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八条学園怪異譚

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第六十話 時計塔その八

「お酒もお菓子も人の十倍食べても大丈夫ってね」
「十倍って多いですね」
「相当糖尿病になりにくいんですね」
「有り難いことにね、とにかくね」
「泉を見つけ終わったら」
「その時は」 
 すき焼きだった、そして酒だった。
「楽しみにしてます」
「そっちを」
「そう、全部終わったらよ」
 茉莉也もすき焼きについて目を輝かせて語る。
「皆で食べるから」
「糖尿病のことは気にせずに」
「そうしてですよね」
「正直有り難いわ」
 その糖尿病になりにくい体質にというのだ。
「まあその分私は私で色々問題のある体質らしいけれど」
「問題があるって?」
「何かあるんですか?」
「確かに肝臓が強くて糖尿病になりにくいけれど」
 茉莉也もこのことは確かに有り難いと思っている、だがそれでもだというのだ。
「痛風はね」
「ああ、それですか」
「痛風ですか」
「そう、女の子はなりにくいんだけれど」
 それでもだというのだ、茉莉也の場合は。
「私は違うのよ」
「痛風になりやすんですか」
「そうなんですか」
「そうなのよ、博士に言われたのよ」
「だからそっちにはですか」
「注意されてるんですね
「それでビールはあまり飲まない様にしているの」
 ビールが最も痛風によくない。ドイツにおいて痛風が国民病になっている理由はビールにあることはよく指摘されている。尚このビールのせいでドイツ人は痛風の他にも肥満や薄毛に悩まされているとも言われている。
「日本酒メインなのよ」
「そういえば先輩日本酒を一番飲まれてますね」
「そちらを」
「そうでしょ。健康には気をつけないと」
 茉莉也もだ。それには気をつけているというのだ。
「痛風って凄く痛いらしいから」
「よく言われてますね、そのことは」
「物凄く痛いって」
 足の親指の付け根が万力で締め付けられる様に痛むと言われている、この痛みからはじまる病気なのである。
「その痛みは泣きそうだって」
「風がちょっと吹いても泣きそうになるんですよね」
「そんなのお断りだから」
 茉莉也にしてもだ、痛いのは嫌なのだ。
「気をつけてるのよ」
「日本酒ですか」
「そっちなんですね」
「大豆とかお魚とかもよく食べるわ」
 健康的と言うべき食事である。
「お家でもね」
「あっ、そういうのは是非食べるといいですよ」
 愛実はそうした食材を聞いてすぐに明るい顔で応えた。
「血が綺麗になるだけじゃなくて身体全体にもいいですから」
「そうでしょ、緑黄色野菜もね」
「是非食べるべきです」
 食堂の娘としての言葉だ、この言葉も。
「私もよく食べてます」
「実は私も」
 聖花もだった、そうしたものをよく食べるのは。
「そうしたものはよく食べてます」
「好きですし」
「健康によくて美味しいからね」
 だからだと話すのだった、茉莉也も笑顔で。
 そうした話もしてだ、そしてなのだった。 
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