こんなチートでもありですかい?そうですかい。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第35話。使徒の殺意。
side アルクェイド・ブリュンスタッド
「アル大丈夫かー」
私を覗き込む愛する人の顔。見ているだけで、穏やかな気持ち、嬉しいという感情が湧く。
「いつまで寝てんじゃ。もう昼やで。」
ぶっきらほうながら優しい声。
「・・・・うにゅ」
「フッ、カワええ声だしよって。ほれ、おきれや」
私を起こす力強い腕。暖かい体。優しさと意志の強さが同居する眼。全てが好き。
「晋吾~」
「あー?どうしたん?」
私は両腕で彼を抱きしめ愛情を伝えようとする。でも、足りない。こんなんじゃ、私の気持ちを伝えることができない。
「んっ、晋吾・・・・」
「む?・・はっはーん。スケベな姫さんですなー」
「むー。茶化さないでよ」
「拗ねなさんな。別に嫌じゃないで?お前さんだからな。なぁ?アルクェイド」
「・・・・バカ」
愛に溺れるって、こういうことを言うのかな?っと思った。
「・・うっ」
日差しが差し込む。・・・・眩しい
「・・・・眠ってた?」
あれは夢?・・・・寝ているとき見るのは瞼の裏だと思ってた。
「私は・・どうなったの?」
今はベットの上。あれ?確か私は・・・・晋吾の・・・・・・血を・・・・・・
「うっっ」
嗚咽感が込み上げる。愛する人の血を飲む。その行為に。
「晋吾・・・・」
フラフラと立ち上がる。愛しい人を探すために。
ドアを開ける。そこには――――――
「あー、やっぱり料理とか出来たほうがええんかのー?」
ズルズルとカップ麺をすする晋吾がいた
「・・・・」
「おー、アル。大丈夫かー?」
いつも通りの晋吾を見て、アルクェイドはいつものように、花のような笑顔を見せるのであった。
SIDE OUT
昨夜の話になるが、アルが倒れたあと姉ちゃんに連絡を入れてアルの家に泊まることにした。
流石に今回はほっぽって帰ることはできんからな。
ちなみにorzなカッコでブツブツ言ってるシエルはほっぽることにした。なんか触れちゃいけない感じがしたのよね
んでアルを背負ってマンションまで付いたのはいいが、鍵、どないしょ。
暗証番号を入れる必要がなかったのは幸いだった。
失敬と思いながらアルのスカートのポケットを確認するも、ポケットすらない事実に驚愕。
コイツ鍵どこに持ってんだ?と思いながら、何となくドアノブを回したら開いた。マジか。鍵ぐらい閉めろ
アルをベットに寝かせて一息、俺も朝まで寝ることにした。ソファで寝るの嫌だったからご一緒させてもらった。
んで、昼飯を買って来て食ってたら、アルが起きてきて今に至る。
「アルさんや、アルさんや」
「なぁに?晋吾?」
「近すぎだと思うのですよ」
カップ麺食い終わったあと、後ろから抱きしめられています。顔が零距離なのだが
「・・イヤ?」
「好きです。」
素直だな俺。
顔と顔をスリスリしながらハートマークを飛び散らかせている様子のアルに、若干疲弊した様子の晋吾。
無理もない。3時間ほど、ずっとこのままなのだから。
・・・・俺、顔の皮膚剥けてんじゃね?
side 遠野志貴
夜が明け、朝を迎える。いつもと変わりのない朝だ。
「おはようございます。志貴さま」
「おはよう、翡翠」
いつも通りの朝。・・・・昨日の出来事が嘘のよう。しかし、頬の痛みが現実を教えてくれる。
「え?秋葉はもう学校に?」
「はい。早々と行かれましたよ?」
琥珀さんに秋葉のことを聞いたらもう学校に行ったと言われた。・・いきなり刃物を突きつけられたら、誰でも避けるか。
「・・・・志貴さん」
「なんだい?琥珀さん?」
「昨日の少年は誰ですか?」
突然、琥珀さんが聞いてくる。
「晋吾のことかい?・・・・友達だよ。少し変わってるけどね」
「そうですか・・」
「どうしたんだ?琥珀さん。」
「いえいえ~。特に理由はないですよー?ただ、志貴さんと仲が良さそうだったので気になっただけです。」
そんなものか。とくに気にも止めないでそう思った。
しばらくして学校にいく時間になる。・・晋吾も昨日のような非日常のあとでも学校に行ってるんだ。俺もいかないとな。
志貴を送ったあと、玄関で一人、琥珀がつぶやく。
「今回は・・無理そうですね」
今日は土曜日、午前で授業は終わる。中間試験も近いこともあり、黒板の前に立つ教師が試験範囲を教え、周りから批判の声が飛ぶ。
そんな中、志貴は上の空。思考の渦のなかに会った。
写し出さらるのは、現実味の無い、頭の中で勝手に再生されるぼやけた映画。でも・・恐らく・・・・
次に写し出されるのは『ロア』。そして映像に出てくる少年。――ロア―――――シキ―――――遠野シキ―――――
「おー!遠野くんじゃありませんかー!もはやサボリ大王と出世したようだが、元気にやってるかね?」
「・・・・それが四限目からくる奴の挨拶か?有彦」
友人・・乾有彦の声に反応し、渦から抜ける。
「元気に・・やってんだろうけどね」
「へぇ、今日はまた真夏の昼行灯みたいな達観ぶりだな。仙人でもなるのか?」
「仙人・・・・か」
人から外れたい。・・・・のは本当だろう。一人の少年を思い出す。
『ヒト』のままでは、人を救えない。しかし、『人』でなければ、人を救えない。
「・・何か今日は遠野らしくねぇな。」
「・・・・何が?」
「相変わらず疲れてボーッとしてるし、学校もサボリ気味。しかし、どうしてもやりたいことが出来たって顔だ。珍しいことに」
・・・・少し驚く。
「そうか?」
「おう。何年も遠野ウォッチングしてきた俺が言うんだ。間違えない。」
「・・・・気持ち悪いこというな。」
「ガキの頃のぶっ壊れた遠野にしては随分と熱くなったんじゃねぇの。」
「そうか?」
「ああそうともさ。今日は半ドンだからな。残りの授業が終わったら、何をしてるのかしらんが、まぁ頑張りたまえ」
そう言ってフラフラと去っていく有彦。
何を・・してるか・・・・か。何をしてるんだろうな、俺は。何をしたいんだろうな、俺は。
晋吾なら・・なんて言うかな?
・・そんなこと決まってるか。
自分で・・・・考えろ。
「志貴さま。」
「なんだい翡翠。」
「秋葉さまより今日は屋敷にいるようにとのことです。」
「・・そっか」
生返事をしながらいそいそと着替える。翡翠には悪いことするな。
「・・・・志貴さまは今日もお出かけになるのでしょか?」
「ごめん翡翠。・・数日戻らないも知れない。・・・・秋葉にもごめんって、いやこういうことは、自分で言わなきゃダメだよね」
翡翠はじっとこっちを見ている。
「みんなに心配かけてるって分かっているけどさ、どうしても友達・・いや、言い訳はやめよう。俺がしたいことがあるんだ」
「・・はい。お気を付けて行ってらっしゃいませ」
深々とおじぎをして送り出してくれる翡翠。
「そうだ翡翠。前にさ、いつでもこの家に居ていいって言ってくれたことあったよね。なんていうかさ・・・・ありがとう」
「志貴さま・・・・」
「行ってきます」
街を歩く。それこそ一日中気がふれたように歩き回った。
また夜が明ける。予感がする。こうすることで『救える』と・・・・
日が暮れる。すこし休憩しよう。つかれた体が諦めて帰れと訴えてくる。お前では無理だと。
それを一蹴して立ち上がる。また歩く。歩く。夜の闇が迫り、街灯が街を照らす。
するとふと、何かを感じた。その方に顔を向ける。
「・・・・・学校?」
校舎内に入る。廊下を歩く。すると、前から人の気配がする。
「・・・・」
「ようやく会えた。」
晋吾から授かった『眼』をつける。そして、やりたかったことを告げる。
「・・・・君を救いに来たんだ」
SIDE OUT
「アルさんや。もう落ち着いたかい?」
「ちゅーしてくれなきゃダメー」
「さっきから何度もしとるやんか。」
超元気やな姫さん。
さて、アルももう大丈夫そうだし、そろそろロア狩りに行きますか。
「てことで服着させて」
「えー。ブーブー」
「一日中しとったろうが」
しかし、姫さんからただの色ボケ美人になってしまったんだけど、どうしたらいいんだろうか?
辺りが真っ暗になった時刻にようやく外に出れた晋吾はとりあえずシエルに会いにいこうと思った。
一応、待っててやったというより出れなかっただけだが、ロアの件がどこまで進んだか聞きたいしな。
ロアはまだ生きているらしい。家を出たときにロアの結界が起動したのを感じた。
さてシエルはどこにいるだろうか?居場所を例の感覚で確認すると移動中らしい。どれ、追ってみるか。
かなり高速で移動している様子。なんだろう?急ぎのようでもあるのか?おっ止まった。
ん~シッキーん家のほうだな。・・・・まさかシッキーなんかあったのか?
とりあえず、行ってみるか。
「大丈夫か?シッキー?」
「・・・・なんとかね。全然力が入らないけど。」
シッキーの家を訪ねたら、琥珀さん(彼女のことは覚えていた)が応答に出てくれた。
最初は俺を家に上げることを渋っていたが、シッキー妹の秋葉さまの鶴の一声で入れてくれた。
・・正直、秋葉ちゃんが俺を見る眼的に、信頼して入れてくれたんじゃなくて、強引に入られることを嫌がったから入れてくれたって感じです。
事実、入れてくれなかったら勝手に侵入しようとしてたから何も言えないが。
聞いた話では腕を切断されて胸を突かれたらしい。よく生きてたなシッキー。
・・・・おお、思い出した。なんか妹様の能力で助かったんだっけか?
「・・俺ではアイツを救えなかった」
「シッキー?」
「アイツは・・バケモノになる前に殺してくれと言っていた。・・どうして・・・・どうしてアイツなんだ。家族に・・本当の家族みたいになれたらって・・・・」
志貴は涙を流す。さーっと血が引くような感覚になる。怒りのあまり血の気が引く。
「・・・・」
晋吾は無言で立ち上がる。既にケースから相棒は取り出している。
「行かれるのですね」
「・・シエル。俺の友人をありがとう。礼を言わせてくれ」
「勿体無きお言葉です。・・それに、私個人として遠野君を死なせたくなかっただけですから」
「ふっ、そうか」
扉を開けて出口に向かう。玄関では、秋葉と琥珀が待っていた。
「確か、御使い様ですよね?」
「衛宮晋吾や。・・それ以上でもそれ以下でもなか」
「・・・・」
秋葉は綺麗な姿勢で頭を下げる。
「四季を・・兄を・・・・遠野四季をお願いします」
「・・俺はロアを消しに行くだけや。」
「・・・・ありがとうございます」
秋葉は頭を下げたままで、どのような顔をしているかわからなかったが
安堵したような、泣いているような声で礼を言った。
夜の学校を歩く。満月の光が廊下を強く照らし、影を伸ばす。その数2つ
「ようこそアポストロス。我が城へ・・・・」
「ミハイル・ロア・バルダムヨォン」
目線が合う。殺意が湧く。なるほど、アポストロスとしてだけじゃない。
俺個人の殺意か。・・なんとも心地悪いものだ
「語ることなんてないやろ?」
「ふむ、私としては少し話をしたいと思うが・・」
一歩で間合いを詰める。
「話させてはくれないだろ?」
頭を狙った横薙ぎの一閃はしゃがみこんで避けられる。
間髪いれずに蹴りを入れる。ロアはその蹴りを利用しながら後方に跳ぶ
ロアは手をかざし晋吾に雷を見舞う。晋吾はロアに向かって走りながら、バットを振うことでかき消す。
再び晋吾の間合いに入る。得意の右寄りの下段の構えからの振りあげ、そこから返しの振り下ろし。
ロアは初段の振りあげは避けることができたが、二段目の振り下ろしにより胸元が裂ける。
「ぐふぅ・・」
そこから晋吾は右後ろ回し蹴りを顔面に蹴り込む。
キシィッ。という骨が軋む音とともにロアの体が吹っ飛ぶ。
追い打ちをかけるように晋吾は後ろ回し蹴りで開いた体をそのまま独楽のように回転させ
「チェイヤァアアアアアアア!!」
横一閃
廊下の壁に、潰した蟲のように身と血をブチまげる。
さらに上段に構え、短く息を吐く、気合とともに
「チェストォオオオオオオオ!!」
縦一閃
壁を破り、教室に一線を引くように衝撃が走る。
まさに文字通り粉々に砕けるロア。
「・・・・やり過ぎたかのぉ?」
あっさり過ぎる勝利に疑問を湧かせる晋吾。確かにロアは戦闘者でなく、学者だから仕方があるまい。だからこそ。
「準備するのだよ」
ロアの声。
晋吾が反応するがもう遅い。右腕に何かが通る。
「グッ!」
ドサリ。何かが落ちる音とともに晋吾はすぐさま離れる。
代わりに、ロアの体、砕けた校舎がみるみると復元されていく。
「あは、あは、アハハハアハハハハ!なんて眼だ!?直死の魔眼!!使徒ですら切れるとは!!私は神の眼を手に入れてしまった!」
左手で持っていたバットを口でくわえ、左手で右腕を抑え、ドクドクと流れる血の止血を試みる。
「さすがにダメかと思ったが、残念だったな使徒よ。この城は、全て『式』で固定したある。それに今宵は満月だ。この地ごと消し去るなら別だが、私をいくら攻撃しても無駄だ!」
・・・・血の出は弱まったが完全の止血は無理だな。腹で手を拭い、口にくわえていたバットを手にする。
「直死・・だと?」
「そうだ!私と志貴はつながった共融した。この魔眼はそのためにある。フフッ、使徒といえど、その死の線を切られては生きていけないと言うことか。」
ニヤニヤとした表情でロアがこちらを見る。・・確か、違ったはずだ。
何かは忘れたが、ロアの眼は『直死の魔眼』ではなかったはずだ。
「死から帰って来たものは死を理解することが出来る。その中でも志貴は特異な存在だ。もし奴に転生出来たらそれはどれほどの能力になっていたか興味深くもある」
「・・・・一つ聞きたいことがある」
ニヤニヤと笑を浮かべた顔がさらに笑を深める。
「ほぅ。興味を持って貰えた。と言うことか、いいだろういいだろう。なんでも答えてしんぜよう。他でもない、使徒の望みだ」
「お前は、何故死徒になった?」
「死徒なった理由か。なるほど、至極簡単なことだ。『永遠』だよ。まぁ、その身に宿した魔力により、元から永遠なるモノである使徒に言っても分からんか。その価値が」
「分からん。分からんな。・・・・それは人の可能性を奪ってまですることなのか?」
「可能性?・・・・なるほど、人の可能性が私の『永遠』を可能にしたか。ハッハッハ!顔に似合わず、中々詩的なモノを云う。」
「・・・・救えん奴め。とことん救えんな。何故自分本意でしか物事を考えられん」
「救い?・・フッ、そういえば、志貴の奴が私を救うなどと言っていたな。いや、私じゃなく四季か」
クックック。と短い失笑をする。
「それにだ。何故他人のことまで考えなければならない?人は『我』があってこそ世界がある。」
・・・・なんとなく。分かった気がする。なんで、こんなにこいつを殺したいのか。
「真理を求める者に自己以外必要がない。その中で、他者を使うことを思いついた私は、素晴らしいと思うのだが?」
アルや、シエルや、シキがこいつに苦しめられたから、こいつが人を無闇に殺す死徒だから、俺は力を使おうと思った。
しかし、なんだこいつは?ただの外道ではないか。他者を貶める。他者を利用する。そんなことではない、他者を潰す行為。
更に、目的の『永遠』はゴールがない。つまりただ他者を潰し続けるだけ。何も生まない。・・いや、悲しみだけを生む存在。
気持ちが悪い。ドロドロとした、煉獄の炎のように、深く、黒い感情が渦巻く。
他人をここまで嫌悪したのは初めてだ。当たり前か、俺は今までここまでの外道に会ったことがない。
フッ、過去、利権が絡んだ様々な問題で、利己的で嫌な奴もたっぷり見てきたつもりだったが、なんだかんだ言って平和な日本人だったというわけか
「なるほど、よくわかった。貴様がどういう存在なのか、そして、俺のやるべきことが」
今まで、死徒を殺るときに、『殺す感覚』はなかった。使徒としての使命感が全面出ていて、受動的・作業的であったといえよう。
俺は今、初めて、害意と敵意を持って、死徒を殺す。
恐怖が溢れる。殺すという行為に。それを押しつぶすような殺意が湧く。その殺意に突き動かされる。殺すと言う行為を
そうか、これがモノを殺すっていうことか。怖いな、とても怖いことなんだな、志貴。
血の気が引く。冷たい。なんて冷たい感情なんだろう。アルを想う感情とは正反対の感情。
しかし、それに負けないほどの激情。他者に対する激しい想い。
煉獄の意志と共に告げられるは、断罪の執行宣告。
「テトラクテュス・グラマトン!!」
銀色の光が走る。右腕を光が覆う。光が晴れる。右手は完全に治された。
「なっ!?なんだと?術式も詠唱も無しに!?ただ魔力で覆うだけで!?なんだその魔力はぁああああ!!」
ロアの顔には先程の余裕はなくなる。
ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。ありえない。
あれほどの魔力を身に宿し、平然といられるなんてありえない。なぜなら分かるはずだ。感じているはずだ。
自分が『高み』であると、自分が『頂点』であると、自分が誰よりも優れていると―――――
人間なんぞ、死徒なんぞ、真祖なんぞ、虫ケラ以下であると――――
銀の光の先に、使徒の、晋吾の眼が見える。黒い眼が、真っ直ぐこちらを見ている。―――煉獄の殺意を持って―――
「ひぃいいっ!」
恐怖と共に手をかざし雷を放つ。倒すための攻撃ではない。所詮、負け犬の威嚇と同じであった。
「ッ!」
晋吾も前方に手をかざす。銀色の靄が漂う。雷はそれに触れるだけで消え去る。靄が晴れる。再び眼が見える。
「お前を・・・・殺す」
声が響く。ロアの顔が恐怖に染まる。ニゲロ。ニゲロ。ニゲロ。ニゲロ。ニゲロ。ニゲロ。ニゲロ。ニゲロ。
ロアは逃げ出す。逃げられないと思いながら。アレと対峙することから逃げ出した。
晋吾は銀色の魔力を練り上げる。
両腕に携えるは、腕の外側に沿うように具現され、まさにトンファーといったモノ。さらに腕の内側から剣を持つように具現する。
「逃がさん!押し通る!!」
神速の踏み込み。晋吾はロアを薙ぎ払いそのまま押し通る。
「――――――――――――――――――!」
下半身をかき消され、ロアは上半身のみで声にならない叫びを上げ、校舎の天井を貫きならが天に飛ぶ
「シィ!!」
晋吾は内側の刃を両腕から飛ばし、ロアの両腕をもぎ取る。
更に外側のトンファーごと魔力で覆い、大剣を具現する。
「オォォォォォォォオ!」
3mほどの長さまで伸ばし、晋吾は身に宿した魔力で宙を駆ける。銀色の道。その光に反射した虹色の残像。貫く刃。更に晋吾は魔力を練りあげる。
「人に憑く亡霊は!暗黒に帰れぇっ!!」
「おぉおおおおおお!?」
ロアは飲み込まれる。銀光の奔流に。一筋の光の柱が空にそびえ立つ。
流れてくる記憶の節々。・・走馬燈というヤツか。永遠を求めて試行錯誤の毎日。『永遠』という命題以外は要らなかった。
死徒とは異なる不老不死を実現しようとしていたが、ある日限界に辿りつき仕方なく吸血種となる決意をする。
どうせなるならもっとも力の在る者から、その思いから真祖の姫君アルクェイド・ブリュンスタッドを騙し、血を吸わせた。
その力は凄まじく。しばらく力を振るい続けた。殺した、沢山殺した。気の赴くままに。楽しかった。
ふと、目的を忘れていたことに気がついた。とある場所に定住し、『永遠とは観測者がいてこそ成り立つもの』という考えから他者に転生することを思いついた。
世紀の発見だった。自らの永遠を他人の身で観測する。そして、人間に転生することによる永遠を実現した。
ほどなくしてアルトルージュ・ブリュンスタッドが討伐にきた。戯れに教会によって封印されていた空席の二十七祖の派閥を束ねてみたが、それが気に入らないらしい。
彼女を見たとき真祖の姫の面影をみた。ひどく気に入らなかった。返り討ちにしてやった。
数年後、教会と共同戦線を張った姫君によって討ち滅ぼされる。相変わらずの美しさであった。
一回目の転生。成功に歓喜した。祝に村の人間を全て殺した。ほどなくして姫君が現れる。
二回目の転生。また姫君に殺されたようだ。今回は二〇年待った。そして姫君が現れる。
三回目の転生。人間を戯れに殺しながら、姫君がくることを待っていることに気づいた。憎んだ。私から純粋な魔術師としての心を奪った姫君を。そして姫君が現れる。
四回目の転生。人間を殺す。姫君が現れる
五回目の転生。人間を殺す。姫君が現れる
六回目の転生。人間を殺す。姫君が現れる
七回目の転生。人間を殺す。姫君が現れる
八回目の転生。人間を殺す。姫君が現れる
九回目・・・・十回目・・・・十一・・十二・・十三・・・・十四・・十五・・十六・・十七・・ああ、これはいい体だった。そして十八
そして気づく。客観的な観測ででしか気づかない、致命的なことを。
私は・・私の目的は・・・・
光が晴れる。天には何も残らず。ただ使徒のみが、自らが創った神柱の残光を見上げていた。
「・・・・」
『殺害』のあとの心境はなんとも心地悪いものか。どうやら殺人快楽者ではなかったようなので安心すればいいのか?
ひとまずロアの事件はこれで解決しただろう。晴れやかな気分になれないのは残念だが、しかし
「晋吾!」
「晋吾~!」
「・・ふぅ、さすが使徒と言ったとこですか」
志貴、アルクェイド、シエル。彼らの顔を見ると、悪いコトをした気にならんな。
後書き
最後の晋吾はまんまユニコーンガンダムだったりする。BD格>サブ→格闘派生。暗黒帰しコンですねわかります。ロアの眼は確か『生かしている所を見る』でしたので、死は見えなくても生は見えるだろうと思い、晋吾の右腕を取らせました。まぁ、無駄だったが。月姫のssが少ないこともあり、やることを決意してんですが、楽しんで貰えたでしょうかね?まぁ、アルクェイドをヒロインにするなんて始めは全く考えてなかったけどな!
ページ上へ戻る