Element Magic Trinity
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デッドGP
「ジェラール・・・あの野郎・・・何でこんな所にいやがるんだ」
攫われたウェンディとハッピー、ルーの救出に成功したナツは気を失っているウェンディを右腕に担ぎ、ハッピーとシャルルを左腕に掴んで樹海の中を歩いていた。
「またエルザを生贄にしようとしてるのかな・・・」
「え?」
「どういう事だ?」
「前にジェラールはエルザを生贄にしようとしたんだよ!他にもエーテリオンを落とさせたり・・・最悪の悪党だよ」
憎々しげな表情で目を細めるルーの言葉にヴィーテルシアは「何て奴だ」と呟き、アランは俯き視線を落とした。
《ナツ君達、聞こえるかい?》
『!』
すると、突然頭の中に声が響いてきた。
「その声は・・・」
「えっと・・・青い天馬の」
《僕だ・・・青い天馬のヒビキだ。よかった・・・誰も『繋がらない』から焦ってたんだ》
その声の主はルーシィやココロと共に毒に苦しむエルザを守っているヒビキだった。
ナツは視線を上げ、小さく辺りを見回す。
「どこだ!?」
《静かに!敵の中に恐ろしく耳のいい奴がいる。僕達の会話は筒抜けている可能性もある。だから君達の頭に直接語りかけてるんだ》
「ヒビキ、安心しろ。3人の救出には成功した」
《よかった!さすがだよ。これからこの場所までの地図を君達の頭にアップロードする。急いで戻って来てくれ》
「何言って・・・」
「?」
地図をアップロードの意味が解らず首を傾げるナツとルー。
すると、その場にいた全員の頭の上に小さい長方形が浮かび、その中が素早く満たされた。
「わっ!何コレ!」
「情報?一気に頭の中に・・・」
「おおっ!?何だ何だ!?エルザの場所が解る!つーか元から知ってたみてーだ」
《急いで、皆》
頭に流れ込んできたエルザの居場所への地図。
それを頼りにナツ達は走り出した。
「どうやったの?」
一方、ルーシィとヒビキ、ココロの3人と毒に苦しむエルザ。
ルーシィはエルザからヒビキに視線を映し、先ほどの情報の伝え方を尋ねる。
「僕の魔法、古文書は情報圧縮の魔法なんだ。情報を圧縮する事で人から人へと口より早く情報を伝えられる」
「聞いた事もない魔法・・・」
「私もです、珍しい魔法ですね」
「情報を魔力でデータ化するっていう発想自体が最近のものだからね」
「でもよかった!ウェンディもルーも無事で」
ルーシィは目を細め、エルザに目を戻す。
「もう少しだからね、エルザ。頑張って!ナツ達が戻ってくるまではあたしが守るから。絶対!」
氷の壁の反対側。
ナツ達が走って行った方とは違う、その氷の壁の造形者と戦闘慣れした少女がいる側。
六魔将軍の1人、レーサーとグレイとティアは対峙していた。
「テメェは2回もこのオレを止めた・・・このままじゃオレの名が廃る」
自分達の前に立つレーサーを睨みつける。
「その気になればあんな小僧に追いつく事くれぇ造作もねぇが、テメェは殺さねぇと気がすまねぇ。序でにその女もだ」
『!』
が、気づけばレーサーは2人の背後に回っていた。
一瞬の出来事に反応が遅れる。
(いつの間に・・・!)
(瞬間移動系の魔法・・・?いや、違う。奴の使用魔法は・・・!?)
一瞬で回り込まれた事に目を見開いて驚愕しながらも、慌てて後ろを向く2人。
だが、そこにレーサーの姿はない。
「その後でも十分に追い付ける」
「させるかよ!」
「討伐対象は大人しく討伐されなさいな」
先ほどに近い立ち位置、グレイとティアの位置から見て前に当たる場所に立つレーサーに顔を向け、睨みつけ戦闘態勢を取る。
「デッドGP、開幕!」
すると、レーサーが右腕を掲げ、宣言すると同時に振り下ろした。
『!』
その瞬間、音が響く。
ブォォン・・・ブォォン・・・というエンジン音が樹海内に響き―――――
「な!」
「はぁ!?」
目の前から無人の魔導二輪が飛び出して来た。
その数は1台や2台ではない。何十台という数の魔導二輪が、だ。
「うわっ!がっ!」
「危ない・・・わねっ!どりゃあっ!うあっ!」
威勢のいいエンジン音を響かせながら2人を軽く轢いていく魔導二輪。
ティアは1台に蹴りを決めるが、背後から攻撃を喰らう。
「魔導二輪が大量に・・・!」
「デッドGPって魔導二輪を大量に呼ぶ魔法なのかしら!?」
そうこうしている間にも樹海の奥からは無数のライトが覗く。
エンジン音はどんどん大きくなり、数もそれに合わせて増えていく。
「地獄のモーターショー、踊れ!」
「がはっ!」
「きゃあっ!」
いつの間にか魔導二輪に乗っていたレーサーの蹴りがまずはグレイ、続けてティアに決められる。
瞬間的に背後に回っていたレーサーに目を向け、2人は顔を見合わせた。
「それ・・・乗れんのかよ」
「ふーん・・・便利なモノね」
言うが早いが、グレイは走行中の魔導二輪に乗り込む。
「!」
「SEプラグまで付いてやがる」
予想していなかった行動にレーサーは少し驚愕で表情を染める。
グレイは右手首に魔導二輪を運転する為のSEプラグを取りつけた。
「ティア!」
「もう乗り込んでるわよ!」
後ろに目を向けると、ティアは適当に掻っ攫った魔導二輪に乗り込み、既にSEプラグも装備済みの万全状態だった。
そこでふとグレイはある違和感に気づく。
「お前、帽子は?」
「レースに帽子は向かない、それくらい解るでしょ!」
凄いスピードで魔導二輪を走らせる事が予想されるだろう。
その状態で帽子を押さえているなんて出来ないし戦いにくい。
だからティアは帽子を外し、ワンピースのポケットに突っ込んでいた。
「なるほど、んじゃあ・・・行くぞオラァ!」
「解ってる!」
エンジン音を樹海に響かせ、結果として3台の魔導四輪が走る。
「面白い・・・オレとレースで勝負しようと?」
「ルールはねぇから覚悟しとけや」
「ま、ルールなんてあってもこの面子じゃ一瞬で消え失せそうよね」
どこか楽しそうなソプラノボイスが軽やかに舞い、ワース樹海のルール特になし、とりあえず魔法の使用も自由なレースが幕を開ける。
「アイスメイク、槍騎兵!」
最初に行動を起こしたのはグレイだ。
幾つもの氷の槍を一気にレーサーへと放つが、レーサーは2本の木の間を蛇のようにくねくねと運転する事で動きを読めなくし、避ける。
「ならっ・・・大海蝶乱!」
続けざまにティアが右手に魔法陣を展開させ、そこから水で構成された蝶を放つ。
その蝶をレーサーは大きく魔導二輪ごと逸らせる事で避けた。
そしてレーサーがお返しというように手をかざす。
「タイヤ!?うお!」
「危ないものを・・・転がすなーっ!」
転がってきた大量のタイヤをグレイは間一髪で避け、ティアは鋭く睨みをつけたタイヤ1つを思いっきり殴り付ける。
その瞬間タイヤの空気が抜けた(ちなみにそれを見た時、グレイの顔が若干引きつった)。
「!」
気づくと、レーサーはすぐ真横にいた。
左足でグレイに、右足でティアに妨害を入れ、笑みを浮かべる。
そしてそのまま3人は中が空洞となって横に倒れトンネルの様になった木の中へと入っていった。
「ぐあっ!」
「きゃあっ!」
レーサーの魔導二輪から大量の魔法弾が発射され、それによって2人は体勢を崩し一旦停止する。
「どうした、色男に色女」
その間にもレーサーは煙の立ち込める木のトンネルの中を進んでいく。
2人が止まっていたのは一瞬で、すぐさまエンジンをかけた。
(エルザの為に・・・負けられねぇんだよ!)
(こっちの目的はアンタ達の討伐・・・絶対逃がさない!)
結果としての2人の目的はどこか違えど、今は関係ない。
騒音を立て木のトンネルから飛び出すと・・・近くに見慣れた2人の姿が。
「「リオン!」」
「グレイ!?ティア!?」
「それに六魔将軍も!」
リオンとシェリーの蛇姫の鱗の2人だった。
「いい所にいたぜ!乗れ!」
「何だと!?」
「状況を察しなさいバカ!今説明してるほど私もコイツも暇じゃないの!」
「いいから乗れよ!」
突然乗れと言われ当然意味の解らないリオンだが、とりあえず戦闘中である事を理解する。
「何をやってるんだお前達は!」
「リオン様!」
リオンはグレイの運転する魔導二輪の後部に乗り、そのまま2台は並走するように走り出す。
ティアは元々誰かを乗せるつもりがない為、シェリーは置いていかれてしまった。
「ウェンディとルーは!?」
「安心しろ!ナツとアランが助けた!」
「今頃ヴィーテルシアがエルザの所に連れて行ってるでしょうね!」
魔導二輪の騒音に声を掻き消されないように叫ぶような声で3人は会話する。
「それより、アイツやってくんねーかな。運転しながらじゃ上手く魔法を使えねぇ」
「フン」
レーサーが小さく笑みを零す。
「ほう、そういう事ならよく見ておけ。オレが造形魔法の手本を見せてやろう」
「一言余計だ」
「ティア!タイミングを合わせろ!」
「何で私がアンタにそんな事言われないといけないのよ!・・・ま、やるけど」
はぁ、と溜息を1つ吐き、ティアは右手に青い魔法陣を展開させる。
そしてリオンも、『構え』を取る。
「大海・・・」
「アイスメイク・・・」
「!」
それを小さく後ろを振り返る形で見たグレイは目を見開いた。
『話にならん。造形魔法に両手を使うのも相変わらずだ』
ガルナ島でリオンはそう言った。
島で戦った際のリオンは片手で造形魔法を使っていた。
本来造形魔法は両手で使うものであり、片手では不完全でバランスも悪い。造形スピードが速くなるというメリットもあるにはあるが、ここぞという時に力が出せない等デメリットが目立つ。
が、今後ろにいるリオンは『両手』で構えを取っていた。
掌に拳を乗せる、グレイと同じ構えである。
「お前・・・両手で魔法を・・・」
驚いたように呟くグレイにリオンは少し沈黙し、薄く笑みを浮かべた。
「師匠の教えだろ」
その答えに、グレイもどこか嬉しそうな表情になる。
それを見たティアは小さく溜息をつき、右手を伸ばした。
「大鷲!」
「槍騎兵!」
「何!?」
そして、氷の鷲と水の槍が放たれる。
1度に数えきれないほどの数の鷲と槍は真っ直ぐにレーサーへと向かい、レーサーの魔導二輪を破壊した。
が、レーサー本人は攻撃が当たる直前に持ち前のスピードで飛び出しており、傷1つ負っていなかった。
「遊びは終わりだ」
その声が聞こえたと同時に、レーサーは目にも止まらないスピードでグレイとリオンが乗る魔導二輪を破壊し、続けざまにティアの乗る魔導二輪も破壊する。
「アイスメイク、大猿!」
「大槌兵!」
「大海切削!」
間一髪のところで避けた3人はそれぞれ反撃する。
まずはリオンが氷で巨大な猿を造ってその拳を振るわせ、続いてグレイが氷のハンマーを造って落下させる。
さらに全身を水へと変えたティアが足をドリルのように勢い良く回転させ、降ってきた。
が、3発ともレーサーのスピードには敵わず、当たらない。
「当たらねェ!」
「落ち着け!4時の方向だ!」
「言われなくても落ち着くわよ、バカ」
この状況でも誰かを毒づく事が出来るほどに落ち着いているのは落ち着きすぎな気もしなくもないが。
そんな間にもレーサーはそのスピードを使って空を駆けていく。
「集中すれば捉えられん相手ではない!」
「集中か・・・よし!」
「そういう事なら話は早いわ!」
すると、ばっばさばさ・・・という、明らかに集中とは違うような音が聞こえてきた。
そして―――――――
「行くぞリオン!ティア!」
「オレの合図で撃て!全力でな」
「アンタ達本気出しなさいよ!」
グレイとリオンは上半身の服を脱ぎ捨て、ティアは外したままだった帽子を被った。
(なぜ服を脱ぐ・・・!?そしてなぜ帽子を被る・・・!?)
(なぜ服をお脱ぎに・・・そしてなぜ帽子を・・・)
その3人の行動にレーサーと追いついてきたシェリーは内心で同じツッコみをする。
「今だ!正面50m先!」
「見切ったァ!」
「全力全開手加減無用!」
レーサーのスピードを見切った3人は、一斉に渾身の魔法を放つ!
「氷欠泉!」
「白竜!」
「大海薔薇冠!」
地面から大量の氷が噴き出し、ドラゴンが畝り、水の薔薇が咲き誇る。
しかし、3人の渾身の攻撃さえもレーサーは簡単に避けてしまう。
「な!」
「嘘でしょ!?」
「さらにスピードを上げた!」
先ほどまでより速くなったスピードにグレイとティア、シェリーは目を見開く。
リオンも目を見開き――――――
―――――――その目に、飛び立つ鳥が映った。
「こっちだ」
「がっ!」
「くっ!」
「うあっ!」
そして攻撃を避けると同時に背後に回っていたレーサーの攻撃を喰らい、3人はそのまま倒れ込む。
レーサーは地を駆け、足を止めた。
(強い・・・これが六魔将軍)
6人集った時も強かったが、1人だけでもこれほどの強さを発揮するとは・・・。
その強さにシェリーの体が小刻みに震えた。
「テメェ等の攻撃なんぞ一生かかっても当たらんよ。俺の速さには誰も追いつけん。さて・・・そろそろとどめをさして、あの2人を連れ戻しに行くか」
「くっ・・・」
余裕たっぷりの笑みを浮かべてレーサーは呟く。
1番最初と氷の壁、樹海のレースでのSEプラグと多くの魔力を消費してきたグレイは痛みを堪えるかのように顔を歪めながらレーサーを睨みつけた。
(何、コイツ・・・私が一撃も与えられない・・・魔法の正体を探ろうにも見えないから探れないし・・・)
ぎゅっと悔しそうに唇を噛みしめたティアが拳を握りしめる。
ここまで圧倒的にやられるなど、楽園の塔のジェラール戦以降ない。
あの時は相手が聖十クラスだったから元々勝つのは難しかったものの、こんな闇ギルドの人間に負けるような魔導士ではない事は自分が1番よく解っているつもりだ。
自惚れなどではなく、それだけ血の滲むような努力を彼女は積んできているのだから。
「耳を貸せ。グレイ、ティア」
「!?」
「は?」
すると、リオンが突然口を開いた。
「奴の弱点を見つけた」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
はい、インフルが去りましたー!わーい!
まだ咳は出るんですけども・・・頭痛無しの平熱、これで更新できる!
・・・ですが、続いてもう1つの問題がやってきた。
学年末テスト!
きゃー、ある意味インフルより怖いものが。
私ね・・・自慢じゃないけど、成績胸張って言えるほどよくないんですよ。
平均点取れればいい方かなー、みたいな。
ええはい、だったら更新せず勉強しろよ!ってなりますね。
ですが更新しますよ!だってテスト勉強はその後だって出来るんですからね!更新は2時間くらいで終わるし。
好きなんですよ!小説投稿が!だからこうほぼ毎日に・・・。
小学校の頃は100点が当たり前みたいな子だったのに・・・いやはや。
感想・批評、お待ちしてます。
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