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万華鏡

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第五十七話 全てが終わってその三

「後、甲子園行ってきたら?」
「えっ、今?」
「今日本シリーズだから」
 阪神が日本シリーズに出ているのだ、滅多にないことだと言われているが出るとやはりいいものである。
「行ってきたら?」
「もうチケットないわよ」
 琴乃は残念といった顔で母に返した。
「シリーズよ、しかも阪神の」
「だからなのね」
「もう皆先にチケットを買ってね」
「売り切れよね」
「そう、ないわよ」
 今買うことは出来ないというのだ。
「とっくに売り切れてるわよ」
「気持ちの切り替えになると思ったけれど」
「普通の試合でも優勝争いをしていたら」
 その時はもう、というのだ。
「売り切れるから」
「今jはシリーズだから特になのね」
「それこそチケットは飛ぶ様に売れて」 
 そしてだというのだ。
「もうないわ」
「甲子園は満員御礼ね」
「クライマックスも終わったから」
 そこで阪神は勝ち抜いたのだ、伝統的にここぞという時にこそ負けるチームではあるが今回ばかりはだったのだ。
「もうシリーズはね」
「売り切れね」
「そろそろはじまるけれど」
 シリーズはまだはじまっていない、しかし既にだというのだ。
「売り切れよ」
「四戦までは絶対になのね」
「テレビで観るわ」
 日本シリーズは、というのだ。
「相手はロッテよね」
「そう、前に惨敗したね」
「今度は負けない筈だから」
 ここで絶対、と言えないのが阪神であり野球なのだ。野球に絶対はなく阪神はその中でも特に絶対という言葉が当てはまらないのだ。
「多分ね」
「テレビでいいのね」
「けれど考えてみたらね」
 阪神の日本シリーズもだというのだ。
「気持ちの切り替えになるわね」
「ぼうっとしているよりも阪神を応援する方がいいでしょ」
「確かにね」
「阪神が勝つとね」
 それこそだというのだ。
「日本中大騒ぎになって」
「神戸もよね」
「八条町もね」
 神戸の中にあるこの町、琴乃達の通う八条学園がある町もだというのだ。
「商店街も百貨店も全部大安売りよ」
「凄いことになるわね」
「巨人が勝っても何にもならないわ」
 提灯持ち以外は持て囃さない、l巨人の優勝なぞ日本の何にも貢献しない。何処が安売りになる訳でもないのだから。しかし巨人が負ける姿を見れば全世界の人間が喜ぶ、だからこそ巨人は負けることがいいのだ。
「けれど阪神はね」
「勝つとね」
「阪神阪急百貨店がバーゲンになって」
「ホテルもサービスしてくれて」
「グループ全体がやってくれるから」
 それに加えてだ。
「大阪も神戸も街自体がバーゲンセールになって」
「特に大阪がね」
「いいこと尽くめよ」
 阪神が優勝した際の経済効果は計り知れないのだ、巨人が優勝してもそれこそ日本には一銭ももたらさないのに対して。
「だからね」
「阪神のシリーズもね」
「琴乃ちゃんの気持ちの切り替えになれば」
 彼女にとってもよいというのだ。 
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