戦国異伝
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第百五十六話 加賀平定その二
「これではな」
「ではここはどうされますか?」
家臣の一人が龍興に問う。
「殿は」
「加賀を出る」
龍興はその問いにこう返した。
「そしてじゃ」
「他の国で、ですか」
「織田家と戦いますか」
「わしは諦めぬ」
決して、という口調だった。
「まだな」
「ここでは戦われませんか」
「それはありませんか」
「これでは戦にならぬ」
門徒達が戦よりも田畑を考えている状況ではというのだ。
「それではじゃ」
「他の国に逃れそうして」
「また織田家と戦われますか」
「摂津じゃ」
その国の名前もだ、龍興は出した。
「今からそこに逃れるぞ」
「しかし殿」
ここでだ、家臣の一人が怪訝な顔で龍興に言ってきた。
「ここから摂津に向かうには」
「織田の領地を越えなくてはならぬな」
「はい、そうしなければなりませぬが」
「安心せよ、まずは船で海に出てじゃ」
そうしてだとだ、龍興は彼等に言葉を返す。
「そして美作や備中を通ってじゃ」
「そのうえで、ですか」
「瀬戸内に出られてですな」
「そして摂津に入る」
かなり遠回りだがそうしてだというのだ。
「そのうえで戦うぞ」
「そうされますか」
「今度は摂津ですか」
「そうして入られてですか」
「そのうえで」
「戦うぞ」
まさにだ、そうするというのだ。
「わかったな、それでじゃ」
「では殿」
家臣達も龍興の言葉を受けた、そのうえで彼に対して言う。
「銭はありますので」
「うむ、それではな」
「その銭を使い船と案内役の人を雇い」
「それで摂津まで行くぞ」
「本願寺の助けは」
ここで別の家臣も言ってきた。
「それを借りますか」
「ふむ、石山に入るからのう」
「では本願寺の助けを借りられては」
「そうじゃな、その方がよいか」
龍興は今はいささか一人よがりになっている自身に気付いた、それで考えをあらためてこう周りに言うのだった。
「加賀にもまだ戦いたい者がおるであろうしな」
「そうした者達と動きを共にされては」
こう龍興と同僚達に言うのだった。
「ここは」
「よし、そうしようぞ」
龍興もその言葉を容れた、そしてだった。
彼は本願寺の主戦派と話した、すると彼等はこう龍興達に述べた。
「実は我等も今から行くつもりでした」
「加賀から摂津に逃れるつもりでした」
「実は我等だけが知っている道があります」
「摂津までの道が」
「そうした道があるのですか」
龍興はその話を聞いて目を瞠った、それで彼等にこう問うた。
「それはどういった道ですか」
「はい、雑賀衆の道でして」
ここでこの者達の名前が出た。
「雑賀衆が門徒達であることはご存知ですな」
「はい」
その通りだとだ、龍興も答える。
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