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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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八章
  軍議

「あら、お帰・・・・異人さん?」

詩乃の先触れでもしてくれたのか?式台で俺達を出迎えてくれた結菜の第一声はエーリカに対してだった。

「お初にお目に掛かります。我が名はルイス・エーリカ・フロイス。日の本の名を明智十兵衛と申す者。堺にて久遠様と出会い、旅路を共にさせて頂いておりました。故あって、これからは織田家中でお世話になる事と相成りました。末永くお引き立て下さいませ」

「はあ~・・・・日の本言葉がお上手なんですね。けどアケチって。もしかしてあの明智家?」

「はい。母の名は槇と申します」

「槇って・・・・あ!槇おばさんっ!?」

「母をご存じなのですか?」

「槇おばさんのお姉様・・・・明智光安殿と、私の母である斎藤利政は親友だっただもの。だけど槇おばさんは神隠しにあったって聞いていたんだけど」

「神隠し、ですか?」

「うん。私が生まれる前の話だけど、その話になると光安殿がひどく落ち込んでいたのを覚えてるの。子供の頃、妹が神隠しにあったって」

「そう・・・・ですか。母にそんな事は・・・・」

「槇おばさんの娘なら、私とは遠い親戚って事になるわね。よろしく、十兵衛、エーリカ・・・・えっと、どっちで呼べば良いのかしら?」

「エーリカとお呼びください。あの・・・・」

「私の名前は帰蝶。通称は結菜だから、結菜って呼んでくれると嬉しいわ、エーリカ」

「では結菜様。これからよろしくお願い致します」

「こちらこそ!」

「・・・・話は終わったか?」

「終わったわよ。・・・・二人ともお帰りなさいませ」

「ふう、やっと帰れたぜ。ただいまー」

「うむ。積もる話もあるが、すぐに軍議に出る。夕食の用意を頼むぞ」

「はいはい。・・・・久遠の食べたい物は分かるから良いとして、一真は何か食べたい物はある?久しぶりの我が家なんだし、奮発して作ってあげる」

「ふむそう来たか。だが、俺の好きな物はどれも洋食、ああここでいえば南蛮の食事か。だから、結菜の作る料理だったら何でもいい」

「分かったわ。じゃあ、軍議が終わる頃に作っておくから楽しみにしておきなさい」

そして俺達は、結菜の手を借りて身体を軽く拭いて旅塵を落としてから城に向かった。

「詩乃。家中はどういった状況だ?」

「壬月様以下、さすが織田家の臣。事態を把握した後はすぐに出陣の態勢を整えております」

「上洛の準備か?」

「はい。・・・・違うのですか?」

「上洛した後、すぐに越前侵攻という流れだが、それはまた後々皆と一緒に説明する。ご苦労であった、詩乃」

「はっ。・・・・なるほど。越前があまり良い事態では無かったという事ですか」

「・・・・うむ」

「・・・・これは厳しい戦いになりそうですね」

「だが、あれこれ考えても意味はない。それに越前が鬼の楽園であるという証拠はあるさ。あとは軍議の席にて皆の知恵を借りようか」

「そうだな。・・・・行くぞ」

上段の間に入ると、そこには久しぶりに会うメンツが揃っていた。やっほー、と末座で手を振っている和奏や雛に答えながら、俺は久遠の横に座る。小谷城で映した映像は、印刷してあるからいつでも出せる。それに映像だけでも何百枚あったから選んで数十枚に留めておいた。

「(ここは相変わらずだが慣れるもんだな)」

皆よりも少しだけ底上げされている上段の間は、君主が座る玉座のようなもの。俺は神界でも一番上で座っていたからな、それに現代では国連軍大佐か世界によっては少将の時だったか。まあ、立場が上だから、慣れるのも時間はかからなかった。

「では軍議を始める」

落ち着いている俺をよそに、久遠が厳かな口調で宣言する。広間に詰めた武士達が一斉に頭を下げた。俺は平然としているけど。

「皆も竹中より聞いておるだろう。昨今、我が領国を荒らす鬼の正体が判明した」

「異国の者が、この日の本を侵略するために使う先兵である・・・・と聞きましたが、さて・・・・」

「事態は把握しているのですが、やはりしっくり来ないというか・・・・腑に落ちない部分は否めません。一体、どういう事なのでしょう?」

「その説明は、我ではなく、こやつがする。・・・・金柑、報せい」

「はっ。・・・・皆様、お初にお目に掛かります。我が名はルイス・エーリカ・フロイス。日の本よりも遥か西、異国よりやって参った、天守教の司祭です」

「まぁ。異国の人にしては日の本の言葉が、大変お上手なのですね」

「然り。我が母は日の本は美濃・明智庄の出身。この身には日の本の血が流れておりまする。母の名は槇。明智家前当主、明智光安殿の妹。そして我が日の本の名は明智十兵衛と申す。皆様、よしなに」

「ほお。あの知将・明智光安の筋か。なかなか面白い」

「ありがとうございます。・・・・皆様、お引き回しの程、何とぞよろしくお願い致します」

ゆっくりと頭を下げるエーリカの姿に、一部の武士達がざわめく。

「おおおおおおおおおお、な、何だアイツ何だアイツ!すげー丁寧な人じゃんか!」

「あれが礼法って奴でしょー。凄いねー。雛、初めてだよ、あんなに完璧な礼法の人ー」

「すごーい!かっこいー!犬子もちょっとは礼法の勉強とかした方が良いのかなー?」

「犬子にゃ無理だろ?」

「にゃにをー!和奏に言われたくないわん」

「そこの奴らやかましいぞ!俺のハリセン、久々に喰らいたい奴は前に出な。それとも不意打ちで後ろから叩いてやるよ!」

と言って特に三若には、宣言通り後ろから叩いてやった。久々のいい音が評定の間に鳴った。

「全く・・・・一真様にお手を煩わせるとは。田夫野人のガキ共は・・・・」

田夫野人・・・・・礼儀のなってない者の事。ここでは「おいおい、礼儀ぐらいはちゃんと分かっとけよ、全くもう・・・・」という意味。

「ま、まあまあ皆若いですから。しかも一真様もさすがに強さを軽めにしたのですから」

「・・・・??」

「気にするな。続けろ」

「はっ、では・・・・・・」

久遠に促されたエーリカが、気を取り直したように姿勢を正し、言葉を続ける。 
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