戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~
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八章
帰路
「詩乃が言っていた事が現実になったな」
「何と言っていた?」
「鬼を鬼として見るのではなく、ザビエルが指揮する軍と仮定すれば、見えてくるものがあるとな。ザビエルが鬼の楽園を作りたいなら、国を落とさなければならない。国を落とすためには軍勢を形成しなければならない。だから弱いところをついて、鬼を集めておく拠点をまず作るだろうと。最近、鬼の出現頻度が増している観音寺が本命かと思ったのだが・・・・」
「裏を掻かれたという事か・・・・」
「裏を掻かれて、見事に先手も打たれたがな。でだ、先手を打たれた今の盤面から逆転するためには、盤面をひっくり返して相手の目論見をご破算にするしか手はない。ザビエルが、この国を制圧するために、天元に石を置いた。その石を弾かなければ・・・・」
「気付かぬ内に、深く静かに盤面を制圧されていく事になるでしょう」
「そうだな。気付いたら廻りは鬼の国だらけになる可能性だってある。次の一手はどうする?久遠」
越前が、既に鬼の手によって落とされたのは事実。ザビエルが、目的あって着々と侵攻している。ウイルスの増殖みたいになり、それを対抗するワクチンには、どう手を打つかで状況変化するだろうな。
「・・・・変わらん」
「まだ・・・・まだ考えはお変わりになりませんか」
「持論に拘っている訳ではない。しかし我には変わらないのが、最善の手だと思えるのだ」
「兵を率いて一葉と合流し、三好・松永衆に圧力を掛けられている足利将軍を保護。その後一葉と協力し、周囲の強豪を仲間にしていく事か。越前は浅井家に何とか踏ん張ってもらうしかない。状況が整え次第反撃に出る。こちらも全力持って、勝つ戦にする。こういった事では、俺も久遠の考えに賛同だ」
「・・・・一真」
「まあ俺達だけで解決も出来るが、それだと武士の情けに過ぎない。武士が鬼になったのなら出来るだけ、鬼を成敗するのは人で成敗した方がいいと思う。ただ策を出来るだけ早くやらないと今度はこちらが被害を出る事になる」
「分かりました。お二人の仰る事は理解できます。・・・・我が儘を申しまして、失礼いたしました」
「動く時にはエーリカの力が必要だ。すまぬが今は堪えてくれ」
「・・・・御意」
「眞琴、市。我らは本国に戻った後、上洛準備に取り掛かる。しばしの間、越前の抑えを頼むぞ」
「もちろんです!この城を。この近江を異形の者になど渡してなるものですか!」
「市も手伝うよ、まこっちゃん!近江はもう、市の故郷でもあるんだから!」
「うむ。頼み入る。・・・・一真!」
「おうよ。では帰るとしようか、・・・・早めに帰るから馬ではなくあれで行く!」
あれとは何だ?と問われたが、今は出発準備に取り掛かる。トレミーから、バイクを1台と運転手1人を手配した。そして久遠達が乗る馬を空間に入れた後にバイクと隊員を空間から呼ぶ。そして小谷で報告を受けた俺達は、バイクに乗り素早く発進した。ちなみに隊員は女性隊員だから心配はないし、ヘルメットには通信機を内蔵しているから話せる。
「これが『ばいく』と言うものか。なかなか乗り心地はいいが、速くないか?」
「早馬より速いが、安全運転しているつもりだから、しっかりと捕まっていてくれよ。エーリカもだ」
「分かっています。それにしても速いですね、もう山を何個か越えましたけど」
そりゃそうだろうな、それに小谷で聞いた事で最初は越前ごと爆撃機で落とした方がいいと思ったけど。異形の鬼には効くだろうが、その後の事を考えたから辞めた。建物ごと壊してしまうし、既に関ケ原を越えて、詩乃の領地である不破を越えてからは平坦な風景が一瞬にして幾つものの山々が見えた。
「さてと、最近は時が動くのは速い事だ。エーリカと出会い、公方と出会い、眞琴と市にも会えた。そして、数々の鬼と遭遇したが駆逐した。本格的にザビエルが動いてるかもしれないが、俺達がやれる事をやるだけだと思う」
「さすがにお気楽とは言えませんが、正確に分析してから今出来る事ですか。私にはお気楽に見えましたが違ったようですね」
「隊長はね、頭の中で次の次の手を考えているよ。まるでその先が分かっているかのようにね」
「おいおい。それは言いすぎだぞ。でもまあシェリーの言う通りでもあるからもしれない。俺はこちらの世界で言うなら、武将でもあるし軍師でもある。だからかもしれん、正確に分析出来て正確に狙撃が出来るという事だな。今焦ったってしょうがないんだから、エーリカも肩の力を落とせばいい。俺にはそう見えたが」
「確かにそうでした。焦ったら次の一手も浮かばなくなるでしたか」
「で久遠、このままだともうすぐ着くが、戻ってからどう動く?」
「すぐに上洛の準備をするが、準備には時間をかけるつもりでいる」
「なるほどね。上洛後、返す刀で越前侵攻だろう。時間がないならそれが一番だが・・・・」
「公方様を取り囲んでいる、三好・松永衆がどう出るか・・・・ですね」
「徹底抗戦されて被害が拡大されると返す刀も折れる。そこまでは決めてないとして松永弾正小弼を仲間に引き入れるとかな」
「松永を仲間にだと?・・・・毒蛇を布団の中で飼うようなものだぞ」
「だけど、時間をかけてやるよりかはマシだと思うけどね。危険はあると思うが、あれはひよ達か」
俺達が減速して停まると、メットを上にあげてしばらく待つとひよところと詩乃が走ってきた。
「殿ぉ!お頭ぁ!お帰りなさーーーーい!」
「あーん!お頭、お会いしたかったですよぉ!ご無事で何よりですぅ~!」
「はぁ、はぁ、はぁ、ひよ、ころ、はぁ、はぁ、ま、待ってください」
「おーう!出迎えご苦労!」
遠くから駆け寄って来るひよところ。その後ろからは、バテバテになりながらも一生懸命に走っている詩乃の姿があった。
「さてと行くか、久遠!」
「うむ!」
ひよ達は、先に戻っていろと告げた後に爆音鳴らしながら進んで行った。そして旅の疲れを癒そうと久遠の屋敷に向かった。いきなりの爆音なので、民は驚いていた。屋敷前で降りてから、空間から馬を出してその代りにシェリーとバイク2台をトレミーに戻した。
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