ソードアート・オンライン ~生きる少年~
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第一章 護れなかった少年
第二十四話 再会
さぁ、ここから始まる本当の物語。
一人で舞い続けていた少年の滑稽で悲しい物語。
光に上がっていった少年を再び闇が覆う時、その隣で舞うのは人か、壊れた人形か。
人の心は何とも複雑で何とも脆い。
隣で舞う者次第でこの少年の心は壊れるかも知れない。
それでも足掻く、足掻き護る少年の物語。
―☆―☆―☆―
シャドウを倒してから早一週間。
僕は最前線30層で、スローター系クエストを受け、5層下の25層に来ていた。
内容は稀に迷宮区に出てくるレアMob《キング・タイタン》を5体討伐せよ、というもの。
ちなみにこの《キング・タイタン》は稀にレアなインゴットを落とすらしい。
個人的にはこれが目的でもある。
まぁ、でも5体狩って出なかったら諦めるけど。
しばらくは、まだ強化だけでやっていけるしね。
ちなみに既に4体狩っている訳で。
チャンスはあと一回。
結構深く潜ってるけど、別にここらの敵が強敵って訳じゃないし、すぐに帰れるだろう。
そう思いながら歩いていると普通のMobがポップす――いや違う。
今、目の前には三体のMobがいる。
そのうち二体は特に特徴の無い平凡なMobとして25層内で少し有名な《タイタン》。
そしてもう一体は......。
周りの二体のタイタンよりも少し大きく、歪な形の王冠のような物を頭に乗っけている。
......うん《キング・タイタン》発見。
「さってと......狩りの時間だ!!」
そう言いながら柄を握って突っ込む。
勿論相手も既に気づいているわけで、タイタンがパンチしてきたりするわけだけども。
「遅いっ!」
右に一歩ステップして、居合スキル《閃》を放つ。
その剣閃はパンチしてきたタイタンの脇腹を抉り、そのHPゲージを一撃で削りきった。
そしてそれだけ確認して、次のタイタンに目を付ける。
「二っ体目ぇ!!」
「ウオオオォォォ......」
唸り声のようなそれと同時に非常に遅いパンチを繰り出してくる(実は結構速いのだが)。
それをステップでかわし、抜刀したまま踏み込んで胴に一太刀。
が、
「ウオオオォォォ......」
タイタンのHPゲージは黄色に入ったところで止まった。
(なるほど......やっぱスキル使わなきゃ一撃で倒せないかぁ......)
まぁ、そう思う間に真横に一閃、斜め切り上げ、と合計二太刀入れ、HPゲージを真っ白にさせているが。
「さってさて。メインディッシュ頂きまーす!!」
そう言いながら納刀してすぐに居合系突進スキルである《瞬》で一気に懐に飛び込んで一閃し、納刀。
キングタイタンのHPを確認するが、1/3程度しか減ってなかった。
「さっすがキング......すぐに終わっちゃ楽しくないもんな......!」
獰猛に笑いながら一歩も退かず、そのまま《閃》を相手の胴部分に当てる。
グッと減ってHPが赤に入ったが、そこから《キングタイタンの反撃が始まった。
つまり、足もとにいた僕を踏みつけて来たのである。
「しまっ......!」
居合系単発スキルである《煌》を打とうとしていたため、よけきれない。
咄嗟に後ろ重心にそらし、地面に平行になる。
その状態でソードスキルが発動し、蒼い剣閃と《キングタイタン》の脚の側面に当たった
まぁ、ぶつかった瞬間に相手の脚を横にずらすことには成功したものの、マトリックス状態の体が衝撃に耐えられるわけが無く、後ろに転んで頭を打って戦闘中にも関わらず悶絶してたのは誰にも教える気は無い。
まぁ悶絶中も連続で踏みつけ攻撃をしてくるのでゴロゴロ転がって避けまくっていたけど。
「くぅ〜......おのれよくも......!」
完璧に逆恨みである。
十秒くらいで立ち上がり、そしていつものように居合の構え。
そしてその刀に蒼い光が灯る。
そしてそのままスキルが発動、突進。
そしてその突進と合わせてジャストタイミングで《キングタイタン》がパンチを繰り出してくる。
瞬の場合、このパンチに当たり、ぼくは硬直でタイムラグが発生し、その間にキングタイタンが連撃を繰り出してきたらぼくは結構危ない状況に追い込まれてしまうだろう。
だけど......これは瞬じゃない。
ニヤッと笑いながら、そのパンチを......ステップで避けた。
基本、ソードスキル中は、決められた動きしかできない。
例外を除いて。
居合系突進スキル《躱》。
このスキルは突進中に限り、三回まで横移動しながら相手に向かって突進することが出来る。
横移動はどんなことでもいいので、こういう避け、なども横移動に入る。まぁ、要するにこのスキルは発動中でも3回までよけることが出来る、ということだ。
そういうわけで勢いに衰えはないまま、《キングタイタン》に突進して行く。
「セイッ!!」
そして脇腹を刀で薙ぎ払う。
これでHPは残り1/2を下回ったところか。
再納刀された刀に蒼いスキルエフェクトが付く。
居合系二連撃スキル《震断》
せつめいだと無いと言われていた数少ない居合系の二連撃スキルである。
このスキルの入手方法は居合スキルだけでなく、体術スキルも上げなければいけないので結構難しいが、その分強力である。
一撃目が踏み込み足の震脚による衝撃波攻撃、二撃目が居合である。
......本来震脚って、攻撃目的ではないんだけどな......。
ともかくこの二連撃で《キングタイタン》のHPが尽きた。
クエスト内容的にはこれでクリア。
そして僕の目的はーー!?
結論。ゲットできませんでした。
......うぅ......流石に5体でレアドロップはキツイか......。
ハァ......と溜息を付きながらウィンドウを消し、出口まで歩こうと決意した瞬間――
『キャァァァアアアアア!!』
『うわぁぁぁああああ!!』
『だ、誰か助けて!!』
悲鳴がダンジョンの中で響いた。
そして意識しないうちに足が全力でそっちに向かう。
数は三人以上......ってことはパーティーか何かか!?
そして恐らくパーティーのほぼ全員が恐慌状態に陥ってるな......。
そんな判断をしながら足の回転を速めていく。
......にしてもさっきの女性の声、どっかで聞いたような......
にしてもまだトラップ残ってたんだ......。
そして段々悲鳴とともにビー、ビーと言うアラーム音が聞こえる。
アラームトラップかよ!
これは急がないとまずい。未だにアラーム音が聞こえるってことは全員が全員混乱してる。
取り敢えず聞こえるかはわからないけど......
「アラームの鳴ってる宝箱を破壊しろぉっ!!!!」
全力で叫んでみた。
幸い結構走って近づいていたので聞こえたらしく、少しするとアラーム音が聞こえなくなった。
とはいえ油断は禁物だろう。
これ以上増えないといっても、既にモンスターの数は凄いことになっているはずだ。
死人が出る可能性は決して低くない。
と、少し先に左側に道がある所を発見。
恐らくあの先がトラップのあった小部屋だろう。
まだそこから喧噪が聞こえる。
直ぐにその道に入り、小部屋に入る。
そこには大量のタイタンで埋め尽くされそうな六人のプレイヤーの姿があった。
いや、本当はモンスターに隠れているだけでもう少しいるのかも知れない。
でも、そんなことを考えるのは後だ!!
「加勢します!!」
そう言って一気に居合系突進スキル《瞬》を発動して目の前のタイタンに突撃する。
抜刀する直前に思い切り体を捻り、威力をブーストしながら。
その甲斐あってか一撃でタイタンが沈む。
「助かる!!」
短く返答が来る。
じゃあ頑張りますかね。
「ハァッ!!」
更に標的を変え、《閃》を放つ。
そしてまたタイタンが落ちる。
―☆―☆―☆―
数分後......
「これで......最後ぉ!!」
目の前のタイタンに向かって《閃》を放つ。
そして最後のタイタンが塵になって消えた。
「ハァ......ハァ......君、助かったよ......ありがとう......」
リーダーらしき人が代表してかお礼を言う。
「いえいえ、当然のことをしたまでですよ」
笑いながら返すと、30前半くらいのおじさんが、
「おうおう、最近のちっちゃい子は礼儀正しいねぇ」
落ち着こう僕。きっと悪気があるわけじゃ無いんだよ。
とリーダーらしき人が口を開いた。
「おっと、そういえばまだ自己紹介してなかったな。俺はハク。一応ギルド《月読》のギルマスだ」
それにつられておじさんが、
「俺はブライだ。よろしくな」
破顔するブライさん。
「あ、僕の名前は――」
「「――蒼空?」」
名前を名乗ろうとした瞬間、誰かに先に言われる。
驚いてそっちを見ると......。
「やっぱり蒼空だ!!」
「ひっさしぶりだな、おい!!」
男女一人ずつがこちらを見ている。
う~んやっぱ見覚えが......って、あ!!
「まさか芽衣と圭介!?」
「おう! やっと思い出したか!!でも、ここだと俺ケイ、って名前だからそっちで呼んでくれ」
「ああ、ごめんね、ケイ」
確かにネトゲで本名出すのはマナー違反だよな......。
と、ハクさんが恐る恐る聞いてきた。
「えーっと三人はリア友かい?」
「ああ、そうですよハクさん。昔はよく遊んでました!!」
ケイの言葉にうんうんと頷く僕と芽衣。
いやぁ、懐かしいな......。
「にしても蒼空」
と、芽衣に話しかけられる。
「何?」
「蒼空って今までどこにいたの?私達は中層にずっといたんだけど......」
「ああ、ずっと最前線にいたよ?」
「「「「「「!?」」」」」」
「いや皆さんそこまで驚かなくても......」
とブライさんが......。
「待て待て、聞いたことがある。確か29層のボスが男女二人組に倒されたって。確か男の獲物は刀で最近出てきた《居合》っつうスキルを使ってたらしい......」
「あ、それ僕だ」
「「「「「「!?」」」」」」
「や、だからそこまで驚かなくても......」
「ちなみに蒼空はどうしてここまで降りてきたんだ?」
「ああ、クエストで、《キングタイタン》を五体討伐って言うのがあって、それで」
「なるほど......」
「じゃあソラさんにお願いがあるんだが......」
「へ? 僕に?」
僕にお願いって......何だろう......。
「少しの間でいい。私達の専属コーチをやって頂けないだろうか?」
専属コーチかぁ......。
「不躾な願いだということは分かっている。――」
「いいですよ~」
「――だがしかし、我々も攻略組になりたいんだ――ってえ?マジでいいの?」
「別にそれくらいならいいですよ?」
「じゃあこれからよろしくお願いします!」
「「「「「よろしく(お願いします)」」」」」
「ええーっと、こちらこそよろしくお願いします」
―☆―☆―☆―
僕はこの時、忘れてたんだと思う。
出会いや再会が有れば、その分別れがあるってことを......
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