不老不死の暴君
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帝都編
第五十二話 聖ヲルバ騎士団国
聖ヲルバ騎士団領港町ソトートスにて。
元々聖ヲルバ騎士団とは元々はヤクト・ラムーダ南部に住まう狩猟民族に与えられた名である。
その狩猟民族は幾つもの集団に別れて行動し、集団同士は緩やかな協力関係にあったが国家というには程遠かった。
十数世紀前に当時のキルティア教の大僧正をある集団が助けたことから神話に登場するヲルバという聖人の名を彼らは授かった。
こうして聖ヲルバ騎士団と呼ばれる集団を中心に狩猟民族は国家として纏まり始める。
そして約700年前にガルテア連邦に加盟し、急速に国家としての体制を整え首都ティンダロスを築く。
更に狩猟で手に入れた肉や皮を輸出し、それ以外のものを輸入させる為に南西部に港町ソトートスからダルマスカなどと交易を行っていた。
ガルテア連邦崩壊後は武装中立を掲げ、南部の雑穀地帯を狙うディール王国との小競り合いを繰り広げた。
現在ではディール王国は滅び、アルケイディア帝国の植民地と接する為、どちらかというと帝国寄りの政治を行っている。
船でソトートスまで行き、道を辿ってティンダロスへ、そこから更に北上するのが一般的な神都ブルオミシェイスへのルートとなっている為、結構人も訪れている。
現在はアルケイディア帝国の襲撃によって神都を去った避難民達が首都や港町に溢れている。
「街が見えたぞ!!」
ヴァンが街を発見して声をあげる。
「ようやく着いたか」
「これでも早い方だぞ、将軍様」
バッシュのため息交じりの言葉にバルフレアは苦言を呈する。
当初神都から西進してダルマスカに戻りアルケイディア帝国本国領に入る予定だった。
しかし避難民に紛れれば船に乗ってもばれないのではということで南下して船に乗ってダルマスカに戻ることにした。
それから3日間南に向かってセア達は進んできたのだ。
「ソトートスは交易港だ。なにか珍しいものでも売ってるかもな」
セアはなんとなしにそんな事を言う。
「遊びじゃないのよ、この旅は」
「わかってますって王女様。ただ役に立つ珍しいものとか売ってるかもしれないでしょ」
アーシェの批難にセアは軽く首を振りながら言った。
「そういえばこの国ってキルティア教会と仲がいいみたいですけど帝国と仲が悪くなってたりしないんですか」
パンネロはここに来るまでに神都の救援に向かう聖ヲルバ騎士団の部隊を何回か見た。
そこから聖ヲルバ騎士団とキルティア教会が仲がよかったのは容易に想像できる。
ならキルティア教の総本山を襲撃した帝国との関係が悪化しているのではとパンネロは思ったのだ。
「いや、この国の一番の交易相手はアルケイディア帝国だ。なにもしてないということはないだろうが敵対に踏み切るようなことはしてないだろう」
セアは軽く笑いながらそう返した。
実際、聖ヲルバ騎士団国はアルケイディア帝国に神都襲撃の件で批難したが、制裁は一切加えていない。
国力が違い過ぎる上にアルケイディア帝国との交易を打ち切られただけで聖ヲルバ騎士団国は確実に弱体化する。
聖ヲルバ騎士団国の東は海、西はヤクト、北はキルティア教会の直轄領、南はアルケイディア帝国の植民地である。
帝国との関係が断絶されればどうなるか考えるまでも無い。
孤立確定である。
「おっ!門が見えたな。あれをくぐるぞ」
ソトートスの門をくぐると道幅が20m程の大通りに出る。
大通りのあちこちで露天商が声をあげて客の呼び込みをしている。
「本日仕入れたばかりの魔導書だよ!おひとつ1000ギルから!!」
「新鮮な魚はいらんか!お安くします!!!」
「マジックマッシュルームはいらんか!?ひとつ500ギル!」
露天商の周りには人だかりができていてそれを退かすように兵士がやってくる。
そしてチョコボが積荷を満載した馬車を曳いて通りを横切っていく。
「活気があるな」
セアはなんとなく呟く。
「ラバナスタよりあるんじゃないか?」
「帝国に負けるまでラバナスタもこれくらい活気あったよ」
セアの言葉にヴァンが面白く無さそうに言う。
セアがラバナスタに住むようになったのは1年前なので帝国の支配を受けてなかった頃のラバナスタを知らない。
だからある意味当然の反応だといえる。
「そうか、そういえば昔はもっと活気があったとか言ってたな」
セアはダラン爺からそんな話をしていた時のことを思い出した。
そんなこんなしている内に大通りを通り抜け港に出た。
港には幾つもの帆船と僅かなグロセア機関で動く水上船を確認することができた。
基本イヴァリースでの船といえば帆船である。
ミミック菌が金属を腐敗させてしまうので機械は使っているのは少ないからだ。
ただ、地上と海上では海上の方がミミック菌が少ないのか金属の腐敗が遅い。
だからグロセア機関を搭載した機械仕掛けの水上船もあるにはある。
しかしあくまで地上と比べればであって空中とは比べるべくもない。
その為、水上船は長時間の航海に向無い上、メンテナンスなども必要なのでコストも高い。
「明日の朝までダルマスカ行きの船はでないそうだわ」
港にいる船乗り達に話を聞いてきたフランがそう言った。
「じゃあ一日はここで足止めだな。宿を探そう」
バルフレアの言葉に全員が頷いた。
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