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万華鏡

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第五十五話 演奏その四

「普通に優勝出来るから」
「そうそう、ピッチャーは相当なことがない限り安定してるから」
 抜群の安定感だ、先発から抑えまで。
「いけるのよね」
「阪神のピッチャーが駄目だった時代ってあまり記憶にないのよね」
 今度は彩夏も言う。
「どんなに弱い頃でもね」
「不思議なことにね」
 理論家の里香も阪神の伝統についてはこう見ていた。
「抑えてくれるのよね」
「弱い時でも三対二とか二対一とかね」
 琴乃は得点のことも話す。
「そんなのばかりよね、阪神が負けるのって」
「本当にあと一点なんだよな」
 美優も阪神の負け方について悔しげに述べる。
「阪神の負けってな」
「昔の弱い時はね」
 巨人の斎藤や広島の大野が出て来た時だ、その時はそれこそだ。
「一点取れたらよくてね」
「そんな負けばかりでな」
 大魔神こと横浜の佐々木が出るとそれで終わりだった、ヤクルトだと古田のリードに手も足も出なかった。
「打たないことについては定評だったよな」
「今以上にね」
「それ考えたら最近は遥かにましてな」
「しかも今年は優勝よ」
 そうなるまでになれたというのだ。
「今で充分かしら」
「いや、ここで満足したら駄目だろ」
「一度優勝した位で」
「連覇しないとさ」
 駄目だというのだ。
「二連覇、三連覇ってな」
「黄金時代ね」
「ああ、そうなるんだよ」
 美優は笑顔でこう言うのだった。
「巨人が九連覇なら阪神は十連覇だよ」
「夢みたいね」
「いや、夢じゃないよ」
 美優は目を輝かせて琴乃にも他の三人にも言う。
「阪神もそうなる時が来たんだよ」
「あの弱かった阪神が」
「十連覇とか」
「駄目虎じゃないんだよ、もうな」
 幾ら何でも優勝したチームをそうは呼ばない、駄目だとかだ。
「猛虎なんだよ、文字通りな」
「そしてその猛虎の歌をね」
「今からね」
「歌おうな」
 皆の前でだというのだ。
「これからな」
「ええ、それじゃあね」
「今から」 
 こう話してだった、そのうえで。
 文化祭の委員が呼びに来るのを待った、それはすぐだった。
 腕章を付けた委員が来た、そのうえで五人に言って来た。
「皆用意出来た?」
「ええ、出来てるわ」
「もうね」
 五人はこう委員に答える、委員が一年なのでタメ口だ。
「それじゃあね」
「今からね」
「ええ、ステージに出て」
 そこにだというのだ。
「演奏してもらうから」
「気合入れてね」
「そのうえで」
「頼むわよ」
 委員も笑顔で告げる、そうしてだった。
 五人を案内する、そしてなのだった。
 五人はステージにあがると観客達にまずは挨拶をする、そしてそのうえで琴乃が結構いる彼等に言った。 
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