エターナルトラベラー
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第一話 【ゼロ魔編】
前書き
にじファンからの転載になります。
今後ともよろしくお願いします。
この作品には、オリ主チート成分、ハーレム要素が含まれます。
以上の事が了承できない方はブラウザバックをお勧めします。
この作品は多世界クロス作品になります。
目が覚めると、俺は知らないところに寝かされていた。
見覚えのない場所だったので俺は立ち上がり、周囲を確認しようとして体が上手く動かない事に気が付いた。
立ち上がれないだけではない、首すら自分の意思では傾ける事が出来ない。
なんだ?
俺はもしかして全身麻痺の植物人間にでも成ってしまったのか?
俺はかなり焦って叫び声を上げようとした所で俺の視界の中に、見も知らない人間が現れた。
『アオちゃん。ご飯の時間ですよ』
恐らく俺に話しかけたのだろう。
視界に現れた女性が全くわからない言葉を紡いで俺を軽々抱き上げた。
ん?抱き上げた。
そしておもむろにたくし上げてあらわになった乳房に向けて俺の顔を近づけた。
なんだ?
赤ちゃんプレイ?
「ぁーっ」
ちょっと待って!と思って声を上げようとしたけれど、どうにも上手く喋れない。
『はい、アオちゃん。おっぱいですよ』
しかし女性はお構いなしとばかりに戸惑う俺の体を揺すり、おっぱいにしゃぶりつけと催促する。
此処まで来て漸く俺は思い至った。
これはもしや!オタクにのみ許された二次転生テンプレと言う奴では?
◇
俺の名前は神咲蒼(かみさきあお)。
名前だけはかっこいいが悲しいかな、見目普通の両親の遺伝子を受け継いで、不細工ではないけれど、カッコイイとはいえない容姿の普通の日本人だ。
思えば女性に全く縁の無い人生だった。
中学二年の時に友達からアニメやライトノベルを進められたのが切欠で俺はそれらの多くの作品にどっぷりはまってしまった。
気づいた時にはオタクといわれる人種になっていた。
そしてそのまま成人して、中小企業に就職。
出勤し、仕事をして、締め切りに追われながら徹夜して、帰ってきては取り溜めたアニメを見たり、ライトノベルや漫画、時折ネットで二次小説などを読みふけり、就寝。
そんな毎日だ。
そんな生活だから当然彼女なんか居た事も無く、気が付いたら童貞のまま30歳の誕生日を迎えようとしていた。
「はは、このままじゃ魔法使いになってしまうかな…」
明日は30歳の誕生日だなと思いながら酒を煽って就寝したはずだった。
しかし今、俺はどう言う訳か記憶を持ったまま赤ちゃんになると言う二次創作におけるテンプレを目の当たりにしている。
だが、普通こういう場合の多くは道路に飛び出した可愛い女の子を救って変わりにトラックに轢かれたりして、神様が「ゴメン、間違えて殺してしまったから幾つか能力付加して転生させてあげるね。勿論移動先は選ばせてあげる」とかではないのか?
俺にはそう言ったやり取りをした記憶が全然ないのだが…
くっ、俺は最強オリ主では無いというのか!
とまあ、そんな事を考えながら視界に入った女性の姿を確認する。
目の前の俺の母親であろう女性、こういっては何だが前世?と言うか解らないが神咲蒼を生んでくれた母親と比べると天と地ほどの差があるくらいに美人だ。
彼女の遺伝子を引いているのなら父親が超不細工でもない限り俺の容姿も勝ち組の部類に入るだろう。
この辺は流石テンプレと言うところか。
後は此処がどう言った世界かという所だがこればかりは今は確かめようが無い。
むしろ普通に物語の世界ではなく現実に記憶をもったまま転生という可能性の方が高いような気がする。
まあ今はそんな事を考えても言葉すら喋れないのだから確認のしようが無い。
抱きかかえられて母親の乳首に誘導された俺は空腹を感じて目の前の母親の乳首に吸い付いたのだった。
◇
そんなテンプレ転生から早3年。
俺はようやくこの世界の言葉をマスターした。
まだ舌足らずなところはあるが、まあ言葉は通じているし後数年もすれば違和感もなくなるだろう。
それからこの世界での俺の名前は『アイオリア・ド・オラン』と言うらしい。
ニックネームは『アオ』
奇しくも前世と同じ名前だ。
この名前で気づいた人も居ると思うが、此処は所謂ゼロ魔の世界と言う奴だった。
うん、気づいた時は驚きました。
何て言ったって両親が普通に魔法で俺をあやすんんだからね。
レビテーションを掛けられた時なんかビックリして大声で泣いてしまったよ。
ようやく一人で動き回れるようになって、夜こっそり窓から夜空を見上げると爛々と輝く月が2つあったのだから間違いないだろう。
しかも両親の話を盗み聞きしていると度々『トリステイン』とか『アルビオン』とか『ゲルマニア』とか、ゼロ魔で聞いたことの有る名前が出てきてたしね。
そして俺はトリステイン王国オラン伯爵領の次男という立ち居地らしい。
10歳上の兄が居ることを確認したので行く行くは俺はこの家を出て行かなければならない立場な訳だ。
しかし此処で注目すべき所は、そう。『貴族』だと言うところだ。
つまり俺ももテンプレの主人公よろしく魔法が使えると言うわけだ。
…まさか30歳まで童貞だと魔法使いになれると言うのがこう言う事だったとは思うまいて。
まさか、魔法の有る世界に転生させられるとはね!
だが!だけど!どうせならリリカルな世界が良かったですorz
俺は前世では魔砲少女に凄くはまっていたんだ。
あの魔法少女なのにビーム飛び交うガチバトルには胸が躍った。
だけど現実はゼロ魔!
くっ、俺は魔砲使いにはなれないと言うのか!?
さて、そんな事を考えてもしょうがない。
なんか知らないけれどもう一度生まれなおしてしまった俺。
先ず目標を決めよう。
なんだかんだで貴族と言う勝ち組にテンプレ転生したのだ、ならば少しの非日常(魔法は是非とも使ってみたい)と平穏無事な人生(貴族とかは描かれていないだけでドロドロしてそう)を送る事を目標にする事に決めた。
平穏無事を求めるならば原作厳守が望ましい。
下手に関わって死なないまでも大怪我などで体の一部を喪失とかしたくないし。
原作にあるアルビオンとの戦争になったら難癖つけて出兵拒否しよう。
戦争なんて死亡フラグ満載な所行きたくないです。
そんな葛藤の中、テンプレ主人公よろしく俺も両親に頼んで3歳と言う幼さで魔法の練習をはじめた。
魔法の教師は執事のセバさんが教えてくれている。
とはいえ、セバさんの教えはコモンから初歩的なドットスペルを教えてくれるだけだった。
魔法を習い始めてコモンを大方習得して漸く系統魔法の行使に移り、初歩的な系統魔法を使ってみたところ、俺の系統は風であるらしい。
この時には俺は魔法を習い始めてから初めて狂喜乱舞した。
風といったら雷に派生する系統。
つまり頑張ればサンダースマッシャーとか撃てる!と。
なのはは無理でもフェイトなら!
ゼロ魔の世界でも頑張ればリリカルな魔法の真似事が出来るかもしれないと光明が射した瞬間だった。
暫くすると、土のラインメイジであるセバさんから習う事は系統違いであるため殆どなくなってしまった。
さて困った。
こうなれば本を頼りに自力で勉強するしかないのだが、ここで文字を覚えていない事に気が付いた。
そう、本があっても読めないのだ。
言葉は何とか覚えた物の、文字については未修得だったのだ。
それから俺は、寝る間を惜しんでセバさんに今度は語学を教えてもらうことにした。
まあ、日本語と違い、基本の字体を覚えさえすれば、後は単語を覚えるだけなので、口語はマスターしていたから直ぐにマスター出来るかと思ったけれど。
どうやら俺の根底はやはり日本人のようで、文字の習得には一年の時間が掛かってしまった。
ミミズののたくったような文字は解読できませんて。
この一年、魔法の方はどうしていたかと言うと、精神力のアップに努めていました。
良くある負荷によるキャパシティアップが出来ないかと試してみたのだ。
術者の精神力が100だとして、それを使い切って0にする。
そして一晩ぐっすり寝るとまた100まで回復すると言うわけではないらしい。
魔法の発動回数から考えて、おおよそ20パーセントくらいだ。
全開まではおおよそ5~7日かかるようだ。
だが、これを回復した20パーセントをまたその日の内に0まで使い切ってやるとどうやら負荷による超回復で最大精神力と一日の回復する精神力が上がるようだ。
これは3ヶ月くらいの実証によって確信を得た。
まあ、毎日ぶっ倒れるまで魔法を使いまくる息子を両親は心配そうにしていたが、ここは無視しました。
効果があることが解った以上、精神力を増やさないと言う選択肢は俺にはありえないのだ。
そうした訓練のお陰で1年した俺の精神力は最初の最高値が100として1日の回復量が20%だったとしたら、今現在は最高値120、回復量が23%くらいだと思う。感覚的にはだけれどもね。
一年続けてもたいして上がってないとも思われるが、もしこのまま回復量が増加していくのであれば10年後には最大値の50%の回復量になるかもしれないのだ。
20と23には余り違いが感じられないが20と50ならその違いは比を見るより明らかだ。
それに精神力も上がるのであれば必然的に魔法の使用回数が増える。
…まあ10年とか、気の長い事この上ないのだけれどね。
さて文字も読めるようになったのでこっそり父上が昔使っていた魔法学院の教科書を拝借して魔法の練習をしている。
俺は今、マジックアローに風の魔法で雷を付加させて、なんちゃってフォトンランサーの練習中だ。
「フォトンランサー、ファイヤ」
雷を纏った魔法の矢を意地でジャベリンの形に変形(この辺りはイメージが物を言うらしい)させて10メートル先にある的目掛けて打ち出した。
ドゴォォォォン
着弾、そして爆発。
「うん。なかなかの威力だ」
着弾地点のクレーターを見て俺は言葉を洩らした。
魔法を習い始めてから苦節2年。
初めての模倣魔法が完成した瞬間だった。
…まあ、ルーンを唱えなければならないのがネックだが。
そうそう、ここで1つ重要な事が判明した。
此処はどうやら純粋なラノベのゼロ魔の世界では無いということだ。
ルーンを詠唱したり魔法を発動したりすると魔法陣が展開される。
ライン、トライアングルの定義はラノベ、アニメ(漫画は別系統を足せる数)だから、つまり漫画の世界も混じっていると言う事らしい。
何はともあれ、フォトンランサーが完成してからは少し習得のペースが上がった。
ブレイドに雷を纏わせて、その刃をやはり意思の力で振り下ろすと同時に射出して、なんちゃってアークセイバーを作ってみたり。
拘束の魔法で何ちゃってバインドを作って見たり。
エア・シールドの魔法で何ちゃってディフェンサーを作って見たり。
杖の先から極太のライトニング・クラウドを発射して何ちゃってサンダースマッシャーを打てた時は感動で精神力の切れるまで撃ち続けた。
魔法を使うのが楽しすぎていつの間にかラインに上がっていたことにも気づかなかったくらいだ。
だが此処に来て俺は大きな壁にぶつかってしまった。
そう、それはこの間の魔法の練習中にハイになって本格的に魔砲少女の真似事をしようとフライで飛びながらフォトンランサーを撃とうとした俺を誰が責める?
リリなののファンならば空中戦に憧れるでしょう?
そして俺はものの見事に落ちました。
運良く足元から着地出来たのと、高さが余り高くなかったのが幸いして両足の骨折だけで済んだけれど。両親にはかなり心配をかけてしまった。
高額な水の秘薬を頼んでもらわなければ、下手をしたら変な風に骨がくっついて一生歩けなくなったかもしれない。
くそう、ゼロ魔の魔法ではフライを使用中は他の魔法を使うことが出来ないということを失念していた。
これでは華麗な空中戦など夢のまた夢。
鬱だ。
その日から2ヶ月ほど、俺は魂の抜けたように部屋で一日ボーっとしている日々を過ごした。
「アイオリア、具合はもう良いの?」
骨折事態は既に完治しているのだが、今までの俺と違い全く外に出ようとしない事に心配した母が声をかけてきた。
「かーさま。体は大丈夫です」
「そ、そう?なんだか元気が無いみたいだけれど」
「少し魔法で」
俺は少し言いよどんだ。
「魔法?お母さんでよければ相談にのるけれど?」
優しい母の言葉に俺は少し間を置いてから話始めた。
「えと、その」
「うん」
「フライの魔法を使いながら、他の魔法を使うにはどうしたら良いのかなと思いまして」
そう打ち明けた俺の言葉に暫くして、母は答えた。
「うーん。もしかしてこの前アオが大怪我を負ったのはそれが原因?」
「はい」
「そっか」
その言葉に納得する母。
「フライで空をとびながら他の魔法をねぇ。それって、風竜とかに乗ったりして空を飛びながら自分は魔法を使うって事じゃダメなの?」
それじゃあダメなんだよ。俺がしたいのはあくまで自分自身による空中飛行による空中戦であって他の手を借りるような事じゃ意味がないんだ。
ん?待てよ。
自分自身では2つの魔法を一緒には使えない。
だけど、もしも何かのマジックアイテムで空を飛べるとしたら、もしかしたら行けるかもしれない。
それこそ地下水みたいなインテリジェンスな武器を杖にすれば地下水と自分とで二種類の魔法が同時に使用できないか?
型月の魔術師も言っていたではないか!
無ければ他から持って来ればいいと!
ん?今何か重大な単語が出てこなかったか?
えっと?
そう!そうだインテリジェンスだ!
リリなのにおける熱い相棒、インテリジェントデバイス。
何故気づかなかったんだ。
「かーさま。ありがとうございます!」
「え?アオ?」
行き成り大声を上げた俺をビックリしながら見つめる母を尻目に、俺は勢い良く部屋を飛び出した。
思い立ったが吉日。
俺は早速セバさんを護衛に付けて、町まで駆けていった。
そして武器屋を回ること3軒。
やはりインテリジェントな武器は珍しいのかどの武器屋も扱っては居なかった。
くそう、なんなんだ?武器屋の隅に偶々陳列していた喋る伝説の剣をゲットできるサイトが羨ましい。
この際王都までいってデルフを……いやまて、それはダメだ。
それは余りにも危険だ。
この前調べたところによると、テンプレよろしく俺もどうやら物語のヒロインであるルイズと同年代に生まれてしまったようだ。
ルイズは調べられなくても、王室の人間のデータは貴族故に直ぐに手に入れることが出来た。
それから計算してみたところ俺はルイズの1歳上と言うことらしい。
これが神様から能力を貰った最強オリ主なら空気も読まずに原作ブレイクに勤しむのだろうが、残念ながらそんなチート能力を貰ったわけではない俺としては死亡フラグ渦巻く物語の渦中にわざわざ関わる積もりは今の所無い。
大体物語りと言う物はオリジナルが一番上手く納まるようになっているはずだ。
わざわざ改変する事もあるまい。
…俺が居る事によるバタフライ効果までは責任は持てないけれど。
だがしかし、もはや近場の武器屋は総て回ってしまったしどうするか。
そうして街中をトボトボ歩いているとマジックアイテム屋が目に入った。
しかも真昼間だと言うのに店の中は薄暗く、見るからに怪しいいオーラをかもし出している。
マジックアイテムか。
うーむ、インテリジェンスソードも分類はマジックアイテムか?
もしかしたら武器ではなくても意思を持ったアイテムがあるかもしれない。
そう思って俺はその怪しい雰囲気が立ち込める店のドアを開いた。
チリンチリン
扉に備え付けられた呼び鈴代わりの鈴の音が響く。
雰囲気に呑まれたセバさんが俺を止めるのを押し切って俺は扉をくぐる。
ぐるりと店内を見渡すと秘薬類も陳列されているが、それ以上に怪しい商品の数々。
竜の鱗やツメ、グリフォンの尾羽、その他俺では判別の出来ない数々の商品。
「…いらっしゃい」
「ひぃ!」
突如店の奥からかけられた、ひしゃがれた声に俺は驚きの声を上げつつ振り返り、確認する。
するとそこには60歳ほどの老婆がカウンターに座ってこちらを見ていた。
とんがり帽子のローブを羽織りその姿は御伽噺に出てくる悪い魔女のような姿だ。
恐らくこの店の店主だろう。
「何かお探しかね?」
そう訊ねられて、俺は少しばかり気後れしながら答える。
「あ、えっと。その、インテリジェントなマジックアイテムが欲しいのですが」
そう答えた俺の言葉に少し怪訝な表情を浮かべつつ店主は答える。
「ふむ、インテリジェントのぅ。そんな物を欲しがるとは珍しい坊主だのぅ」
「やはり有りませんか…」
俺は諦めて踵を返そうとした所、店主から声が掛かる。
「有るぞ?」
その言葉に俺は勢い良く振り返る。
「え?今なんと?」
「有ると言ったんじゃ」
「ほ?本当ですか!?」
「ああ、ちょっと待っておれ」
そう言うと店主はカウンターの更に奥にある扉の奥に入って行った。
暫く店主が出てくるのを待っていると、扉の奥からなにやら手に平大の水晶のような物を2つ持って戻ってきた。
俺はその水晶を見てとって期待を込めて店主に尋ねた。
「それが?」
「ああ、知性を持った石じゃ」
そう言って俺の方に水晶を差し出す店主。
それを受け取り俺は水晶に話しかける。
「君達はインテリジェントアイテム?」
すると手に持った水晶から声が返される。
『はい、私達は確かに個としての意識を有しています』
と水晶の片方が答えた。
いったい何処に口があるのかわからないが声を発している間、水晶がピコピコ光った。
「君も喋れる?」
俺は今喋らなかったもう片方の水晶に向かって問いかけた。
『はい』
「おぉぉぉおぉお!」
遂に見つけたインテリジェントアイテム。
しかも宝石タイプに俺は興奮した。
だって喋る宝石って言ったらレイハさんみたいではないか!
そして俺は即決した。
「店主!これはいくらだろうか?」
「ほっほ、誰も喋る宝石なんて不気味がって買わんからの。倉庫の中でホコリをかぶっておった訳じゃし、今後も売れる事も無かろうて。エキュー金貨200で良いぞ?」
「買った!」
俺はこの薄暗い店内に入ることを躊躇い入り口の付近で待機していたセバさんに言ってこの水晶2つを購入した。
「ひっひ。毎度あり」
俺は歓喜に震えつつ屋敷に戻った。
屋敷に戻った俺は、護衛のセバさんと別れ、直ぐさま水晶を持ち、いつも魔法練習をしている裏庭に移動した。
そして俺は手に持った二つの水晶に話しかけた。
「それで、君達って意思が有る以外にどんな能力があるの?」
『私達は人の生命エネルギー、魔法使いにおける精神力を供給してもらう事による魔法の行使を目的として造られました』
「ま!?マジで?」
なんてドンピシャな!
『はい』
「そんな凄いマジックアイテムが何で倉庫でホコリなんてかぶっていたの!?」
『凄いですか?そんな事言われた事は無いのですが。
私達が死蔵されていたのは恐らく魔法使いなら誰でも自身で魔法を使うことが出来るので、わざわざ私達のような媒介を必要としない為だと思われます。
生みの親である製作者も私達を造っては見たもののその有用性が皆無なために二束三文であの店に売り払いましたし』
「何を言っているの!俺は君達みたいなマジックアイテムを探していたのだよ。正に理想にぴったりな能力だ」
『はあ…』
「精神力さえ供給すれば、魔法の発動を肩代わりしてもらえるんだよね?」
『はい』
「それは君達が発動している魔法と別に俺も自身で魔法が使えるってことであってる?」
『試した事はありませんが恐らくは』
「よっしゃ!それじゃ早速試してみたい。お願いできる?」
『何をすればよろしいでしょうか?』
「フライの魔法、使える?」
『はい、問題ありません。私を握ってもらえれば其処から精神力を頂いて魔法を行使できるはずです』
その言葉に俺は満足してうなずき、右手に二個の水晶を持ち左手に杖を装備した。
「それじゃフライの魔法をお願い」
『了解しました』
すると右手に持った水晶が2、3度点滅したかと思うとゆっくりと俺の体は宙に浮き上がった。
「すごい!しかも俺の思ったように飛べてるし」
『世界への働きかけは私がしていますが、それを制御するのは魔力供給者です』
「しかも、無詠唱で魔法を行使したよね?」
『私達はどちらかと言えば精霊に近い存在です。故にルーンや口語における世界への働きかけをしなくても意思を繋げるだけで大抵の魔法は行使できます』
これはもしかして凄い掘り出し物なのでは?
俺は地面から1メートルくらいのところに浮かびながら左手に持った杖を構える。
そう、これからが本番だ。
そしてルーンの詠唱し、魔法が完成する。
「フォトンランサー、ファイヤ」
そして放たれる無数の魔法。
俺の体は浮いたまま、ちゃんとフォトンランサーを発動できたのである。
「いぃぃぃぃいやったーーーーーー!」
俺はその事実に歓喜して雄たけびを上げた。
『どうかしたのですか!?』
俺の雄たけびに少々ビックリしたのか、水晶が問いかけてくる。
「いや、だってフライを行使しながら他の魔法が使えたんだよ?こんな凄いことは無いよ!」
『そうなのですか?』
「そうなんだよ。魔法使いは発動後維持の必要の無い魔法以外は二種類の魔法を同時に行使する事が出来ないんだよ」
『なるほど』
「だから、君達は凄いマジックアイテムなんだよ」
ひとしきり空中に浮かびながら魔法を発動して、精神力も残り少なくなってきたところで俺は地上に降りてきた。
「はあ、疲れた」
いや、まさかこんな凄いマジックアイテムがあんな怪しい店に眠っているとは。
それをゲットできた事にはブリミルに感謝しても良いかもしれない。
無論、無神論者な元日本人である上に、ブリミルは人であって神ではい。そんな彼に感謝なんてこの世界に生まれてこの方一度もした事無いけれど、今日くらいは感謝しても良いかもしれない。
「やっぱり凄いよ君達は。これからも魔法を使う時に俺に君達の力を貸して欲しいんだけどいいかな?」
『了解しました』
「それで、君達の名前は何ていうの?」
『私達に名前を有りません』
「そうなの?造った人は付けてくれなかった?」
『はい』
「ふむ。だったら俺が付けてもいい?」
『構いません』
さて、どうしようか。
手のひらにある金と銀に輝く水晶。
先ほどから俺と会話しているのが金色の水晶。
会話はしていないがあいづちを打つ様に点滅していた銀の水晶。
金と銀か。
「銀色の君がソル、金色の君がルナ」
『ルナ』
『ソル』
あ、銀色の方が店の時以来始めて喋った。
「気に入った?」
『はい』
答えるルナ。
ソルも点滅しているところを見ると気に入ってくれたようだった
後書き
先ずはゼロ魔から始まります。その後いろいろな世界がクロスされていくので、中途半端に話しが終わってしまう事もありますがご了承くださいますようお願いしたします。
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