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戦国異伝

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第百五十三話 雲霞の如くその二

「草木も眠るな」
「門徒達は昼も夜も攻めますが」
 城の者の一人がこう言ってきた。
「このことはご存知でしょうか」
「知っておる、それが奴等の妙なところじゃな」
「はい、それでなのです」
「我等も」
 ここまで押されたというのだ、多くの者を失いながら。
「一乗谷城も奪われましたし」
「してやられ続けました」
「しかし丑三つ刻ならばですか」
「夜襲もですか」
「今門徒達は攻めてきておるな」
 このこともだ、言う長政だった。
「まさに昼も夜も」
「はい、動いてきております」」
「その様に」
「では疲れが出てきておるわ」
 既にこのことも見抜いている長政だった、その目に見ているものは先の先なのだ。
「だからな」
「ここで、ですか」
「攻めますか」
「うむ、そうするぞ」
 あらためて言う長政だった、そうして。
 彼等はまずは門徒達が来るのを見た、金ヶ崎まで来るとそのまま攻めてきた。城の攻防は夕方からはじまった。
 日が暮れて夜になり真夜中になってもそれは続いた、しかしそれが続いて真夜中も深くなるとだった。
 敵の勢いが落ちてきた、それを見て。
 長政は確かな声になりそのえで皆に言うのだった。
「丑三つ刻になった、ではじゃ」
「はい、今からですな」
「夜討ちですな」
「白布は着けたな」
 このことをだ、長政はまず確認した。
 するとだ、紺の者達は長政に笑みを浮かべて答えた。
「はい、着けております」
「それはもう」
「ではすぐにですな」
「今から」
「城を出るぞ、そしてじゃ」
 そのうえでだというのだ。
「一旦近江の方に向かう」
「近江ですか」
「そちらにですか」
「そしてそこから攻める」
 近江の方角からだというのだ。
「出来るだけ大きな声を出してな」
「大きな声をですか」
「それを出してですか」
「音も鳴らせ、一万のものでなくじゃ」
 ではその数はというと。
「十万、いや十五万以上のものをじゃ」
「ではありったけの音をですか」
「派手に鳴らしますか」
「そうせよ、派手にやるのじゃ」
 その音を立てることをだというのだ。
「ではよいな」
「はい、それでは」
「攻めましょうぞ」
 こうして長政は手勢を率いて城を出た、さしもの門徒達も今は休んでいた。その時にだった。
 長政はまずは近江の方に回ってそこからだった、まずは兵達にこれでもかという大きな鬨の声をあげさせた、それと共に。
 音もだ、鉄砲や鳴りもので派手に鳴らしつつ。
 攻めに入った、そのうえで寝ようとしていた門徒達の多くを攻めたのだ。 
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