戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十一章
軍議×出陣
「一真は我の横に。黒鮫隊の者達は一真の後ろに」
と指示が来たので、指示通り俺と劉零達は座る。
「皆も既に知っているであろうが、今朝早く早馬が到着した。差出人は足利義輝。・・・・公方だ。京を我が物顔で歩いてきた三好・松永党の内、特に松永党の動きが活発化してきているらしい」
「ふむ・・・・それは我らの動きに感づいたという事でしょうか?」
「詳細は分からんが、その可能性は高いだろう。・・・・これに伴い、出陣を本日の午後に早めるとする」
「よっしゃー!殿ぉ、ボクらはいつでもやれますからねー!」
「うむ。期待しているぞ、三若」
「えへへー、期待してて下さい!」
「麦穂、やれるか?」
「何の障害もなく」
「松平衆はどうだ?」
「松平衆は久遠様のお指図の下、命を捨てる所存。如何様にも御下知を下さいませ」
「うむ。・・・・一真」
「それでいい。一真隊も黒鮫隊もいつでも出撃可能だ」
「・・・・よし!」
パンっと膝を叩いた久遠が立ち上がる。
「各々に命ずる!我らは正午に美濃を出立。関ヶ原を通って江南に入った後は軍をいくつかに分ける!権六!」
「はっ!」
「佐々、前田の両名を寄騎につける。調略済みの江南の豪族共と連携し、江南の小城を全て制圧しろ!江南を疾く席捲し、観音寺攻めに加われぃ!」
「御意!」
「五郎左!」
「はっ!」
「寄騎として滝川をつける。観音寺の後方、京に繋がる小城を全て落とし、洛中への道を確保しておけ!」
「御意!」
「我が率いる本隊と森、明智、松平の衆、そして一真隊及び黒鮫隊で観音寺を急襲し、一気呵成に六角を叩く!」
「「はっ!」」
「了解!」
「共々の奮起を期待する!以上!解散!」
言い終わった久遠の言葉にかぶせるように、評定に出ていた大身小身の武士達が雄叫びを上げ、評定の間を駆け出した。
「一真!観音寺城で会おうぜ!」
「怪我しちゃダメですよ!頑張って一真様!」
「おうよ!和奏も犬子も気を付けな。武運を!」
「「武運を!」」
「一真さーん、途中まで一緒だねー」
「ああ。雛は観音寺より西の城の攻略だな。大変だろうが、頑張れよ」
「うーん、調略の済んでいる豪族も多いから、何とかなるんじゃないかなー?」
「雛らしいな。だが、言う程簡単な任務ではないからな。気を付けろよ」
「おー。一真さんもねー」
ひらひらと手を振りながら、雛はのんびりとした足取りで行ってしまったけど。
「一真様!久遠様の事頼みます」
「我らが殿をお任せします。・・・・しっかりとお勤めを果たして下さいね」
「我らを舐めないで頂こう。それに久遠を守るのは色々と手はあるから、心配なさるな」
「分かってるさ。・・・・では武運を」
「武運を」
「それじゃお頭。私達も」
「先に長屋に戻っております。あと誠さん、鉄砲運用について最終確認のため一緒に同行しても構いませんか?」
俺は無言で頷くと、誠と一真隊の二人は長屋に向かった。見送ると、葵達松平衆が上段に近付いてきた。
「久遠様、一真様。松平衆も失礼致します。ところで黒鮫隊と言うのは?」
「うむ。三河武士の力、期待しているぞ。黒鮫隊については後で教える」
「ふふふ・・・・」
言葉ではなく、微笑みと共に頭を下げた後、葵達松平衆は評定の間を去った。その後ろを追うように、エーリカも軽く会釈してから出て行った。俺と劉零と沙紀と久遠だけになってしまった評定の間。がらんとして、少し寂しく感じる。
「さてと、少し早めになったが、いよいよだな」
「うむ。ようやくだ。・・・・時間をかけた以上、一気呵成に京に向かう。黒鮫隊も助力を願う」
「我らは織斑隊長直属部隊。隊長の命令一つで、力を存分に発揮致しましょう」
「六角氏を倒して一葉達と合流、その後越前を攻めるまではいいとして、その次はどうする?」
「神輿である一葉と合流した後・・・・少しな、思いついた事がある。といっても閃いた事だが、確認したい事がある。我が最初の恋人であるよな?」
「何を急に言い出すとしたら、その通りだ。この時代で言うなら、正室は奏、側室は他の世界にいる妻たち数十名、そして愛妾は今の所久遠、結菜だ」
「そうだったな。なら我の心は決まった。時がくれば一真に助力を頼む事になろう」
「俺にか?何に対してかはまだ聞かんが、時がくれば教えろ。今は観音寺城の攻略に集中しよう。劉零と沙紀は戻って、いつでも戦闘準備に入るようにしろ!」
「了解しました」
と言って、空間からトレミーの格納庫に繋げてから、入って行く二人共。空間が閉じたら俺も一真隊の事で行くのでと言ってから城を出たけど。出た後、翼・大和・隼人・拓海・凛、・美咲・楓・七海・明日香を呼び出してから、長屋へと向かった。戻ると詩乃とひよの指揮で、一真隊は出陣に向けて大わらわな状況だった。
「ただいまー」
「あ、お帰りなさいお頭ー!」
「あとどのくらいで完了する?」
「もうちょっとで出陣準備完了ですよ!」
「了解。詩乃、鉄砲隊の方はどうなっている。誠以外の9人を連れてきた」
「準備は完了しております。家中の各組から、比較的、腕の立つ射手を回して貰いましたし、黒鮫隊の方々もおりますので大丈夫ではないかと。あと誠さんが呼んでおりましたから、九名の皆さんはあちらにいる誠さんに聞いてください」
9人の者達は、完全武装なので一応アサルトライフルを持たせている。活躍できるかどうかは、俺達の采配によってかな。あとは規定を決めておけば大丈夫だろう。
「お頭ー!この書類に署名をお願いしまーす!」
「いいけどこの書類は何?」
「出陣に当たっての指図書とか、足軽達へのお給金についての書類です。お頭の署名がないと、正式なものとして提出できなくて」
「分かった。さてと、ちゃちゃっとやりますか」
と言って、ボールペンを出して次々とサインしていく。
「はい出来た。これでいい?」
「はい。これで完了です。お頭も矢立持っているんですね、一真隊は役職を兼任してますが」
「俺だって、事務仕事するよ。部下の報告書を読むとかな。で、出陣準備の方はどうなっている?」
「長柄組は準備完了してます。隊列ですが、前列に弓と鉄砲、その後ろに長柄。更にその後ろに本隊と騎馬、最後尾に小荷駄と工兵って形で行こうかと思います」
「問題ないな。黒鮫隊はいつでも出撃準備完了だし。ところで鞠は?」
「鞠ちゃんなら、小荷駄の上でお昼寝してますよ。出陣の時には起こして欲しいとの事でした」
さすが元お屋形様だ。肝が据わっているな、鞠は。
「お頭!ころちゃん!陣貝だよ!」
「聞こえてる!ひよ、そっちの準備は?」
「ばっちり!」
「こちらも準備完了です」
「よし!それでは一真隊、出陣!」
「各組は組頭の指図に従って行進しなさい!」
「応!」
意気揚々と長屋を出発する一真隊を見送りながら、俺は仲間達と今後の手順を再確認する。
「まずは六角氏を攻略だ」
「南近江に点在する大小の豪族には、既に調略の手が伸びており、概ね、こちらに靡いておりますれば、観音寺までの道に障害はないでしょう」
「壬月達が城を落として合流するのに、あまり時間はかからなそうだ」
「はい。織田本隊、松平衆、柴田衆が揃えば、観音寺城もすぐに突破できる・・・・と良いですが」
「観音寺城は攻めるに難く、守るに易い山城ですから、攻略に時間が掛かってしまうかもしれません」
「ほう。なら久々に城に忍び込むか、黒鮫隊による城門爆破と降下作戦による作戦にした方がいいな」
「そうですね。その時になったら一真様は黒鮫隊と指揮及び行動をして下さい。一真隊の指揮は私達がしますので」
「よし!我らも出発する!」
「「はいっ!」」
美濃を出発した俺らは、関ヶ原を抜けて近江路を行軍する。途中で、壬月、和奏、犬子の三人と別れ、軍団を再構成してさらに西進した。トレミーは、無論俺らの真上におりながら、微速前進をしてる。観音寺までの道中に、幾つかの小城が行軍を阻むが、織田木瓜が見えた途端、城門を開いて降伏してくる豪族達がほとんどだった。
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