八条学園怪異譚
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第六十話 時計塔その六
「私達子供の頃からよく一緒にお風呂入ってたけれどね」
「最近なかったからね」
「こうして入るのって久しぶりな感じで」
「いいわよね」
「そうね。高校に入ってから」
その時からだった、あらためて考えてみると。
「なかったかしら」
「春はあったわよ」
その時はだというのだ、愛実が言うには。
「六月位までね」
「あれっ、シャワーじゃなかったかしら」
「ちゃんとお風呂入ってたじゃない、その頃は」
「そうだったかしら」
そう言われてもだ、微妙な顔で応えた聖花だった。
「何か記憶にないけれど」
「そう?入ったわよ」
「何処か記憶がこんがらがってるのかしら」
「そうじゃないかしら。高校に入ってから色々なことがあったから」
本当に色々とあった、二人は。
「だからじゃない?」
「それでかしら。まあとにかくね」
「うん、とにかくよね」
「今は二人で入ってるから」
それでだというのだ。
「これでいいわよね」
「そうよね、今は一緒に入ってるからね」
「久しぶりだけれど」
しかし今はだった、二人は同じ湯船に入りながら笑顔になって話す。
そしてだ、その中で愛実はこうも言ったのだった。
「じゃああったまってね」
「それからよね」
「うん、行こうね」
泉の場所である時計塔にだというのだ。
「それからね」
「温かい服装にした「方がいいわよね」
聖花もこう言う。
「湯冷めしたらよくないし」
「そうそう、秋も深くなってきて夜だし」
だからだというのだ、愛実も。
「スカートの下にタイツ穿いてね。あとは上に羽織っていって」
「そうしていった方がいいわね」
「私達冷え性だから」
このことを強く意識してのことだった、身体が冷えるということに対してはかなり気をつけているのだ。
「そこは注意してね」
「そうしていこうね」
「身体も綺麗にしてあったまって」
「それからね」
二人で話してだ、そしてだった。
学園に向かった、学園の着くと校門に茉莉也がいた、茉莉也は巫女姿でありその格好で校門のところに立っていた。
その茉莉也がだ、挨拶をしてから二人に明るく声をかけてきた。
「じゃあいいわね」
「今からですね」
「時計塔に」
「行って来てね、時計塔の入口までは一緒に行くから」
「わかりました、じゃあお願いします」
「そこまで」
「あと小林先輩は」
愛実は彼女のこともここで問うた。
「今はどちらに」
「先輩なら今博士の研究室におられるわよ」
「じゃあそこで、ですか」
「すき焼きの準備をですね」
「そう、お肉はもうすき焼き用のお肉を用意してあるから」
勿論輸入肉だ、輸入肉は日本人に多くの牛肉をもたらしてくれた。
「あとお葱を切ってね、他の用意もしてね」
「お豆腐とか糸蒟蒻とかですね」
「そうしたものも」
「そう、準備してくれてるから」
「そういえば小林先輩お料理も上手でしたね」
「そちらも」
「そうよ、先輩は大和撫子なのよ」
料理についてはだ、問題はないのだ。
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