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lineage もうひとつの物語

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オーレン戦役
  異変

 
前書き
年度末の多忙により更新が遅れました。
話の流れはキャラクターが勝手に作ってくれるのでいいのですが自分の文章力が間に合っていません。
時間を見つけて少しずつやっていくのでよろしくお願いします。 

 
象牙の搭へ大軍が到着した。
ギラン支部のガルダミス率いる部隊である。
その数凡そ500人。
装備している防具や武器は様々だが皆規律を守り並んでいる様は圧巻である。
その部隊長であるガルダミスは息子であるノイマンにこの場を任せ象牙の搭へ入りタラスの元へ向かった。

「タラス殿、アイスクイーン殿、お久しぶりです。まだこちらは無事なようですな」

「ガルダミス殿!お久しぶりですな。そのご様子だと今この地で起こっている事態をご存知だと思われるが・・・」

タラスはこの一大事の時に何用だと思った。
旧知の仲であるが権力にしがみつき目的のためなら手段を選ばないガルダミスをよくは思っていない。

「その通りです。救援に参りました。そのことでお話があるのですが」

ガルダミスは周囲を見渡し人払いをするようタラスに目で知らせる。
タラスは人払いを済ませガルダミスに席を薦め向かいにアイスクイーンと並んで腰を下ろした。

「人払い感謝します。今回殿下よりこちらの防衛につくよう命令を受けやってきた所存であります」

「それはありがたい。して、殿下とは?」

タラスはナイルの言葉が頭を過るがそうとは限らない。
ラウヘルのように混乱に乗じて国を乗っ取ろうとしている輩かもしれないのだ。

「デフィル王の嫡子であられるナタリシア様です。ご存知でしょう?」

ガルダミスの問いにタラスは大きく頷く。
そして嬉しさの余り笑顔がもれる。
アイスクイーンもタラスの様子を読み取ったのか優しげな笑顔を浮かべている。

「殿下からの救援とはこれ以上に嬉しいことはない。して、村にも部隊を?」

「ケントとシルバーナイトタウンの部隊が向かっておりますので駆逐も時間の問題でしょう。村が落ち着き殿下より撤退命令がでるまで我々は塔内にて待機させて頂きたいのですが許可を頂きたい」

「もちろん許可しますよ。感謝します。」

そういって頭を下げたタラスを尻目にガルダミスは立ち上がり部隊を動かすべく部屋を出ていった。

「これであなたが無理して出ていかなくてもよくなりましたな」

アイスクイーンは封印の手伝いで魔力を渡しているので万全の状態ではない。
そのため村を助けに行くと言って聞かないアイスクイーンをタラスは止めていたのだ。
冒険者達がいるから暫くは大丈夫だと。

「なかなかよさそうな姫じゃないか。国軍より早く動いてくれとはね。なぁ?タラスよ」

タラスは「立派になられたようだ」と答え

「国軍は動きませんよ」

とアイスクイーンに向き直る。

「だろうね」

とやや呆れた表情でタラスの視線を受け止めた。

「この事態をどう思われますか」

「膨大な魔力を感じたと言ったろう?人為的なものだと思うよ。誰かはわからないけどね。」

そういえばとアイスクイーンは考える。
デーモン出現の時と同じ魔力だったように思える。
この一連の事態は一人の手によるものなのか。
それとも偶然なのか。
各地で出現している伝説級のモンスター達にも関係あるのでは?
そしてアイスクイーンは違和感を感じる。

「デーモンの封印が危ない!何かが外から干渉しておる!」

そう言い残しアイスクイーンは飛び出して行きタラスも後を追いかけた。




村の野営病院。
ここはヒールの魔法では治せない怪我人が集まっていた。
一見便利に見えるヒールという魔法だが常に危険がつきまとう。
掠り傷や切り傷、火傷等という表面の怪我ならヒールできれいさっぱり治るだろう。
しかし腱や筋肉の断裂、骨折、内臓の損傷などはヒールで強制的に治してしまうと外傷のみが塞がり出血や痛みがないだけで体の内部はそのままの状態を正常として受け入れてしまう事が極稀にあるのだ。
そうなってしまうと外科手術でも治療は難しく損傷の部位によっては死に繋がってしまうこともある。
ヒールは外傷と体力回復が主であるのは一般知識として全員がもっているのだ。
そういった状況から医者という職業が魔法の存在によって追いやられることはなく全ての街や村に数名は居を構えている。
そして村の広場に展開している野営病院では各部隊が連れてきた医師と村の医師が共同で治療にあたっていた。
ナターシャを交えた医師の助手達が運ばれてくる負傷者を怪我の程度で振り分け医師達は重症者から治療にはいる。
外科的な処置を施した後にウィザードがヒールで傷を塞ぐという連携で効率は上がっているが次々と運ばれてくる負傷者に追い付いてはいなかった。

「大丈夫です。必ず助かりますからね」

左半身が血に染まり肩を大きく切り裂かれたナイトの手を握り必死に語りかけるナターシャ。
そうやって順番待ちをしている重症者に一人一人語りかけ時には寄り添い励ましているのであった。

「お医者様が来ましたよ。ほらね、大丈夫だったでしょう」

柔らかな笑みをもって語りかけ医師と交代するナターシャにナイトは感謝と安堵の涙を浮かべながら頷き治療の邪魔にならないよう目を閉じた。


「ナターシャさん、少し休んでくださいね」

助手と思われる女性から声を掛けられたナターシャは首を振って丁寧に断る。

「いえ、戦っている人達を思えばどうってことありません。語りかけることによって少しでも苦しみが和らぐのなら休んでいる時間なんてもったいないでしょう?」

「わかりました。でもあまり無理はなさらないでくださいね」

女性は何度か声をかけたが一度とてナターシャは頷いたことはなく半分諦めていた。
そうしているうちに治療を終え動けるようになった戦士が歩み寄ってきた。

「貴女の呼び掛けでとても救われました。生を諦めていた自分の命があるのは貴女のお陰です。感謝します」

「お元気になられてなによりです。その姿を拝見できたのが私へのお礼となりました。まだ無理はなさらずに安静にしていてくださいね」

次の患者へと向かっていくナターシャの後ろ姿を見た戦士は一言

「聖母様のようだ」

と呟いた。
隣にいた助手の女性も自然と頷いていた。
 
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