戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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九章
今後の事
「・・・・おお。鯵の開きがおかずとは。山中の宿なのに、なかなか豪勢なおかずです」
「森親子と一緒に出掛ける時は、俺が財布担当だったからな。一番駆逐した言う事ではないけど」
今回殺る時も、結構持っていくからな。それに普通なら、銭は重いからあんまり持たないと思うけど俺には空間という持ち物収納スペースがある。だから使う分はいつも入れとく。足りない時は創造の力で銭を創るし、力の無駄遣いかもしれない。
「まあ、桐琴達と別行動になったからな。一人になって怖かったと思って豪勢にしといた。どう?気に入った?」
「このようなご褒美が頂けるのでしたら、何度でも三河にお使いに行きたいですね」
微笑みながら言うと、詩乃は食膳に顔を近づける。
「ふむ・・・・焼き魚の匂いというのは、格別に食欲を刺激します・・・・何と幸せなことか」
うっとりとした表情で言いながら、詩乃は夕食に箸をつけていく。
「気に入ったようでなによりだ。・・・・美味い?」
「・・・・(コクコクコクッ!)」
幸せそうな表情で、口の中に放り込んだ焼き魚の美味しさを、身体一杯で表現する。そんな詩乃の姿がとても愛らしい。
「いやはやー、鬼というのは一体、どういう存在なのですかねー?」
詩乃の隣で、パクパクとご飯を頬張っていた綾那が、小首を傾げながら呟いた。
「詩乃、詳しく説明してないのかい?」
「私の知る限りの情報はお伝えしましたが・・・・やはり見ると聞くとでは印象が変わるのでしょう」
「です。詩乃に話を聞いて、綾那は鬼って、もっと凶暴だと思ってたですよ」
「今日の戦い、手応えがあまりなかったものね」
「ですー・・・・綾那も森のお母さんについて行けばよかったです」
「さすがにそれは駄目。私達は殿の名代でもあるんだからね?」
名代・・・・代理、という意味。ここでは「殿に代理を指名された正式な使者なんだから、しっかりしようね?」という意味。
「あうー・・・・ちょっとつまんないです」
「あれくらい序の口さ。小さい巣だったからな、鬼の事は追々説明しておくよ。ところで松平衆は先行して二人が美濃入りだったけど、本隊はいつ頃到着予定?」
「あれで序の口ですか。そうですね・・・・今回は長期遠征と聞いておりますので、準備に時間が掛かってしまっております。それに荷駄を率いての行軍ですから、三日四日は見ておいて頂いた方が良いのかもしれません」
「じゃあ、森親子を待つ必要あるから、ここでしばらく逗留するか」
「そうですね・・・・松平の殿と合流後、美濃に向かう形でも問題ないかと」
「ならそれでいいとしよう。あとは森親子が帰ってくるのを祈るしかないな」
「いやはや、森の二人は綾那もびっくりなキチガイさんでしたよー。一真様も凄かったです!」
「まあ、俺も戦闘になるとああなるからな。所謂戦闘狂だし、でも他の子らはまともだから心配はない」
「なら安心です!綾那、強い武者と戦うのは好きですけど、キチガイとは戦いたくないです」
「まあ、俺も半分同類なんだけどな。でも根は悪い人ではないから、仲良くしてほしい」
「分かったです。一真様の頼みなら断れないです!仲良くしてやるです!」
「よろしくな。だけど、少し心配だな。あの二人」
「お二人とも、あれだけお強いのですから、鬼に手こずる事はないのでは?」
「いや、いたんだよねー。あの二人でもかなり手こずった鬼がいたけど」
「詳しく!」
「ん?」
「その強い鬼の事、綾那はもっと知りたいです!」
何か、思っていた以上に食いついてきたので説明した。国産の鬼について、鬼に犯され孕まれて生まれた鬼についてだけど。
「なるほどー・・・・つまり大和撫子を犯して生まれた鬼子は果てしなく強い、という事です」
「そういう事だ。桐琴と小夜叉が近接戦で、俺は銃での遠中距離戦で倒すのに一刻はかかったかな」
逃がさないように結界を張ってたから、逃げれられる事はなかったけど、銃での遠距離射撃での応戦だったし、仲間である森親子を当てないようした。二時間もかかったから、あの時は凄い疲れた。結界張りながらだったし。
「ふむー、殺ってやるのに躊躇いもおきない外道なのですー・・・・これからも鬼はたっぷり殺ってやらないとです!」
「とか言いつつも、強い鬼と戦いたいだけ何だろう?」
「そそそそそんな事ないです!」
「動揺しすぎだ。そんなのは図星ですと言っているようなもんだ」
「うー、一真様はちょっと意地悪です」
「意地悪というより、武士にとっては強い相手と戦いたいってのは当然かもしれないけど、鬼子は鬼が女性を犯して生まれた鬼だ。生んでしまった女性は気が触れてしまう事もある。そんな事にならないように、被害を最小限にするために、俺は全力を持って鬼を駆逐してやるさ。森一家と付き合っているのもそういう事さ」
鬼に犯された女性が生きているのは稀な事。例え生きていても、気を狂い、精神いや心か、心が壊れてしまう恐れがある。
「なるほど。主の御心も量れず・・・・申し訳」
「いいんだ。これは俺が好きでやっている事だ。それに心配してくれるのも嬉しい事何だぜ。ありがとうな、詩乃」
「・・・・はい」
「とりあえずだ。この日の本から鬼を駆逐するために、松平家の皆を頼りにさせてもらおうと思っている。俺も前線に行っちゃうし」
「大丈夫です。我らが殿は、織田家当主、久遠様とは幼馴染の間柄。久遠様が望むならば、命を賭けてその望みに答えるでしょう」
「殿は律儀なのです!」
「そうか。なら任せられるな」
ただ、俺の知っている松平元康・・・・徳川家康は、スゲー狸親父の印象がある。この世界は恋姫世界と同じで武将が女性だから狸女って事になるかも。
「それはそうと・・・・一真様」
「何だ?」
「此度の戦、かなりの強行軍になる、と詩乃殿より聞いているのですが・・・・」
「強行軍だろうなー。・・・・まずは上洛についてだけど、江北の浅井家は仲間だからいいとして、江南の六角を抜かないといけない。六角を抜いて上洛したとしても、畿内で強勢を振るう三好・松永の連合軍と戦う事になる。それを打ち破って足利将軍と合流後、そのまま畿内を制圧して地盤を固めて、勢いある内に越前にまで侵攻するだろうな。で、越前にいる鬼達をブッ倒して、ようやく戦が終了するってのが、今回の作戦だな」
「そ、それはもう、作戦と呼べるものではないですね」
「言うは易しですが、それを短期間で成し遂げなければならない」
「そういう事。久遠も無茶をいう」
「・・・・と仰る一真様は、特に無茶とも思っていないご様子ですが」
「そりゃそうだろう。今回はいくらでも銃の役目は来るし、ちゃんと作戦も考えるさ。久遠がやらないといけないと思うと二つの方向で支えるだけ」
「成功と失敗、ですか?」
「そうだ。成功するように支えて、失敗した時は大失敗にならないように支える。正直鬼との戦いは武士だけだと厳しいモノだが、お忘れかもしれんが黒鮫隊がいる。この時代の未来のために必要な戦い。なら、未来の技術を使いまくってもいいようにやるだけさ」
「そうでしたね。後ろ盾には黒鮫隊がいる事を。でしたら私は、そんな一真様を支えると、心に決めておきましょう」
「ありがとな」
この時代の未来のためならば、俺は全力を持って相手をする。例え多勢に無勢だとしても、最終兵器として大天使化になって神の鉄槌を喰らわせる。もしくは、ドウターが現れた場合は第二の姿となって戦うとしよう。未だにゲート反応はない。
「とりあえずさ。織田はそんな感じで覚悟を決めている。だから・・・・二人の力を貸してほしい」
「・・・・お二人の強きお心には、共感を覚えます。そして一真様が望まれるならば、我ら二人は、その望みを完遂してみせるのみ」
「望まれたのならば、やるのみなのです!それが三河武士の心意気なのですよ!」
「綾那、歌夜。心より感謝する」
俺は嬉しくて頭を下げる。
「なっ、何をっ!?」
「あやややや、そ、そんな、一真様!頭なんて下げなくて良いです!」
「そうです!一真様は久遠様の恋人であり、天人!いや神様!我らのような田夫野人に頭を下げる必要など・・・・・っ!?」
「天人とか神とか今は関係ない!俺は一人の人間として二人にお礼を言いたい。ありがとう。そしてこれからもよろしくな」
「そんな・・・・!あ、あの、こちらこそ・・・・よろしくお願い致します」
「へへへー、綾那、一真様のためなら死ねるですよ!だからよろしくなのです!」
「・・・・ふふっ」
「どうした?いきなり笑い出して?」
「いえ・・・・ただ少し、一真様の未来が見えた気が致しまして」
「未来予知?そんなのあっても俺は神だからな。不老不死だから、このままだと思うが」
「その時になったらお教えしますよ。不老不死で変わらずともでも」
「じゃあ、とりあえず楽しみにしとくか。さて、飯も食ったから、俺は風呂にでも入ってくるわ。女将さんが特別に風呂を沸かしてくれたようだから」
「お風呂いいですー!一真様、一緒に入るですよ」
「ちょ、ちょっと綾那!そういうはしたない事言わないの!」
俺が風呂入るかと言ったら綾那も入るとか言ってきたが。男だからな、見ず知らずの女性と入る趣味はない。歌夜が止めてくれたけど、それに狭い風呂だから二人は入れないと言ったら残念がっていた。
「じゃあそういう事で、皆また明日」
と言ってから風呂に入っていった。そしたら、遠くから詩乃の声が聞こえた。
「確かに・・・・見えた気がしたのです。遥か未来・・・・この日の本の大名達全てが、あなたの門前に笑顔で馬を繋ぐさまが・・・・。少し妬けますが・・・・それこそ我が主。そして・・・・私の愛しい人」
ああ、聞くの野暮だったな。だけど、聞こえてきたんだからしゃあないけど。言っとくが盗聴器とか仕掛けてないからな。でも、その未来こそ俺が叶えるべき事なのかもな。俺が神だから?違うな、一人の人間として、愛したい者がいれば、俺は素直に答えようと思った。
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