八条学園怪異譚
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最終話 最後の宴会その四
「乙女なんですね」
「あれっ、今気付いたの」
「何かセクハラとお酒ばかりですから」
愛実だけではない、聖花も茉莉也についてはこうしたイメージを持っている。そしてこのイメージは消えるものではない。
「ですから」
「まあどっちも大好きだけれど」
「想い人についてはですね」
「そうよ、あくまでね」
「一途なんですね」
「そうじゃないと駄目だからね」
少なくとも異性相手にはだとだ、茉莉也は自分の考えをいう。
「そういうものだから」
「そうなんですね」
「あんた達も自分達に相応しい相手がを見付けたらね」
茉莉也は二人にその場合についても話した。
「浮気なんてしないでね」
「一途ですね」
「そうあるべきですね」
「そうよ、これまでは泉のことにかなり熱中していたでしょ」
そしてそこに青春の比重を向けていたというのだ。
「けれどそれをね」
「恋愛に、ですか」
「そちらにも」
二人も茉莉也の言いたいことがわかった、この辺りはもう以心伝心だった。
「関心を向けてですか」
「そちらもっていうんですね」
「中々いいものよ」
恋愛、それはというのだ。
「とはいっても失恋のリスクもあるけれどね」
「失恋って怖いものですよね」
聖花がだ、怯える顔で茉莉也に問うた。その話を聞いて。
「別れた時の痛みって」
「ううん、私そういう経験はないけれど」
幸いにだとだ、茉莉也はこのことについては経験がない為曖昧な顔になってそのうえで答えたのだった。
「それでもよく聞くわ、友達からね」
「じゃあやっぱり」
「相当辛いみたいね」
失恋の経験、それはというのだ。
「別れ方、振られ方にもよるけれど」
「そうですよね、やっぱり」
「それで自殺したとかいう話も多いし」
「それもありますよね」
「そう、心の傷だから」
身体の傷よりもある意味において辛い、しかもこの傷を知っている場合も知らない場合もえぐる人間がいるから余計にこの手の話は嫌なものになる。
「少なくとも私はそうした傷は触らないけれどね」
「他の人のですね」
「痛いのは見てわかるから」
失恋による心の傷、それはというのだ。
「だからね」
「それじゃあ恋愛は」
「リスクはあるわ」
これは紛れもない事実だというのである。
「それはもう辛いから」
「けれどそれでもなんですね」
「恋せよ乙女ってね」
モーツァルトの歌劇『ドン=ジョヴァンニ】にある言葉だ。ヒロインの一人が歌うアリアの題名になっている。名曲である。
「そう言うからね」
「けれど失恋した時が」
「そうよね」
聖花にだ、愛実が応えて言う。
「その時のことを考えたら」
「どうしても」
辛い、怖いとだ。二人は顔を見合わせて言うのだった。
しかしだ、ここでだった。茉莉也は二人にt概してこう言った。
「一人だと辛いけれどね、そうした時は」
「一人ならですか」
「その時は」
「けれどあんた達は二人でしょ」
茉莉也が今言う相手は一人ではなかった、二人だった。
その二人にだ、こう言ったのである。
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