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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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最終話 平和を願って

 
前書き
後書き含めて二話連続投稿なので注意してください。 

 
戦争が終わって三ヶ月。世界は想像以上に混乱していた。ロゴスの壊滅、地球連合の瓦解、プラント最高評議会議長であるギルバート・デュランダルとその支持者。社会的なトップに立つ人間が急激に減ったのだ。政治的な混乱は未だに収まりを見せる様子はない。
更に言えば、ロゴス残党、連合継戦主義者、デスティニープラン支持派などと世界の勢力図は今や二色三色といった風に分けれるほど簡単なものではなくなってしまった。連合の実質的な支配が無くなったことによってカンブリア大爆発のようにあらゆる組織、支持団体が出来ては消えるという混乱も少なくない。

『世界は決して平和になったとは言えない。しかし、戦争が終わりを迎えた。これは事実であり、だからこそ、我々は前に進まなくてはならない』

道を歩いているとテレビではプラントの評議会議員の一人が宣言をしていた。その様子を眺めながらそれでも戦争が終わったのだという事を実感する。
このように政治家たちは、この今の社会に頭を抱えつつも平和への確実な一歩を進めたという事実をかみしめていた。

『未だおさまり切っていない動乱を乗り越えるためには、我々は手を取り合っていく事が重要となるでしょう』

どの組織も疲弊はしている。連合は実権を失い、オーブは国土を一部とはいえ再び焼かれ、ザフトは内輪揉めによって疲弊した。だが、だからこそ各々は手を取り合うという事が出来たのである。ありとあらゆる組織、国がお互いの為の会談を開き、手を握った。
その為の段取りを作った立役者はオーブのカガリ・ユラ・アスハだ。しかし、カガリはその後、オーブに対する自らの裏切りと責任放棄を行った事に対する贖罪として代表を辞任、各種財源負担、及びアスハ家の取り潰しを宣言した。

「カガリ、君は自分の行いに責任を感じているのだろう?でも国民は今、君を必要にしているんだ。辞任はともかく、まだ君には政治に関わってもらわないといけない。政治から逃げるのは何時でも出来るけど、責任を取る事は職務に在籍している間にしか出来ない事だ。
だから、アスハ家の取り潰しなんて馬鹿な真似は止めてくれ」

プラントにて終戦や今後の情勢の対応を行う為に、正式な調印を結びにオーブから来ていたユウナはカガリに対してそう言う。

「いや、これは私自身が行わなくてはならないけじめなんだ。だが、ユウナの言っていることもわかっている。辞任はするが、政治から完全に身を引くのはアスハ家が完全に取り潰される時期まで、この様子だとあと半年から九ヶ月位の間だ。その間に私が出来ることは全部やり終えるつもりさ」

そうやって目測を立てているカガリの考えは外れておらず、寧ろ引継ぎなどの仕事を含めても期間的には丁度いいぐらいのものだった。しかも渡された資料を見る限り、合理的かつ、建設的なものであり、納得しない理由はない。ユウナとしてもそこまで理路整然と並びたてられた話に同意せざる得なかった。

「オーブ代表のユウナ・ロマ・セイラン様とカガリ・ユラ・アスハ様ですね。こちらへどうぞ」

そうやって話しながら道を歩き、ようやく目的地である会談場所までたどり着いた。そして案内された部屋にいたのはザフトの軍服(・・・・・・)を着ていたアスランだった。

「よく来てくれた、カガリ。一応ここはまだ非公式の場だからな。オーブとは俺自身もザフトも無関係でいるわけにはいかない。表裏含めて色々と話し合いたい……あと、個人的にも」

アスラン・ザラ――――終戦に伴い、ザフトの臨時主導者の一人として軍方面の政治に関わる事になった。ザラとしての立場や戦時中の活躍、そして大戦の英雄という様々な意味で注目を集める彼は扱うには難しい駒だという判断をされ、それならばいっそ表舞台に立たせるべきだという判断となったのだ。
デュランダル派の人材が居なくなったことによる人材不足の煽りも受けていることは事実だが、アスラン自身もこれまで自分が逃げてきただけだと思い、臨時ではあるものの引き受けることにした。

「相変わらずだな、アスラン」

口調や言い回しに懐かしさすら感じるカガリ。事実、彼らが面と向かって相対したのはジブラルタル海峡の時以来だ。
あの時は実質敵同士だったと言っても良い。だが、今は立場は違えど敵などという剣呑な仲ではない。それがカガリにとってもアスランにとっても嬉しく思える事だった。

「えーっと、僕も一応いるっていう事は忘れてほしくないんだけど?」

「すまなかった、セイラン殿。忘れていたわけじゃないんだが、どういったタイミングで話しかければいいか迷ってな」

普通なら無視されたことに対して苛立ちが募るものだが、憎らしくない言い方と会談の交渉相手の一人というのもあってユウナもそこまで追及はしない。
その後、しばらくは会談の内容について互いの情報を交換したり、今後の情勢について話し合ったが、それも終わり個人的な話し合いになる。

「それじゃあ、エターナルに乗っていたラクス達は……」

「ああ、デュランダル前議長の証言や証拠も含めて、残念ながらエターナルは沈没したとみて間違いないだろう」

暗い報告として上げられたラクス・クラインを含む、エターナル乗員の死――――予想はしていたものの、いざ現実的な報告を聞くともの悲しさが漂う。

「……そっちの方はどうなんだ?アークエンジェルは正式にオーブ軍に再加入されることになったんだろう?」

話題を変えようとアスランはアークエンジェルクルーについて聞く。一時期はテロリストとして扱われていた彼らだが、先の大戦時のタリアの判断によって彼らの存在はザフトによって認められるものとなり、紆余曲折はあったものの、アークエンジェルはオーブによりを戻したのである。

「ああ、グラディス艦長のおかげらしいな。こちらとしても感謝していると伝えたいんだが……」

「無理、だろうな……。カガリも知っているとは思うが、あの人は今――――軍事裁判を受けているから」

タリア・グラディスは歴戦の艦長であり、実力を兼ね備えている人物ではあるが、色々とやっかみを受けている人物でもあった。デュランダル前議長に取り入ってミネルバの艦長やフェイスにしてもらったなどと影で噂されたこともある。
そんな彼女が、アークエンジェルに対して全責任を負うという発言をし、それを皮切りに実はあの戦闘時にギルバート・デュランダルとは繋がっていたのではないかという謂れのないことを指摘され、軍事裁判を受ける結果となったのだ。

「出来る限りの弁護をしてはいるし、死刑になるなんてことはまずないだろうが、軍役を止める事にはなるかもしれない」

かもしれないとは言うが、実際にはほぼ確実に止めることになるだろう。無罪になる可能性は低く、仮に無罪になったとしても軍事裁判まで受けて軍役を続けるかは甚だ疑問である。

「デュランダル前議長もつい先日だが、死刑宣告が言い渡された」

これまでの様々な戦犯行為とも言えるデュランダル前議長の行いは、敗戦の将となってしまった時点で見過ごせるものではなく、公式的には総ての責任を取る為、死刑が言い渡されていた。彼自身も今更抵抗してまで生きながらえる気はないのか、物静かな様子で判決を受け入れたらしい。

「……そうか。あの人も、あの人なりに平和への道を実現しようとしていたんだろうな……」

「でなければ、デスティニープランなんてものを実現しようなんて思わないはずさ。それで……キラはどうなったんだ?」

一番聞きたかったが、聞きづらい事でもあったキラについてアスランは尋ねる。

「キラはパイロットをもう止めるつもりらしい。怪我を理由になら軍役も辞め易い、だってさ。ラクスの事も、諦めたわけじゃないし忘れられるわけじゃないけど心の整理はついたとは言っていたよ」

「そう、か」

キラは最後のナイチンゲールの自爆によって機体のダメージと共に、怪我を負ってもいた。無論、今の科学技術なら治せない程の怪我ではないが、結局は戦い続けることでしか答えを得られなかった自分の事を見つめ直すため、そしてニュータイプという議長の言っていたことを調べるために、オーブ軍に再加入後、退役したそうだ。

「ニュータイプ……普通に考えるなら、ジョージ・グレンの考えていた人の今ではない未来……なんだろうが、分からないな。何故、デュランダルはニュータイプが人の革新を、人類の平和を呼び込むと言っていたんだろう?」

「私は、人がそんなあるかもわからないものにまで頼らないと本当の平和を得られないなんて思いたくないな……」

「だったら、俺達が平和を成し遂げればいいんだ。難しいことかもしれないし、俺達の世代だけでは出来ないことかもしれない。けど、俺達にだって一歩ずつ前へ進む事は出来るさ」

その言葉を最後に彼らは部屋から退出する。ユウナは個人的な話し合いに関わるべきではないと話に入ってこなかったが、退出する直前にアスランに話しかけた。

「正直に言えば、僕は君の事が嫌いだ。カガリが僕に目を向けてくれなかったのは君が原因の一端だと思う位にはね」

面と向かって嫌いだと言われ、アスランは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするが、ユウナはそのまま言葉を続ける。

「でも、君が彼女を幸せにしてくれるっていうのなら文句はあっても邪魔をする気はない。後々にオーブに来る気があるのなら、アレックスの籍は残しておくよ……プラントで式を挙げる気ならせめて僕も呼んでくれ」

あっけらかんとそう言い放ち、アスランは驚愕のあまり固まってしまった。ユウナは初めて本気で一矢報いてやったという気持ちと共に、自分の恋が先程の言葉で今、終わったんだなという感傷を改めて感じていた。







「シン、行きましょう」

「遅いぞ、ルナ。このままじゃ遅刻じゃないか」

プラントでアスランやカガリ等が忙しく働いているのと同様に、シン達も忙しなく働いていた。ミネルバの艦長変更と共にミネルバクルーはそれぞれ別の部隊配属となったのだが、シンとルナマリアは同じ部隊に配属され、危険指定された残存勢力の制圧を任されていた。
特にデュランダル前議長支持者やブルーコスモス、ロゴスなどの過激派は手段を問わないものも多く、それらの鎮圧のために駆り出されていたのだ。尤も、行き過ぎた鎮圧、制圧行為は再び争いの火種を生むことになりかねない為、厳しい裁定によって定められているのだが。

「メイリンが言ってたわ。アスランが臨時から正式な役職として近々昇進するんじゃないかーって。あの子、本当どこからそんな情報仕入れてくるんだか?」

「アスランが?でも本人は臨時も嫌々受けてたんじゃなかったっけ?」

車で移動しながら雑談をするシンとルナマリア。目的地のラー・カイラムまで向けてシンが車を走らせる。シン達はマーレと同じ配属先になったことを喜ぶ一方で、ミネルバにもう戻れないんだという事をしみじみと自覚させらた。

「どこも人材不足なんでしょ?ザフトだって人員が大幅に減ったから軍縮せざる得ないってあのラー・カイラムの艦長……えーと、なんて言ったっけ?」

「グラスコー、いや、グラスゴーだったかな?実質あの人よりもマーレが指揮しちゃってるからな」

艦長として悪くはないのだが、いかんせんMS隊の指揮を執っているのはマーレであり、シンやルナマリアは配属されたばかりで接点が無く、かなり希薄な存在として見られている。
そんな雑談をしている間に彼らは目的地であったラー・カイラムにまでたどり着いた。

「遅いぞお前ら」

「「すいません」」

マーレが到着地点で既に待っており、時間に遅れたことを素直に謝る二人。

「全く、これが終わったら休みとってオーブに行くんだろ?だったらそれまではしっかり働けよ。休みがもらえなくなるぞ」

やれやれと溜息をつきながらマーレはそういう。

「シンはオーブでステラって娘に会いに行くんだっけ?」

若干冷たい目線でシンを睨みながらそう言うルナマリア。彼女は色々とあって今現在オーブに居る。シンはそれに対して頷きつつも、オーブに行こうと考えていたもう一つの理由も話す。

「それもあるけど、他にもいろいろ。これまで色々あったことや、クラウが居なくなった事とかを家族やあの人に報告すべきかなって思って……」

憂鬱気にシンはそう呟く。死んでいなくなったとはいえ、シン自身も気持ちに多少の整理がついた。今でもあのオーブの慰霊碑は偽善の類だと思っている。だけど、いつまでも自分からオーブや家族に目を背けるのは間違いじゃないのかと思うようになった。
だから家族に自分は元気だという事や、クラウが行方不明になったことなどを伝えるためにも、もう一度オーブに行こうと考えていた。それにオーブにはシンを助けてくれたトダカもいる。彼には色々とお世話になったし、お礼をしたいともシンは思っていた。

「ごめん……」

「別に気にすんなよ!ルナが悪いってわけじゃないんだしさ!」

そんな風に真剣に考えていたシンに対してルナマリアは自分が下衆の勘繰りをしていたことに自己嫌悪に陥り謝る。シンはそのことに気付かず、場の雰囲気を悪くしたことに対してルナマリアの責任じゃないといった。

(ホント、こいつ等いつになったら付き合うのやら……)

そんな事をマーレは考えながら二人の会話を聞きつつも、働くのであった。







そんな風にアスラン達やシン達がプラントで話し合っていた頃、オーブ本島であるヤラファス島の都市から少し離れた場所にある喫茶店。そこに一人の客が訪れていた。
珈琲喫茶店~虎~――――マスターがこだわりの豆を用意している珈琲がメインの喫茶店だ。趣味の類の店だといった感じがあり、つい先日開店したばかりだがまずまずの売り上げを出していた。

「いらっしゃい」

「あー『本日のおすすめブレンド』というやつをお願いします。あと適当につまめる物を」

その客はサングラスをかけており、どちらかというと線の細い男で学者や研究者といった感じに見える。

「旅行か何かかね?」

持っているローラーバッグなどの荷物からして旅行にでも来たように見えるなりだ。とはいってもオーブはほんの数ヶ月前に戦争の被害にあったばかり。おそらくはマスドライバー施設や港の船など、中継点として訪れたのだろうとマスターは考える。

「まあ、そんな所かな?故郷巡りといった感じです」

「故郷巡り?妙な言い回しだね。帰郷とは違うのかい?」

「帰ったことのない故郷もあるからね。重なっている場所や行けない場所もあるから十か所ぐらいかな?」

変な回答を受けて訝しげな表情を見せながらも珈琲とサンドイッチを差し出す。

「何だ、故郷に観光地でもあるのか?」

「いやいや、言葉通り行く場所、巡る場所全部故郷ですよ。ここオーブの次は日本に行く予定です」

だからまず最初に移動が楽なオーブに来ました、などといいながら彼は珈琲を口にする。マスターはますます首を傾げる。故郷など、普通は一ヶ所だ。生まれ故郷と育った故郷では違う、という事はあるかもしれないし、第二の故郷というのもあるだろうが、流石にそんなのが十か所もあるというのは現実的ではないだろう。

「酸っぱいな……」

珈琲を飲んだ彼はそんな言葉を口にする。それを耳聡く聞きつけたマスターは自分の入れた珈琲の感想を聞くことにした。

「お、分かるかい?今日のブレンドは浅めに炒ってあるからな。味の方はどうかね?」

「悪くはないけど、好みじゃないな。個人的には目が覚める位深煎りの方が良いや」

そう言いつつ、サンドイッチを食べ終えた彼は会計を支払、すぐに出ていく。どうやら、長々と入り浸る気はない様だ。待ち合わせだとか、時間潰しではなく、単純にこの店に興味でもあったのか、珈琲でも飲みたかったのかもしれない。

「変な客だったとでも思っておくべきかね?」

「よう、また来てやったぞ。ステラにケーキでも食べさしてやってくれ」

「ネオは何にするの?」

少しして、新たに来た客に対応しているうちに先程来た客のことを考えるのは止めにした。







「まさかとは思ったけど、本当に虎だったとはね……砂漠から宇宙に来て、今度は南国にでも改名する気なのか?」

先程のサングラスをかけた客だった彼はそんな事を言いながらオーブの慰霊碑にまでやってきていた。彼は誰もいないと思っていたのだが予想が外れ、そこにはキラ・ヤマトが居た。

「貴方は?」

互いに初対面の彼らは特に話すこともなくすれ違うのかと思ったが、キラの方から声を掛けられる。

「墓参りみたいなものだよ。家族やそれに近い人がここにはいるからな……」

「……その声?」

花束を置く男性。キラは聞いた声に心当たりがあり、尋ねようとするのだが、その前に彼が先に動いた。

「俺達は出会った事のない初対面の相手だ。そういう事にしておいた方が良いんだよ。フリーダムのパイロット」

「やっぱり……でも、僕はもうMSのパイロットじゃありませんよ」

予想と違い、そんな返答を返されるとは思っていなかったのか彼は驚いた表情をする。

「そうだとしても、だよ。今日ここで出会ったこと自体が偶々なんだ。もうすぐ飛行機の時間だし、今は話し合う気はないよ」

「今は、ってことならいつかはまた会うって事ですよね?だったら、名前を教えてください」

そう言われて面倒だなと思いつつも、彼はサングラスを外しながら答えた。

「クラウ・ハーケン。アスランに会ったならよろしく伝えておいてくれ。キラ・ヤマト君」

すれ違い、各々は自分たちの運命を歩む。その運命は時にぶつかり、時に手を取り合い、別れや出会いを導くものだ。それは人の意志を超えて巡りあうものであり、彼らが出会うのもまた運命だったのだろう。

後の世界がどうなるのか?多くが待ち受けている苦難、不幸はあれど、人は明日への運命を信じ、平和を願って進み続ける。
人類が戦争を本当に止めることが出来るのかは分からない。真の平和を掴みとれるかも分からない。だが、クラウ・ハーケンの人生はこれからも続く。なら、人類がそれを成し遂げることを信じて見続けるのが、自分の役割ではないか。そう思い、彼は歩み続けるのだった。
 
 

 
後書き
祝、完結!詳しい事は次話の後書きで。 
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