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八条学園怪異譚

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第五十九話 時計塔の話その八

「逆に言えば悪魔でもいい悪魔ならね」
「入られることがですね」
「出来るんですね」
「そうよ、悪魔がいつも邪悪とは限らないじゃない」
 このことも知られてきていることであろうか、天使や悪魔、そして善悪の規定は所詮はその所属する世界の対立により言われているだけだ。悪魔が天界を制すれば天使になりそして善になる、それだけのことである。
「悪魔なんて言ってもね」
「天使と変わらないですね、ゲームでも」
「普通に仲間に出来ますよね」
「天使はいつも味方とは限らないし悪魔はいつも敵とは限らないわよ」
「結局は属性の問題ですね」
「善と言われているか悪と言われているかで」
「善悪は主観よ」
 それに過ぎない、茉莉也は言い切った。
「例えば悪人、怪人、モンスターと戦うから正義とは限らないでしょ」
「最近の仮面ライダーとかね」
「そうよね」
 二人は日本のあまりにも有名な特撮のこともここで思い出して言った。
「明らかに善人じゃない仮面ライダーもいるし」
「怪人の立場でも仮面ライダーになるしね」
「けれどモンスターとかアンデットとかと戦うし」
「怪人の立場でも凄くいい人だったりね」
「人間でもとんでもない人がいて」
「様々よね」
「そういうことよ、天使も悪魔もそれぞれなのよ」
 どの種族かで善悪は決まらないというのだ。
「それぞの性格、考え方、行動で決まるのよ」
「とんでもない天使もいれば優しい悪魔もいる」
「そういうことですね」
「ぶっちゃけ失楽園、ミルトンね」
 不倫小説の方ではない。
「他にも日本のRPGとかだとそうでしょ」
「本当にそうですね、天使も悪魔も仲間に出来て」
「戦うことも出来ますから」
「かえって一方に依ると仲間に出来るモンスターが減ったりするのよね」
 日本のゲームではそうした状況になることも多い。
「日本人はむしろ一方的に自分達を正義だ何だのって言う人を信用しないでしょ」
「相当に胡散臭いですよね、そんなこと言う人」
「怪しく思います」
「そうでしょ、私もそうだから」
 茉莉也にしてもそうだというのだ。
「相手を邪悪だと決め付けてね」
「そういうのを独善って言いますよね」
「おかしな人ですよね」
「その通りよ」 
 まさにその通りだとだ、茉莉也は二人に返した。
「最近ネットでもいるけれど」
「そうした人はちょっと」
「あまり賛成出来ないですね」
「自分を正義と決めれば楽なのよ」
 そこで何も悪くなくなり相手をやっつければいいだけになる、最早知的労働をする必要は一切なくなるのである。
「勉強しなくても努力しなくてもよくなるから」
「正義は常に正しい」
「だからですね」
「そうよ、本を読むのもものを見るのもそこから出ないから」
 正義と決めた自分のテリトリーからだ。
「そうなったら自分とは違う存在も認めなくなるし」
「独善になるんですね」
「そういうことですね」
 二人も茉莉也の言葉に頷きながら応える。
「つまりは」
「だから気をつけないといけないですね」
「そう、そうなったら戻るのは大変だしね」
 そこから真人間に戻ることはだ、偏見というものは悪病でありそれを捨て去ることはかなり難しいことなのだ。
 だからだ、茉莉也も言うのだ。
「私にしても偏見があるかも知れないし」
「気をつけておられるんですね、先輩も」
「そうなんですね」
「ネットで差別発言書きまくる様な人間にはね」
 ならない様にしているというのだ。 
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