戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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十章
松平の殿到着
「一真様ぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!」
「ぐぇっ!」
いきなりの事で反応できなかった。爆睡中だったしね。
「一真様一真様一真様!今しがた、綾那達の殿さん、松平元康様がご到着なされましたですー!早く!早く!起きるですよ一真様!」
「・・・・・・・・・」
「あや?一真様?どうかなされたです?」
「・・・・・・・・・」
「っ!!大変なのです!一真様が何故かムシの息なのです!だ、誰かですーっ!」
早朝から、綾那によるフライングボディプレスを受けて、一瞬だが魂だけ天界に行きそうだった。いくら神であっても、今は人間の姿。抜ける時もある訳が。慌てた綾那であったけど、何とか目を覚ました俺は服に着替えて外に出た。外に出るとセンスの良い鎧に身を固めた武士達が、下馬して立っていた。そしてその横にいたのが・・・・」
「よう、桐琴に小夜叉。いつ戻ってきた?」
「おう。ついさっきな」
「そっかー。で、鬼は全部駆逐したのか?」
「へへー。母と二人で二百と少しってとこかな」
「二百か。よくやった方だな、でも目の下にクマが出来てるが?」
「あー、寝ずに狩っていたからな。仕方ねえよ」
「そうか。で、肩慣らしにはなったのか?」
「うむ。大戦の前にだからの。準備運動は出来たわい。ところであっちのは誰だ?一真」
「まだ紹介受けてないけど、たぶん・・・・」
と言いかけた所で、綾那が後ろにいる少女を連れてきた。綾那は、俺の事をあの有名なとか言ってた。
「これは・・・・。田楽狭間に舞い降りた天人とは、あなた様の事でしたか・・・・」
微笑みとともに現れた少女。俺に向かって優雅な一礼をした。
「お初にお目に掛かります。我が名は松平次郎三郎元康。通称葵と申します。三河岡崎城主であり、松平家の当主として、此度、織田殿のお誘いに応え、上洛の露払いをすべく、参上仕りました。以後は葵と気楽にお呼び捨て下さいませ。向後、お引き回しの程、何とぞよろしくお願い致します」
名乗りを上げた少女が、再び、俺に向かって深々と頭を下げた。
「まあ、別にそんな畏まった挨拶をされたらこっちが困る。気楽で接してくれると助かるんだが」
「しかし、織斑一真様といえば、織田殿の恋人であって神仏の類として内外に響きかせる御方。私如き田舎小名が、頭を高くして良いはずがございません」
「あー、・・・・そうなんだ。でも今は人間であるし、神仏の類とか関係無しで、普通に接してほしいんだが」
「普通、ですか。・・・・では、あの、そう出来るよう、努力させて頂きます」
俺の申し出が予想外なのか、少し困惑する葵。想像より、狸少女っていう訳ではなさそうだけど。
「まあ、・・・・とりあえずよろしくな」
やはり、正史と外史では違うんだな。鞠もそうだが、葵もだけどギャップが激しい。
「綾那。一真様にしっかりとお仕かえしましたか?粗相などはありませんでしたか?」
葵は隣にいた綾那に声をかけた。
「です!綾那はちゃんと頑張ったですよ!ね!一真様っ♪」
「まあな。楽しい時間だった、ありがとうな綾那」
言いながら俺は頭を下げる。そしたら、葵が失礼ではと言ったが俺は気にしてないとな。
「ななな何とーっ!」
大丈夫、と言おうとしたら突如後ろから来たもう一人の少女。何か知らんがわざとらしい声を上げた。
「田楽狭間の天人と言われる織斑一真様が、陪臣でしかない綾那に頭を下げるとは!はっ!?しかし綾那の主人は葵様。という事は、田楽狭間の天人よりも、葵様の方が更に高貴という事になりますぞ!」
「そ、そうなのかしら?」
「てめえ、その口閉じてあげようか!ゴラッァァァァ!」
俺は目だけを解放して、覇気をこいつに浴びせた。殺気だったら、他の兵も支障が出るからな。
「あんまり舐めた口聞くと殺すぞ!」
「ひっ!?」
「も、申し訳ございません。悠季にはあとで言い聞かせますので、ご容赦を」
「まあいいや。こんな奴のために怒っても無駄だ。天人じゃなくて様を付けろよな?何様のつもりだ。今は人間の姿でも神の姿になったらどうなっていたか。で、お前の名は何だ?」
「わ、我が名は本多弥八郎正信。つ、通称は悠季と申します。以後お見知りおきを」
「本多?綾那と同じ姓だが、その辺はどうなっている?」
「悠季は綾那の従姉になるです。全く・・・・悪知恵ばかり働くから一真様を怒らせたのです」
本来なら、女狐と言いたいのだろう。三河武士の筆頭がどうのこうのとか。俺を怒らせたら、この日の本がないと思えって感じだし。
三河武士・・・・・・君主のために!を合言葉に、何でもする人達。その癖、ちょっとした事を根に持ったりする。総じて面倒くさい。
「で、三河武士は今どこに?」
覇気を閉じた後に、普通の会話に戻した俺。悠季と名乗った者は、葵の後ろに隠れてしまった。ああ言うのが苦手でもある。
「あ、はい。三河衆は、美濃に向けて先行させております。歌夜から連絡があり、私達は一真様にご挨拶すべく、こちらにお待ちしていた次第」
「あらま、じゃあ俺に挨拶するためだけに?」
「はい。久遠姉様が最も信頼し、最も大切にしている御方と聞いております。それに一真様は、現将軍・義輝様とも懇意であらせられるとか。ならば是非にと思い、ご挨拶させて頂きました。向後、お可愛がり下さいませ」
「こちらこそ、よろしくな」
頭を下げる葵に下げ返しながら違和感を感じる。というか、織田の内情に詳しいというか、俺が一葉と懇意である事をいつ聞いたんだ?
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