八条学園怪異譚
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最終話 最後の宴会その三
「駅も然りじゃ」
「だから私達は駅前に出たんですね」
「泉から」
「最後の最後で実に面白いことがわかったのう」
博士はしみじみとして言った。
「君達もわしも思いも寄らなかったと思う」
「はい、まさか最後は駅だなんて」
「想像もしていなかったです」
学園の中にいたからだ、最後はその外に出るとはわかっていたがそれでもまさか駅前に出るとは思わなかった。
だからだ、二人も言うのだ。
「駅、ですね」
「そこも妖怪さんや幽霊さんに関わるがあるんですね」
「線路は通り道でな」
列車が通る、それ故にだ。
「駅からはじまり駅に終わる」
「妖怪さんや幽霊さんも列車に乗って線路を通ってですね」
「駅からこの学園に来ておられるんですね」
そのことがわかったのだった、二人も。
だからだ、すき焼きを食べつつしみじみと言うのだった。
「ううん、最後の最後に駅ですか」
「そこに着きましたね」
「妖怪や幽霊の諸君のことを学ぶと様々なことがわかる」
実にだ、博士は彼等と共にいて今も多くのことを学んでいる。一説には二百歳であるというが今も学んでいるのだ。
「わしにしてもよくわかったわ」
「ですね、私達も」
「物凄いことがわかりました」
二人もしみじみと言う、そしてだった。
すき焼きの肉を酒と一緒に楽しむ、その中でだった。
一緒の鍋をつついている茉莉也がだ、二人にこう言ってきた。
「どんどん飲んで食べてね」
「あっ、そうしてます」
「もう」
「ならいいけれどね。今晩の主役はあんた達だからね」
だからだ、どんどん飲んで食べろというのだ。
「いいわね」
「はい、それじゃあ」
「どんどんですね」
「お肉も一杯あるからね」
すき焼きの主役のそれはだ、茉莉也は言う傍からどんどん入れている。肉は鍋の中で瞬く間に煮えていき醤油の色に染まっていく。
「食べてね」
「美味しいですね、このお肉」
「かなりいいお肉ですね」
愛実も聖花もその肉を食べつつ言う、勿論葱や茸、豆腐も食べている。
「輸入肉っていいますけれど」
「馬鹿に出来ないですよね」
「たかが輸入肉、されど輸入肉よ」
こんなことも言う茉莉也だった。
「馬鹿に出来ないものよ」
「そうですね、確かに」
「この味ですと」
「安いだけじゃないのよ」
輸入肉はというのだ。
「味もいいのよ」
「はい、ですからうちのお店でも使っていますし」
「うちでもよく買っています」
彼等にしてもだというのだ。
「調理の仕方次第で変わりますよね」
「美味しさが」
「そうなのよ、輸入肉が駄目っていうのはね」
その主張はどうかというと。
「お料理が下手ってことなのよ」
「あれっ、じゃあ先輩も」
「最近は」
「まあね。家が神社だから和食メインだけれど」
その頭の後ろに左手をやりつつ右手で飲みながら答える。
「おつまみ系以外にもね」
「作っておられるんですか」
「そっち以外も」
「そうよ、ダーリンの為にもね」
その許嫁の為にだ、作っているというのだ。
「今からお嫁さんになる修行よ」
「何か先輩も先輩で」
愛実は茉莉也のその言葉を聞いて考える顔になってこう言った。
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