モンスターハンター ~厄災の狩人達~
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黒蝕の陰、天廻の陽
鳥竜の新たな住処
前書き
常に地形が変わり、二回と同じエリア構成にはならない「未知の樹海」
そこに大怪鳥イャンクックの生息を示す手がかりが何個か上がったため、急遽調査に立ち寄ったジャックス率いる「我らの団」
怪鳥イャンクックの生息は果たして真なのか偽なのか
「ふむ…なるほど…ここは面白い!」
未知の樹海に仮設置された拠点から一歩出た途端にアルフレッドが目を輝かせだした。
「ジャックスさんの言った通り人口文明の発展が見て取れる碑文・構造物・地形構造…こんな所がこの世にまだあったなんて!」
一人で書物や調査道具、ナイフなどを手に持ちエリアの隅々をくまなく調べて周るアルフレッドを見ながら
「ホント、活き活きしてんなアル…。」
「ええホント。あの人調査や研究とかいう物に目がないから…」
「…さすが学者。」
三人は脱帽していた。
たった一つのエリアに地質・採取物・地形構造・建造物などを調べに調べたため二十分ほど滞在していたアルフレッド達。そしてさも満足そうにダイラス達の方を向き
「このエリアは大方調査し終わりました。次のエリアへ向かいましょう!」
と言う。
「なぁ、アル…お前今回の目的何だったか忘れたのか?」
ダイラスがダメ元でアルフレッドに尋ねると
「え?この未知の樹海を隅から隅まで調査することじゃないの?」
と、予想の斜め上を突き抜ける回答が返ってきた。
「ダメだこりゃ…。」
「こればかりは彼も学者だから仕方ないわね。」
「…先へ進もう。」
三人は呆れながら次のエリアへと進んだ。
未知の樹海エリア二。
ここは三本の細い川と赤い鉱石の結晶、そして湖がある開けたエリアになっている。
川の傍をクンチュウがゴソゴソと動き回っている。
「おや?クンチュウがこのエリアに生息している…。」
アルフレッドがクンチュウの傍まで歩み寄ると
「アルゥー!こんなもん拾ったぞ!これもしかして、イャンクックの鱗じゃねえか?」
と、ダイラスが手を高々に拾った桃色の鱗を見せた。
「なるほど…ッ!皆岩に隠れて!」
アルフレッドが何かを感じ取り他の三人に指示したと同時に、クンチュウも何かを感じ取ったような動きをし、土の中に潜ったり急いで移動し始めたり防御の体勢になった。
アルフレッド達は急いで近くの岩に隠れる。
「一体どうしたんだアル?何かクンチュウも色々動き始めたけど…。」
「僕の予想と記憶が正しければ…今からここにイャンクックがクンチュウを食べに来る。」
「イャンクックがクンチュウを?アイツあんなのも食うのか…。」
「だと思う。けど、イャンクックの食べ方によってはジャックスさんが僕たちに話してくれた事とは違う事象も確認出来るんだけど…」
「なんだかよく分かんねえけど…とりあえずイャンクックが来たら倒せばいいんだろ?」
「うん。…来た!」
岩の向こうから羽ばたく音が聞こえ、全員がほんの少し顔を出して見る。
そこには全員が見慣れた大怪鳥イャンクックが居た。
耳を畳んでいてアルフレッド達に気づいている様子は全く無く、目の前に丸くなっているクンチュウを見つけると走り出した。
「あっ…クンチュウを食べるぞ!」
イャンクックがまず嘴で丸くなったクンチュウを小突き、何かを確認したあと一口で丸飲みにした。
「…おかしい、ジャックスさんから教えてもらった報告には『クンチュウの甲殻の欠片』とあったはず。けど、今の食べ方じゃ少なくともクンチュウの甲殻が割れるとは考えにくい。」
いつもの悪い癖でアルフレッドが考え込み始めたのを見て
「あーあー!目の前にイャンクックが居るんだ、狩るぞ!」
「っとそうだった!それじゃ始めましょう!」
他二人もうなずくと一斉に岩から飛び出てイャンクックを囲んだ。
イャンクックがアルフレッド達を視認すると畳んでいた耳を開き、翼を大きく広げて威嚇する。
「アルマさん達ガンナー組メインで動きます!逃げ道は僕とダイラスで塞ぎますのでなるだけ被弾を抑えてください!」
「了解よ!」
「了解。」
マトレガは赤い鉱石の辺りにカオスウィングⅡを展開して、アルマは湖に近い所でアインス・ディレクトⅠを構えて陣取った。
アルフレッドはイャンクックに向かって右側から、ダイラスは真正面から頭を殴りにかかる。
怪鳥イャンクックはアルフレッドの方を補足し、火炎液を吐き出した。
「おっと危ない…お返しにこうだ!」
足元へ滑り込み起き上がりと同時に六十二式対飛竜剣を足元へ走らせる。
注意を足元へ向けたイャンクックの耳元へ
「こっちを見なくていいのかー!!?」
ダイラスのフルパワー打撃が炸裂。一撃でめまい状態へと陥った。
「ガンナーさん、出番です!」
「オッケー!」
待機していたアルマとマトレガが矢と弾丸を一斉射。
矢が背中に突き刺さり、弾丸は首元へと疾走する。
「いい感じのダメージです!このままなら次のラスの一撃で倒せるはず―」
と、アルフレッドがイャンクックの方を向くと
「何だ?どうかしたのか?」
イャンクックは地面に目を見開いたまま地面に倒れこんでいた。
まるでそよ風の如く息を引き取るかのように。
「もうくたばったのか…?何だよーまた弱ってた奴かよ…。」
「シッ!」
「!?」
歯ごたえのない相手に落胆するダイラスに何かの注意を向けさせるアルフレッド。
その隙にイャンクックの口元からは黒い煙が出ていた。
異変を察知したダイラスは
「アル危ねぇ!」
傍に寄っていたアルフレッドを突き飛ばした。
ほぼ同時にイャンクックが起き上がりアルフレッドが元居た位置に飛び込んだダイラスへ火炎液を吐き出す。
「アッツ!!熱い!!」
「あ、ありがとうラス…。」
ダイラスがしばらくその辺を転げまわるが、なおもイャンクックは目の前にダイラスを捉え続け、凄まじい速度で突進を仕掛ける。
「危ないラス!逃げろ!!」
今度はアルフレッドがダイラスの元へ駆け寄るが
「ふざけやがってェェェ!!!」
起き上がる拍子にフラストレーションを柄の部分が歪まんばかりに全力で握り締め
「これでも喰らって寝てろォォォォ!!!!!」
先ほどの数十倍の轟音と共にイャンクックの頭を地面に叩き埋めた。
衝撃波は凄まじくしばらく辺りの空気が麻痺するかのように振動し、エリアの端から端まで亀裂が生じた。
遠く離れたベースキャンプ
「…ジャックス、そろそろ移動したほうが良い。」
「ん?おっとそうだったな。あいつらを出口で向かえにゃならんし。
おーいお嬢!そろそろ出発するぞー!」
ジャックス達が出口へ向かう準備をし始めると、いきなり地震が起こった。
「ぬおっ!?何だ地震か!?」
三人は慌てて近くの物に捕まったが地震は一瞬にして収まった。
「…おさまった。」
「い、いてて…おいガートン、未知の樹海の近くで地震なんて報告あったか?」
「…あるわけない。」
「だよなぁ…。」
ジャックスが本に埋もれたお嬢を尻目に樹海の奥の方を見やった。
「や、やりすぎだよラス…。」
イャンクックの死体周辺には一端の飛竜が2頭は寝られるサイズのクレーターが生じ、そのイャンクックの頭は跡形もなく粉々に砕け散っていた。
「つ、つい力が入りすぎちまった…ハハハ」
申し訳なさそうに頭を装備の上から掻くダイラス。
「ま、また派手にやったわね…。私も正直ヒヤッとしたわ…。」
「…同感。」
四人はイャンクックのつぶれたクレーターに近寄り
「とりあえず僕はこのイャンクックから鱗、甲殻、耳、胃の内包物を採取するから、ラス達は周囲を見張っててくれないか?」
「おう!アルの悪い癖だな!」
「わ、悪い癖とは失礼な…まぁいいけどさ。」
アルフレッドはそのままイャンクックの死体の傍に座り、目当ての物を採取し始めた。
その時
「お~~い!お前ら大丈夫か~!!」
と、遠くからジャックスの声。
「あら、団長さんね。どうかしたのかしら?」
荷車に乗りながらジャックス達がアルフレッド達の元へと移動してきた。
「お、おい何かこのエリアだけ派手なクレーターと亀裂があるんだが何かあったのか…?」
とジャックスが荷車から降り、イャンクックの死体を確認する。
「こ、コイツ頭がねえじゃねえか!?一体何があったんだアルフレッド!?」
「そ、それはその…ラスが力を込めすぎて…。そのクレーターもラスのハンマーで…。」
と、苦笑いしながら採取を続ける。
「な、ななな…ハンマーでクレーター…」
荷車の上の二人も唖然。
しばらくエリアに静寂が訪れるが、ある咆哮でそれはかき消される。
「ん?何の咆哮だ?」
聞いたこともない、しかし何か不吉な予感をさせる咆哮。
聞くだけでおぞましく、感じるだけで背筋が凍るような咆哮
「辺りの空気が変わった…。」
「おいアル!採取はもう終わったのか!?」
「うん。目当ての物はとりあえず終わった。ジャックスさん!荷車を出して下さい!」
「分かった。只者じゃないのは今の咆哮で分かったしな。ガートン!」
「…分かった。」
と一言言い、荷車を出発させたその時。中空から黒い影が降り立ってきた。
「な、何だ!?」
荷車を引くアプトノスが怯えきってその場に座り込み、動かなくなるほどの威圧感。
黒いカーテンのような翼からは絶えず何かの粒子が放出されている。
「な、何なんだアイツ…?」
目の前の黒い影はジャックス達を捕捉すると先ほどのイャンクックとは比べ物にならないスピードで荷車へ向かって突進し始めた。
「おいおいおいおいマズいぞ!!ガートン、早く動かせ!」
「…ムリだ、すくみ上がってる。」
アプトノスはすっかり体を強張らせ、小刻みに震えている。
「クソッ…ここまでか!」
ジャックスが目をつぶった。
「…?」
再び目を覚ますとそこにはアルフレッドとダイラス。
「「調子に…」」
一声と同時にアルフレッドが足を斬り付けて転倒させ
「「乗るなァァァァァァ!!!!」」
体の自由が利かなくなった黒い影をダイラスがフラストレーションで空へ見えなくなるまでかっ飛ばした。
「た、助かった…。てかおいあれさっきのモンスターだろ!?」
一仕事終えたかのようにダイラスはジャックスに
「人を守るのもハンターの仕事だ!」
と、言い放ちアルフレッドは
「さ、行きましょうナグリ村へ。」
と荷車に乗りなおした。
(ひょっとすると俺はホントに化け物を味方につけたかもしれないな…)
そう思いながら座りなおすジャックスであった。
後書き
お久しぶりですね!!(真顔
センター試験が無事終わりましたので書きかけだった最新話をたったいま完成させました。
これからまた不定期更新になるとは思いますが、よろしくお願いします!
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