ソードアート・オンライン~十一番目のユニークスキル~
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唯一無二の不確定因子
第九話 胸騒ぎ
ユージオを見送った後、俺とアリスは<はじまりの街>の主街区を歩いていた。
「なあ、アリス」
俺はアリスの方を向いて呼んだ。しかしアリスは俺の方を見ずに返事を返す。
「なんですか?」
「・・・・・・さっきはありがとな。あそこでアリスが言ってくれなかったら、俺はユージオの気持ちに気付けなかった」
すると、アリスは俺の方をちらりと見たが、すぐにそっぽを向いた。
「・・・・・・勘違いしないでください。お前のためではなく、ユージオのためです」
その様子を見て俺は ”相変わらず素直じゃねえな” と心の中で思いながら微笑を浮かべた。
「ま、どちらにせよ、お礼をしないとな」
「でしたら、食事に付き合ってください。部屋に戻ってもこの時間ですと、まだキリトがいると思いますので」
アリスが意外な反応を示したので少し驚いた。しかし理由を聞くと納得した。確かに、あの二人の邪魔をするのは野暮ってもんだしなと思い、俺はニヤッと笑い、OKと答えた。
「じゃあ57層の主街区に、NPCレストランにしてはイケる店があるから、そこに行こうぜ」
「いいですよ。それと、言い忘れてましたがお前のおごりですからね」
それを聞いて俺は ”食事に付き合うだけじゃないのか!?” と心の中で叫びながらも頷いた。
「ま、お礼だしな。任せとけ」
「でしたら早く行きましょう。お腹が空きました」
そう言ってアリスは早足で転移門に向かった。その顔は少し笑っているような気がした。
◆
はじまりの街から転移門経由で57層主街区<マーテン>に移動した俺とアリスは、メインストリートを五分ほど歩くとあるやや大きめのレストランの前にいた。
「ここですか?」
そう訊ねてきたアリスに、俺は頷いた。
「そ。オススメは肉より魚だ」
スイングドアを押し開け、ホールドしてアリスを潜らせる。そしてすぐにアリスは店内を移動して、窓際のテーブルの椅子に座ったので、その向かいに俺も座った。そして食前酒から前菜、メイン料理、デザートを二人分注文して、ふぅ、と一息いれる。
速攻で届いたフルートグラスに唇をつけてから、アリスも同じように、ほうっと長く息をついた。
「そういや、明日空いてるか?」
突然の質問にアリスは首を傾げた。
「なぜですか?」
「明日、最前線の探索に行くから一緒にどうかな、と思ったからさ」
するとアリスは怪訝そうな顔をする。
「・・・・・・なぜ私なのですか?」
「いや、最近モンスターの戦術が読みにくくなってきているから、できればパーティを組みたいと思っているんだけど・・・・・・信用できるやつがそうそういなくてな」
「そう言うことなら構いません、と言いたいところですが、明日はギルドの方での攻略があるので無理です」
「あー、そっか。アリスはギルドに入ってるもんな」
忘れていた。アリスはKoBの副団長補佐なのだ。当然毎日仕事で忙しいはずだ。これは他をあたるべきだな、と思っていた矢先、予想外の言葉が飛んできた。
「ですが、それが終わった後でしたら構いませんよ」
「へ?」
なんとも情けない声を出してしまった。まさか別の日ならいいと言われるとは思っていなかったからだ。
「ですから、明日の攻略が終わった後であれば、時間があると言っているのです」
「あ、ああ。じゃあよろしく頼む・・・・・・」
俺は戸惑いながらもなんとか返事をすることができた。
幸い、発生しかけた微妙な雰囲気は、サラダの皿を持ってきたNPCがキャンセルをしてくれた。
さっそく、そのサラダをフォークで頬張り、飲み込んでから、アレコレ誤魔化すべく質問をする。
「ところで明日はどこに行くんだ?」
「最前線の迷宮区です。もしかすると会う可能性があると思いますが、その時は極力、話かけないでください。他の団員に誤解されても困りますから」
その時、俺はなぜか胸騒ぎを覚えた。しかし、それはすぐに消える。
「そこら辺は分かってるって。それより迷宮区ってまさかボスの偵察か?」
「そんなわけないでしょう。まだボスの部屋も見つかっていないのですよ。明日はギルドメンバーで探索をするだけです」
アリスは呆れた表情を見せつつ、淡々と話した。
「そ、そっか――――まあ最前線なんだし気を付けろよ」
「私よりもソロのお前の方が気を付けるべきでしょう」
「それもそうだ・・・・・・あははは」
俺は乾いた笑いを浮かべ、その時ちょうど運ばれてきた料理を口に運んだ。
◆
店を出ると、街はもう完全に夜のとばりに包まれていた。
俺はつい、と上を振り仰ぎ、呟いた。
「そろそろキリトも帰ったんじゃないか?」
「そうですね・・・・・・今日はありがとうございます。ここ、美味しかったですよ」
アリスはお辞儀をして感謝の意を伝えた。それを見た俺は自然と顔に笑みが浮かんだ。
「そりゃよかった。じゃあまた今度機会があったら、アスナ達も連れてこようぜ」
「それはいいですね。楽しみにしてます」
アリスも同じように笑みを浮かべる。そして他に色々と話しているとすぐに転移門の前に着いた。
俺とアリスは住んでいる層が違うのでここでお別れである。
「んじゃまた今度な」
「はい、それではまた」
そう言って振り返ったアリスの背中を見た瞬間、俺は再び胸騒ぎを覚えた。しかし、俺は気のせいだろうと思い深く考えることをしなかった。あんな事になるとは知らずに。
後書き
10話目です。えー先に言っておきます。アリスのキャラはほぼ確実に崩壊します。と言うよりもすでに崩壊の一途を辿っているかも・・・・・・。できる限り崩さないようにしたいですが多分無理ですww
アリスファンの皆様すみません・・・・・・ここにお詫び申し上げます(笑)
神聖剣のスキル募集です!
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