闘牛士
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第二章
しかしだ、それでもなのだ。
「しかしこれだけ素晴らしい仕事はない」
「そうよね」
「スペインの男は必ず一度は闘牛士になりたいと思う」
このことはまさにスペインにいれば誰でもだ。
「服は華やかでしかも人から注目されてた」
「収入も凄いわね」
「この屋敷が立つ位にな」
今二人がいる見事な屋敷もだというのだ、華麗な庭まである。
「そして何よりだ」
「楽しいわね」
「歓声を浴びて巨大な牛と命のやり取りをする」
それがだというのだ。
「スリルがある、そして牛を倒した時の感触がだ」
「素晴らしいのね」
「勝つ、そのことを心ゆくまで味わえる」
「だからよね」
「まだ続けたい」
これが彼の本音だった、共に生きている妻に対してだからこそ言える偽らざる本音である。
「是非な」
「けれどなのね」
「身体の動きが」
それが、というのだ。
「落ちてきた、これではな」
「闘牛士の世界は一瞬ね」
「そうだ、一瞬の反応の遅れがだ」
そのまま、というのだ。
「死につながる」
「だからなのね」
「引退を考えている」
まだ続けたい、だがそれでもだというのである。
「死んでは元も子もないからな」
「難しいところね」
「続けるにはどうすればいい」
かなり率直にだ、ベルゴンツィは妻に尋ねた。
「一体」
「私は闘牛士ではないわ」
このことからだ、モンセラートは夫に答えた。
「だから詳しいことはわからないけれど」
「それでも言ってくれるか」
「そうしていいのね」
「だからこそ聞いている」
こう妻に言うのだった、彼も。
「続けるにはどうすべきか」
「そうね、衰えを感じているのならね」
それならとだ、モンセラートは自分が思うことを夫に話した。
「その衰えを補うものを身に着ければいいわね」
「身体の動きをか」
「ええ、衰えているのならこれまで以上にトレーニングをするとか」
その衰えを防ぐまでのだというのだ。
「そしてそれでも足らないのならね」
「その他のこともか」
「身に着けてみればどうかしら」
夫のその目を見ながらアドバイスをするのだった。
「そうしたらどうかしら」
「続けるのならか」
「私は本当に闘牛のことはわからないけれど」
それでもだとだ、モンセラードは夫に求められるまま答える。
「そうしたらどうかしら」
「わかった、それじゃあな」
「やってみるのね」
「少なくともトレーニングはな」
それは、というのだ。普段から行っているそれを。
「これまで以上にする、やり方も考えてみる」
「変えていってなのね」
「ああ、そしてだ」
さらにだというのだ。
「他にも必要ならな」
「そのこともね」
「身に着ける、それが何かも考え探していく」
そうするというのだ。
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