八条学園怪異譚
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第五十九話 時計塔の話その九
「気をつけてるわ」
「いつもですか」
「そうされてるんですか」
「そう、そうしてるわ」
こう言うのだった。
「やっぱりいつもね」
「ううん、何か先輩も結構真面目ですね」
「しっかりされてるんですね」
「最初お会いした時はセクハラとお酒だけの人かと思ってましたけど」
「違うんですね」
「あのね、その二つが最初にくるのね」
茉莉也は二人の今の言葉には苦笑いで返した。
「ちょっと酷くない?」
「だって、ねえ」
「最初からそうだったしね」
二人は茉莉也の抗議に顔を見合わせて話す。
「うわばみさんレベルでお酒ぐいぐいだったし」
「しかもしょっちゅう胸とかお尻とか脚触ってきて」
「隙あらば抱き寄せてくるじゃないですか」
「今もそうでしたし」
「お酒は女を磨く水でね」
まさに酒飲み、しかもそれから離れられない人間の言葉だ。
「セクハラじゃなくてスキンシップよ」
「そっちだっていうんですね」
「セクハラじゃないんですか」
「そうよ、女同士じゃない」
だからいいというのだ。
「親密ってことじゃない、それだけ」
「確かに女の子同士ならセクハラって断定されないですけれど」
「その場合は」
とある女性声優は同業者に常にそうしているが笑い話になるだけで問題視されていない、その人とは別の女性声優は親友である同業者に公の場で頬に口付けをしたfがこちらも何も問題にはなってはいない。
だからだ、女同士ならというのだ、茉莉也は力説する。
「そういうことでいいじゃない」
「いや、いいって」
「強引ですね」
「強引でいいじゃない」
本当に引かない茉莉也だった。
「こういうことは」
「そこそう仰るのが先輩ですね」
「力技でまとめられますね」
「力と技よ」
今度は何処かの特撮ヒーローの様な言葉が出た。
「人間はね」
「技もですか」
「それも必要ですか」
「何か先輩って技の方はあまり」
「特にない様な」
「何言ってるのよ、相手の攻めをかわしたりね」
やはり特撮ヒーローの様なことを言う。
「そうして蝶の様に舞い蜂の様に刺す」
「そういうこともされてます?」
「先輩っていつも」
「してるわよ」
自分ではこう言う、茉莉也は二人に完全に自分のペースで話していく。これは今も、結局泉に辿り着こうとする今も変わらない。
「技もね」
「力と一緒にですか」
「そうされてますか」
「そうよ、まあ私の技についてもね」
強引な力だけでなくというのだ。
「一緒にいればわかるから」
「そうですか」
「そういうこともですか」
「そうよ、まあ技は色々だからね」
「千の技とかですか」
「そんな感じですか」
「そう、千のね」
まさにそれだけの数があるというのだ。
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