NARUTO 桃風伝小話集
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その3
前書き
本編子供にはきつい話だってばよ!終了後。
ナルト5歳の時の話です。
「ふひひひ。ええのォ~。いいのォ~。むっちむちのぷりんぷりんじゃのォ~」
えーーーーーっと。
久しぶりにヒルゼンさんの所に呼ばれた帰り道。
人に会わずに帰りたかったので、人気の無い所を選んで歩いてきたら、木の葉の湯の女風呂を覗いている変態、いわゆる痴漢、すなわち性犯罪者を発見しました。
木の葉の里の人達は大っ嫌いで、別にどうなろうと構いはしませんが、乙女の敵なら話は別です。
っていうか、乙女の肌を無断で盗み見る輩は問答無用で天誅です。
発見、即時撲滅です。
鉄拳制裁、即退治が基本ですよね。
気配を出来るだけ消しつつ、こっそり近づきながら、今の私が使える術のうち、制御しやすい桜花掌もどきを発動しつつ、思いっきり変態野郎の横っ腹を殴りつけて力いっぱい叫びました。
「この痴漢野郎ーーーーーーーーーーー!!!!」
「ぐおおおおおおおお!?」
「きゃーーーー!?」
「何!?今の声!」
「痴漢ですって!?皆、早く上がりましょう!!!!」
「ええ!」
「そうね!」
中で寛いでいたらしいお姉さん達がどんどんいなくなる音が聞こえてきました。
よしよし。
暫くこれで被害はなくなるでしょう。
「だ、誰じゃーーーー!!このワシの取材を邪魔するのはーーー!!しかもえらい事してくれおったなーーーー!?微妙に覚えがあるような痛みじゃのォ!?」
顔に歌舞伎の隈取を塗り付けている変態が、もう復活して雄叫びを上げます。
ちっ。
やっぱり、まだ私の桜花掌もどきじゃ止めを差すことができませんでしたか。
仕方ないです。
まだ成功率が四割以下ですが、螺旋丸に挑戦しておこうと思います。
というか、乙女の敵許すまじ!!!!
「って、おおおおおお?な、なんじゃ!?このガキ!というか、その術は!!!!」
「女風呂を覗く男の人はすなわち乙女の敵です。乙女の敵は即時殲滅です!これ、乙女の常識です!」
「なんじゃ、その物騒な常識は!いや、待て!!落ち着け、話せば分かるもんじゃ!ワシが悪かった!許せ!!取材なんじゃ!」
「世の中には誤って許される事と、許されない事があるんです。乙女の肌を盗み見る事は許されない事です!お仕置きです」
「誰じゃーーー!こんなガキにそんな情緒の無い事を教えよった奴はーーーー!!!!」
「問答、無用です!!!!」
一生懸命、チャクラの制御を頑張ったおかげで、なんとか形になりました。
術の反動で私の手は血まみれですが、それでも何とか球体を維持しています。
ここまで上手くいったのは初めてです。
やっぱり、自分一人で練習するのと、敵を前にして発動させるのとでは、気合の入り方が違うもんなんですね。
この集中力を覚えとこう。
きっと私の役に立つ。
そんな事を思いながら、作り上げた螺旋丸を性犯罪者に叩きつけようとして、変態さんに手首を取り押さえられてしまいました。
流石に大人の男の人の力には私の力は敵いません。
「あ!!!!」
「まだまだじゃのォ、ガキ。ワシにそれを当てるには、まだスピードが全っ然足りとらんのォ。ふふふ。仕方ない。良ければワシが鍛えて稽古してやってもいいぞォ。お主、見どころがある。ワシが弟子を取るのは特別じゃしのォ」
かっちーーーーーん。
本っ気で頭に来ました。
性犯罪者如きの手は借りません。
というか、そういう台詞は性犯罪者が口にしていい台詞ではありません。
「黙れ!!!!この性犯罪者ーーーー!!!!」
私の渾身の叫び声と、足に集めた桜花掌もどきの蹴りが、男の人の身体の中心に突き刺さりました。
「はうーーーーーーーーん!?」
妙な声を上げて白眼をむいて泡を吹きながら仰向けに気絶してしまった性犯罪者に、私はびっくりして、どんどん不安になってきてしまいました。
「え。何。何なの。どうしよう、このままこの人死んじゃう?えええ?どうしたらいいの?ねえ、ちょっと、大丈夫?起きて?」
蹴り上げた片足に残る、生温かくてふにゃっとした人の身体の感触はとっても気持ち悪かったのですけど、そんな事より、自分がしでかしてしまった事の方がとても恐怖でした。
こんなになってしまうという事は、内臓破裂でもさせちゃったのでしょうか。
思わず、おそるおそる変態さんの身体を揺すってみます。
このままこの人死んでしまったら、どうしよう。
「ねえ、ちょっと、起きてってばね。ねえ!」
けれど、変態さんはぴくぴくと痙攣するだけで、ちっとも答えてくれません。
口から、比喩ではなく、本当に白い泡を吹いているのが更に恐怖を誘います。
人間が泡を吹くとか、そんな事聞いた事はないし、そんな風になるなんて危険度がかなり高そうです。
殺すつもりまではなかったし、そもそもまだそんなに強くなりません。
私の桜花掌もどき。
それなのに、当たり所が悪かったんでしょうか。
それともこの人は実は虚弱体質だったんでしょうか。
だけど、私の行動で今この人に異変が起きている事にかわりはないです。
どうしよう。
「ねえ。死んじゃやだってばね!私、人殺しにはなりたくないってばね!どうしたらいいってばね!?ふえ、ふえええええええん!!!!」
どうしたらいいのか分からなくなって、私はとうとう泣き出してしまいました。
私、この年で殺人者になっちゃいました。
私、まだ5歳なのに。
とうとう人を殺してしまいました。
いつか憎しみのままに人を殺してしまう可能性を考えて怯えていましたけど、こんな風に事故で殺してしまうとは思いもしませんでした。
私って、自分で思っていたよりも危険な存在っぽいです。
思わず九喇嘛に助けを求めます。
「九喇嘛ーーー。私、変態さん殺しちゃったよーーー」
『別に構わん。もっと殺せ。ワシの力も貸してやる。いっその事、この機会にこの里のニンゲンどもを皆殺しにしろ』
だけど、九喇嘛の提案は私の気持ちを逆なでしかしませんでした。
「やぁだーーー!ころしたくないもんんーーー。この人しんじゃうぅぅぅー。ころしちゃうのやだああぁぁぁぁぁ!あああああーーーん」
わんわん泣いていると、誰かが私を抱きしめて、宥め始めてくれていました。
「大丈夫。今、人を呼んだから。死んでないから大丈夫。君は人を殺してない」
「ほ、ほんとう?このへんたいさん、しなないの?わたし、ころしてないってばね?」
「ああ、大丈夫。君は人を殺してないよ」
「で、でも、おんなのひとの裸を覗くひとは、てんちゅうだってばね」
「うん。それも大丈夫だ。この人も十っ分過ぎるほど身に沁みすぎてるだろう。本当に……」
「死んでない、の?」
「ああ、死んでない。大丈夫だ」
死んでないと聞かされて、私はとっても安心しました。
「よ、良かったてばね」
ふぅ、と気が遠くなって、私はすとんと眠りに落ちました。
次に私が目が覚めた時。
私はヒルゼンさんの家にいて、何故か変態さんを紹介されて、ちょっとした旅に出る事になっていました。
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