聖夜に降る灰色の雪
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Episode 2 妹?
「…………え?」
健は耳を疑った。まさか、見知らぬ正直が自分の名前を呼ぶなんて思っていなかった。
「今…何て?」
「あれ…?もしかして人違いでした?私の兄さんにしか見えないんですが……。」
「いや、確かに俺の名前は健だけど……え?」
健の頭の中では何が起きているのか全く理解できていなかった。彼の記憶では彼は一人っ子で、兄弟姉妹なんて一人もいたことがなかった。
「私ですよ!妹の、『聖(ひじり)』ですよ!ひ・じ・り!」
聖と名乗るその少女は頬を膨らませてそう言った。その名前を聞いても、やはり彼は思い当たる節が全くなかった。
「:………すごく言いづらいんだけど、多分人違いだと思うよ?俺は生まれたときから一人っ子で兄弟姉妹なんて一人もいないから……ってそんな顔しないでくれよ…。」
段々と、目に涙をためる聖を見て、健はどうしたらいいか分からなくなってしまっていた。
「ぐすん……分かりました。」聖は言った。
「兄さんは何が起きているのか把握できていないということがわかりました。全てを思い出させてあげます。」
彼女はそう言って立ち上がろうとする。しかし、まともに歩く体力は彼女には残っていなかったのだ。
「っと、危ない!」健は彼女を支えた。
「……とりあえず何か食べさせてください。話はそれからです。」
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