ファーレンハイトは声優ネタです。

本来なら艦長はシェーンコップにして欲しかった。

マクロス、イデオン、スターウォーズ、北斗の拳、ソードワールドネタでした。

流石に一発で惑星壊せる兵器は無理ですけどね。

バスターキャノンクラスに近いなら、アースグリムやサラマンドルの艦首砲がありますからね。

この世界では、あの人も帝国の紐付きだっちゃ!

ルビンスキーは志村うしろうしろ状態w


 
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