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緋弾のアリア0/D  No.0 & DollMaster

作者:白崎黒絵
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絶望の宴編
首斬り人形
  2幕 神楽柚子

 夕奈と別れて、元の状態に戻った後。

 俺は教務科(マスターズ)棟へと向かっていた。

 互いに自己紹介した後、夕奈は『用事がある』と言ってどこかへ行ってしまった。その直後にチャイムがなり、一般教科(ノルマーレ)棟からぞろぞろと生徒が出てきて、体育館の方に向かっていった。どうやら入学式の準備が始まるらしい。

 何はともあれ、これで安心して校舎の中を闊歩できるようになったのだ。さっさと教務科(マスターズ)棟へ向かおう、と俺は校舎の中を少し早足で歩いている。

 それにしても。

 いったい何だったんだ?あいつ――――夕奈は。

 殺しありの非合法な組織から来たのは間違いないだろう。だが、何故そんな奴がここに来たんだ?ここの生徒を殺しに(または誘拐しに)来た?いやいや。それならばわざわざ俺に声をかける必要はない。あそこで俺に声をかけたって何の利益もないどころか、逆に見つかるリスクが高まるだけだった。なら、そもそもが俺を狙っての犯行だった?いや、それもない。俺が狙いだったなら、それこそ声をかけずに後ろから殺ってしまえばよかっただけのことだ。

 とまあ、こんな感じに思考を巡らせていると、いつの間にか教務科(マスターズ)棟の前に到着していた。

 とりあえず俺をここに呼んだ奴へメールを送る。

教務科(マスターズ)棟の前に着いたんだけど、ここからどうすればいい?』

 メールを送信すると、ドアに寄りかかって待つ。

 ガンっ!

「うおっ!」

 いきなりドアが開いて、俺はそのまま床に倒れこんだ。痛い。

「なんだ。おまえか。てっきり不審人物がこの学校に侵入してきたかと思った」

 上から声がかけられた。『なんだ。おまえか』じゃねーよ。

 起き上がって相手の方を見ると、そこには予想通りの人物がいた。

 栗色の髪をポニーテールに纏め、ツリ目気味の瞳を俺の方に向けている。着ている服は見慣れた作業服とジーンズのセット。

 こいつこそが俺をこの名古屋女子武偵高校に呼び、入学させた人物。

 その名を、神楽(かぐら)柚子(ゆず)という。

「遅かったな。何やってたんだ」

「……色々あったんだよ」

「そうか、まあいい。立ち話もなんだし。ちょっとついてこい」

 そう言われて連れてこられたのは、純和風の部屋だった。

「ここは?」

「私の部屋だ。ここでは教師全員に個室が与えられる」

「へえ」

 別にどうでもいいな。

「何だ?私の部屋と聞いて欲情したのか?」

「なわけないだろ。そんなことよりも、もっと大事な話があるだろうが」

「ん?ああ、それもそうだな」

 俺が『何で俺をこんな学校に入学させたんだ』とか、『そもそもここ女子高だろうが』と言う前に、目の前に一枚の紙が突き出された。

「ほい、専門科目調査書。そこに書かれてる学科の中から好きなのを選んで丸を付けてくれ」

「ああわかった。えっと何々、『強襲科(アサルト)』、『狙撃科(スナイプ)』、『探偵科(インケスタ)』……へえ、学科ってこんなにたくさんあるんだな」

「ちなみにうちの学校は九割の生徒が強襲科(アサルト)に所属している」

「へえ、そうなのか……じゃあ俺も強襲科(アサルト)に……って違う!」

 危うくこいつの話術に嵌るところだった。

「俺はそんなことを話しに来たわけじゃない!」

「じゃあどんな話をしに来たんだよ。恋バナか?お姉さんに告っちゃうのか?」

「んなわけあるか!そうじゃなくて、何で俺をこんな学校に入学させたのかを聞きに来たんだよ!」

 おまえなんかに告るわけないだろ。歳を考えろ、歳を。

「何でって……そんなの会うたびに言っていただろう。おまえが強いからだ」

「そんなんが理由になるか!だいたい、ここって女子高だろ!?俺は男だぞ!」

「ぎゃーぎゃー喚くな。鬱陶しい。ここが女子高?おまえが男?だからどうした。というか、だから私はおまえをここに呼んだんだが?」

 どゆこと?

「あー、最初から話すと長くなるんだが……まず、おまえも知っての通りここは女子高だ。しかも教師も全員女という徹底ぶり。そしてここはその名の通り武偵を育成する学校だ。武偵は、いついかなる場合でも、どんな相手とも戦わなければならない」

 いや、そんなのは知ってるから。いいから本題に入れや。あと、さりげなく人の心の声を読むな。

「ここは武偵を育成する学校。教師もそれなりに戦闘力を持ってる奴が多い。だからだろうな、ここの人間は今まである問題に気が付かなかった」

「問題?」

「ああ。今まではそういうことがなかったんだが、ここ数年の生徒たちが男の犯罪者と交戦したときに――――負けまくった」

 はい?

「いやごめん。意味が分からない。何で?」

「女の生徒や教師とばかり戦っていたせいで、男との戦い方がわからなくなったらしい」

 あーなるほど。そういうことか。

 当たり前の話だが、男と女じゃ体格なんかが根本的に違う。ここの生徒や教師は、そこら辺にいる犯罪者と筋力や瞬発力、戦闘技術なんかは同等かそれ以上を誇るだろう。だが、体格は別だ。これは基本的に違わざるをえない。生物学的な問題で。

 そして、相手の体格が想定と違っていたらそりゃ負けまくるのも当然と言えるだろう。

 というか、

「今までそれに気付かなかったって……おまえらバカなの?」

「ふんっ!」

「ぐぼあっ!」

 思いっきり殴られた。壁に叩きつけられる。

「……何だって?よく聞こえなかった。もう一度言ってくれ」

「何でもありません!」

 こえー。知ってはいたけど、やっぱり超こえーよこの人。

「ならばよろしい」

「はあ。まあ、この学校が問題を抱えてることはわかったよ。でも、何でそれが俺をこの学校に入学させることにつながるんだ?」

 そう聞くと、『はあ?おまえバカなの死ぬの?ここまで説明されてわかんないとかマジないわー』とでも言いたそうな表情をされた。

「はあ?おまえバカなの死ぬの?ここまで説明されてわかんないとかマジないわー」

 言いやがったよこいつ。

「しょうがない。お馬鹿なゼロくんのために、先生が懇切丁寧に説明してあげよう」

 うざっ。

「この学校の問題についてはさっき話した通りだが、じゃあこれを解決するにはどうしたらいいと思う?」

「男性教員を入れる」

 これが一番まともな選択だろう。少なくとも男子生徒を入れるよりは女子高としてやっていける選択だ。

「そうだな。それがおそらく最もパーフェクトな回答だ。勿論、我々もすぐにその方向で行動した」

「じゃあそれで解決だろ」

「ところがそうはいかなかったんだな、これが」

 ?

「どういうことだ?」

「単純な話さ。うちの教員になれる男の武偵がいなかったんだ」

 ?

 余計わかんなくなったんだが。

「うちは『強きは美なり』って校訓があるほどの武闘派の武偵校でな。教職員も他の武偵校より強くなくちゃいけない。だが強い武偵はもう他のところに就職してる。結果、男性教員の案は断念されたのさ」

「なるほど」

「で、次に出された案が『1人だけ男子生徒』を入れるという案だ。これならまあ、まだ誤魔化しようはあるからな。流石に女子高にそう何人も男子生徒を入れるわけにもいかないし、今更共学に帰るのはもっと無理だからな」

 ここまで来ればさすがに俺でもわかったぞ、この話の結末が。

「つまり、その1人だけの男子生徒に選ばれたのが俺、ってわけだな」

「そういうことだ。うちに入る以上、それなりの強さを持った奴じゃないといけないからな……さて、これで説明は以上だ。で、結局おまえはどうするんだ?」

 『どうするんだ?』とは、このまま入学するかどうかということだろう。

「正直言って、ここでおまえに断られるとすごく困るんだが……これでも私は教師のはしくれだ。子供の意思は尊重する。おまえが入学を拒否するなら、この話は白紙に戻そう」

「……」

 はっきり言って、今朝、この学校に着いた段階では、俺はこの話を断わろうと思っていた。最悪の場合、実力行使も辞さない覚悟で。

 だが、今は少しだけ考えが変わってきている。気になることが出来たから。

 夕奈のことだ。

 あいつが何のためにここに来ているのか。俺はそれを微妙にだが知りたい。好奇心旺盛な年頃なのだ。

 それに、女子高にただ1人の男子生徒。いわゆるハーレムだ。こんな好条件を蹴るのは男が廃る。

「……わかったよ。この話、受ける」

「そうか。それは良かった。私はおまえを歓迎する。……ようこそ。名古屋女子武偵高校へ」

 心の底から安堵したように柚子が言う。その顔を見れただけでも、俺はこの決断をしてよかったと思う。

 嘘だけど。

「では、さっさとその専門科目を決めて書類を提出しろ。入学式が始まってしまうぞ」

「はいはい。えーっと、どの科目にしようかな」

 できれば武偵にならなくても済みそうな科目がいいな。かといってまったく戦闘訓練がないのもなあ。

 お、この学科なんてよさそうだな。これに決めた。

 俺は書類に丸を付けて柚子に渡す。

「ほう。衛生科(メディカ)か。意外だな。おまえならてっきり強襲科(アサルト)車輌科(ロジ)あたりを選ぶと思っていたのに」

「怪我の治療法とかなら普通の社会でも使えそうだし、衛生科(メディカ)なら戦闘訓練もあるしな。とにかく、これからよろしく頼むぜ。神楽先生」

「ああ、よろしくな。天樫(あまがし)君」

 こうして俺は晴れて正式に高校生になったのである。 
 

 
後書き
初めましてお久しぶり!(←ちょっと変)白崎黒絵です!
まだ金曜日だからぎりぎりセーフ!なんのことかわからない人は感想板見てください!
今回はまたもオリキャラ登場です!ポニテの女教師、神楽柚子さんです!彼女はこれからの話でどんどん可愛くなっていきます!きっと!たぶん!メイビー!
今回は深夜のかなり変なテンションで書いたため意味不明なところも多々あると思いますが、そういう時は笑って流すか、コメントで指摘or質問してください!全力で向き合う努力をします!

それでは今回はこの辺で。次回はまたもオリキャラ登場の予感!
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