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戦国異伝

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第百五十六話 加賀平定その一

            第百五十六話  加賀平定
 信長は門徒達の二十七万の大軍を破り将兵達に大飯を食わせたうえでまずは一日休ませた、自信もぐっすりと寝た。
 それから起きてだ、全軍に言うのだった。
「では朝飯の後でじゃ」
「はい、いよいよですな」
「尾山御坊ですな」
「そうじゃ、行くぞ」
 そうせよというのだ。
「いよいよな」
「その尾山御坊ですが」
 滝川がここで信長に言って来た。実は軍が休んでいる間は忍達が警戒に当たっていた。そして尾山御坊の方にも物見をやっていたのだ。
 その彼がだ、信長に彼が聞いた報を話すのだった。
「どうやら我等とはあまり」
「戦う気はないか」
「はい、近江や越前のことを聞いて無闇な戦はせず」
「それでじゃな」
「村に帰り畑仕事に帰ろうという者も多いとか」
「左様か」
「はい、ですから」
「昨日の戦のことはすぐに尾山御坊にも伝わる」
 信長もそれを念頭に置いて戦をしていた、だからこそ彼等を一日で倒したのだ。それがよい喧伝になるからである。
「ではな」
「尾山御坊はですか」
「一戦を交えずに終わればよいな」
 信長は笑みを浮かべて滝川に述べた。
「昨日までの戦でな」
「そうですな、それでは」
「まずはじゃ」
 それではとだ、信長は言ってだった。
 全軍を尾山御坊に向かわせた、その尾山御坊には信長の進軍よりも速く戦の結果が伝わっていた。それはというと。
「織田軍は一日で二十七万の大軍を皆殺しにしたというぞ」
「恐ろしい強さではないか」
「織田の兵は弱兵ではないぞ」
「うむ、かなりの強さじゃ」
「我等は二十万、二十七万より少ないぞ」
「それに武器も碌なものがない」
 鍬や竹槍といったものしかない、弓矢も碌にない程だ。まさに百姓達がそのまま立ち上がっただけの状況だ。
 その彼等がだ、自分達を振り返り言うのだ。
「わし等ではとてもじゃ」
「相手にならぬわ」
「間違いなく織田家に倒されるぞ」
「織田信長は敵には容赦せぬぞ」
 まずはこのことが言われる。
「向かって来る敵はとことんまで倒すぞ」
「そして降った者には寛大じゃ」
「では降るべきじゃな」
「村に帰り畑仕事に戻るか」
「それがよいな」
「顕如様も言っておられるしのう」
「ではな」
 百姓達はそちらに傾いていた、彼等はもう戦いたくなかった。それは彼等を動かしている僧侶達も同じだった。
 しかしだ、龍興だけはこう言うのだった。彼は尾山御坊の中にいてそのうえでしかめっ面でこう言うのだった。
「何故じゃ、二十万もの兵がおるのにか」
「ですな、降るなぞ話になりませぬ」
「そんなことをして何になるのか」
「全く以て愚かですな」
「真に」
 彼につき従う僅かな家臣達が応える、彼等もまた憮然とした顔だ。
「ここは攻めて倒すべきです」
「数はこちらの方が多いのですぞ」
「籠城してもおよいのです」
「それで何故降るというのか」
「全く以て愚かです」
「所詮は百姓ですな」
「話にならんわ」
 龍興は忌々しげに言うのだった。 
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