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あかりの碁

作者:くるみ
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明日美さん強化編
  私に見せたかったのは、この人達だったんだ

 
前書き
1章は短編。 囲碁小説だけど囲碁回じゃないです。
当時を懐かしく思いながらご覧ください。  

 
好きってなんだろう。
目の前の人たちを見て、私は本当に囲碁が好きなのかどうか考えていた。

つい今日師匠になったばかりの、プロより囲碁が強いらしい小学生、藤崎あかり。
彼女との初対局に緊張してしまって、いつも以上にミスを連発して落ち込んでいたら
突然彼女が対局を中断し、どっか遊びに行こうと言いながらゲームセンターまで連れて来られた。

ゲームセンター。
これまで一度も行ったことはないし、囲碁仲間どころか
同年代の子すらあまり来ていないだろう場所。

高校生以上の人たちが集まって、周りのゲームで遊ぶ場所。
その中に入って、私達は一つゲームを遊んだ。

足を使ったダンスゲーム。 すっごく疲れたけど楽しかった。
今、そのゲームの台の後ろで、そのゲームを遊ぶ同年代の女の子を見つめている。

私達が遊ぶ前に、あのゲームをやっていた女の子。
それが私達が1ゲーム終わって休んでいる間に、もう一度踊っている。

一回踊っただけで疲れて動きたくない私とは大違い。

よく知らない英語の曲で踊りながら、私がやったそれより難しい曲を踊る彼女。
何度も何度もミスをしながらも、彼女は踊る。
時々タイミングが遅れるのか、2小節くらい休んで、その間を全部落とすこともある。
けれど、それでも最後まで踊り続ける。
そして、その間ずっと笑っていた。

彼女の表情と彼女の踊りを見て、さっきの自分との大きすぎるまでの違いを思う。
ミスするたびに落ち込んで、さらにミスを重ねていく私。
ミスをしたらミスをしたで、少し休んでから切り替えてプレイする彼女。

ミスをしたらしたで落ち込んで、対局中どんどん沈んでいく私。
楽しそうな顔で、ミスしても笑いながら次につなげていく彼女。

この違いはどこから来るんだろうか……。
考えても、答えが出そうになかった。


しばらくして、私達も歩けるぐらいに回復したので、他のゲームも見て回る。

ここには、いろんなゲームがある。
面白そうなゲームから、人外魔境のような場所まで様々で、
そして、それを遊ぶ人も色々いる。

でもそんな人たちには、ひとつの共通点があった。
皆真剣に画面を見つめ、勝ったらはしゃいで、負けたら落ち込んで、
でもすぐにもう一回やろうと100円を投入していること。

ふと、隣のあかりちゃんを見た。 彼女はゲーム画面ではなく、
遊んでいる人たちの、その様子だけを見ていて。

それで、理解した。
あかりちゃんが私に見せたかったのは、この人達だったんだって。

ここにいる皆の姿を見て思う。
この人達は、目の前のゲームをどう思っているのかな。

そして私は…… この人達みたいな勝負ができるだろうか。

「始めて、私が囲碁を打った時は、
相手の打ち方に感動して……ああやって打てたらって思ったのを覚えてる。
明日美さんは、どう?」

となりのあかりちゃんが、そう聞いてくる。
ゲームの音がうるさくて聞こえにくいけど、はっきりとした声で。

そして、言われて思いました。
始めて囲碁を打った時は……


こんな風に、楽しめていたことを。 
 

 
後書き
ゲームセンターは若い人を集めるための努力をしている途中で、
そしてその努力が実るのもこの時期と考えています。 
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