Element Magic Trinity
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17対6
「女!?」
「子供!?」
「ウェンディ・・・ココロ・・・」
闇ギルドの最大勢力、バラム同盟の一角を担うギルド、六魔将軍。
最近動きを見せるそのギルドの討伐の為、4つのギルドからメンバーが選出された。
最後にやってきたのはウェンディとココロという名の2人の少女。
来たのが子供、しかも女だという事に連合軍メンバーは驚愕し、ナツはポツリと呟いた。
(・・・あの名前、夢の―――――)
青い目を見開き、ティアが無言で2人を見つめる。
そして唯一黙っていたジュラは―――――
「これで全てのギルドが揃った」
「話進めるのかよっ!」
「聖十って簡単に驚かねーのか!?」
全く動じず話を進めた。
思わずグレイとアルカはツッコみを入れる。
「この大がかりな討伐作戦にこんなお子様2人をよこすなんて・・・化猫の宿はどういうおつもりですの?」
シェリーが訝しげに呟く。
「あら、2人じゃないわよ。ケバいお姉さん」
すると、それに答えるかのように入口から別の声が響いた。
ウェンディとココロは振り返り、声を上げる。
「シャルルちゃん!」
「ついてきたの!?」
「当然よ。アナタ達だけじゃ不安でしょうがないもの」
そう言うのは、ネコだった。
二足歩行の白いネコ。尻尾にピンク色のリボンを巻いている。
そして、喋る。
「「「ネコ!」」」
「!」
突然現れたシャルルと呼ばれる喋る白ネコにトライメンズは驚愕し、ハッピーの両目にハートが現れた。
シャルルはチラッとハッピーに目を向け、ハッピーはドキドキしながら見つめ返し、すぐにシャルルは視線を外し顔を背ける。
「ねぇルーシィ。あのコにオイラの魚あげてきて」
「きっかけは自分で作らなきゃダメよ」
足にじゃれ付いてくるハッピーの心情を察知したルーシィはそう言った。
と、同時に屋敷に新たな来訪者が現れる。
「シャ、シャルル・・・待てって。足・・・速すぎ・・・」
息を切らしているのは、灰色の髪の少年だった。
暖色系の装束に身を包み、桃色の瞳を揺らす。
その姿を見たウェンディが口を開いた。
「アラン君!」
名を呼ばれた少年は微笑み、頭を下げる。
「遅れてすいません。化猫の宿所属のアラン・フィジックスです。今回はよろしくお願いします」
随分と礼儀正しく挨拶をしたアランは走ってきたのかその額に浮かぶ汗を拭った。
「あ、あの・・・私、戦闘は全然出来ませんけど・・・皆さんの役に立つサポートの魔法、いっぱい使えます」
言いにくそうに視線を逸らし、ウェンディは小さい声を出す。
「だから、仲間外れにしないでください~」
「そんな弱気だからなめられるの!アンタは」
「まぁまぁシャルルちゃん」
今にも泣きだしそうな声を上げるウェンディにシャルルが叱咤し、ココロが宥める。
そんなウェンディを安心させるかのようにエルザが微笑み、口を開いた。
「すまんな・・・少々驚いたが、そんなつもりは毛頭ない。よろしく頼む。ウェンディ、ココロ、アラン」
エルザを見たウェンディは目をキラキラさせる。
「うわわ・・・エルザさんだ・・・本物だよ、シャルル、ココロちゃん」
「綺麗な人だね・・・それで強いなんて、憧れちゃう・・・」
「思ってたよりいい女ね」
妖精女王の名はここにまで届いていた。
文字通り目をキラキラと輝かせ、ウェンディとココロは笑い合う。
「オ・・・オイラの事知ってる?ネコマンダーのハッピー!」
ハッピーはシャルルにそう問いかける。
が、シャルルはぷいっと顔を逸らした。
「照れてる・・・かわいい~」
「相手にされてないようにも見えるけど」
「どちらかといえば眼中にないって感じだね」
それを全く違う方向に受け止めているハッピーにルーシィとルーは呆れたように言った。
「あの娘達、将来美人になるぞ」
「今でも十分可愛いよ」
「さ・・・お嬢さん方、こちらへ・・・」
「えっ・・・あの・・・」
「えっと・・・?」
「早っ!」
先ほどエルザとルーシィを持て成したようにウェンディとココロを持て成そうとするトライメンズ。
2人は戸惑ったように瞳を揺らした。
「アラン君、あれ止めなくていいの?」
「あ、あはは・・・」
ルーに「あれ」と指差しで言われたアランは困ったように苦笑した。
「あの3人・・・何という香りだ・・・ただ者ではないな」
「気づいたか、一夜殿。あれはワシ等とは何か違う魔力だ・・・エルザ殿とティア殿も気づいているようだが」
「さ・・・さすが」
そんな一方、連合軍の中でも名の知れた実力者である4人は3人から何かを感じ取っていた。
「オレンジジュースでいいかな」
「おしぼりをどうぞ」
「あの・・・えーと・・・」
「ど、どうしたらいいんだろう、ウェンディちゃん・・・」
「何なの、このオスども!」
持て成しを受けているウェンディとココロは戸惑っていた。
シャルルは苛立たしげに叫ぶ。
「ウェンディ・・・ココロ・・・」
「どうした、ナツ」
「どこかで聞いた事あるような、ないような・・・う~む・・・」
先ほどから腕を組み何かを考えるナツにグレイが声を掛ける。
ナツはしばらく頭を捻り――――――
「思い出してくれねーか?」
「知るか!」
超無理難題にグレイはツッコんだ。
『!』
すると、ナツはトライメンズに持て成される2人と目が合う。
ウェンディとココロは何も言わず、にこぉっと可愛らしい笑顔を浮かべただけだった。
それに対し、ナツはやはり思い出せず、訝しい表情を浮かべた。
「つーかよぉ、化猫の宿って2人じゃなかったのか?」
「僕の参加は今日決まったんです。だから、知らないとも当然だと」
「なるなる」
アルカが首を傾げ、アランがそれに答える。
その様子を―――――否、アランを、ティアは睨むように見つめていた。
(アイツから禍々しい魔力を感じる・・・一体アイツは何者なの?)
しばらく睨み、ゆっくりと頭を振ると、ティアは目線を逸らした。
解らない事を考えるのはやめたようだ。
「さて・・・全員揃ったようなので、私の方から作戦の説明をしよう」
そんな中、一夜が今回の作戦について話す――――――
「―――――とその前にトイレの香りを」
「オイ」
「そこは香りって付けないでよ・・・」
「ここから北に行くとワース樹海が広がっている。古代人達はその樹海のある強大な魔法を封印した」
一夜が戻ってきたと同時に説明が始まる。
作戦説明は青い天馬だ。
「その名は、ニルヴァーナ」
一夜がそう言うが―――――――
「?」
「ニルヴァーナ」
「聞かぬ魔法だ」
「ジュラ様は?」
「いや・・・知らんな」
「ティアは知っているか?」
「全く」
「知ってる?てか魚いる?」
「結構」
誰1人としてピンと来ていなかった。
その様子を見たトライメンズが口を開く。
「古代人達が封印するほどの破壊魔法という事だけは解っているが」
「どんな魔法かは解ってないんだ」
「六魔将軍が樹海に集結したのは、きっとニルヴァーナを手に入れる為なんだ」
「我々はそれを阻止する為・・・」
「連合軍を組んで、六魔将軍を討つって訳ね」
「わ、私のセリフが・・・」
レン、イヴ、ヒビキが口々に言い、ラストを一夜が締め括ろうとしたところで遮るようにティアが言い放つ。
「こっちは17人、敵は6人。だけど侮っちゃいけない。この6人がまたとんでもなく強いんだ」
そう言うと、ヒビキは自分の魔法を使い、6人の顔写真を空中に映し出した。
「毒蛇を使う魔導士、『コブラ』」
「悪そうなツラしてんなー、このつり目野郎!」
「「お前も似たようなモンじゃねーか!」」
「アンタもこんな感じじゃない」
「んだとティアー!」
ナツの言葉にグレイとリオンがツッコみ、ティアが冷静に言い放ち、ナツがキレる。
「その名からしてスピード系の魔法を使うと思われる、『レーサー』」
「ほぉ、何だっていいが気にくわねぇツラだ」
「同感だな」
「確かに気に入らないわね」
グレイの言い分にリオンとティアが同意する。
「大金を積めば、1人でも軍の一部隊を全滅させられる魔導士、天眼の『ホットアイ』」
「お金の為?」
「下劣な・・・」
ジュラの声に怒りが混じる。
「心を覗けるという女、『エンジェル』」
「何か・・・本能的に苦手かも・・・こういうタイプ・・・」
「僕も・・・」
ルーシィとルーが嫌そうな表情を浮かべる。
「この男は情報が少ないのだが、『ミッドナイト』と呼ばれている」
「真夜中さん?」
「妙な名前だな」
アランが首を傾げ、エルザが不審そうに呟いた。
「そして奴等の司令塔、『ブレイン』」
「何でコイツ顔に線がこんなにあるんだ?今流行だったっけ?」
ブレインの顔にある線を見てアルカが首を傾げる。
「それぞれがたった1人でギルドの1つくらいは潰せるほどの魔力を持つ。我々は数的有利を利用するんだ」
「あ、あの・・・あたしは頭数に入れないでほしいんだけど・・・」
「私も戦うのは苦手です」
「私も・・・そんなに・・・」
「ウェンディ!ココロ!弱音はかないの!」
「ルーシィもいい加減に覚悟を決めろ。ここまで来たんだ。六魔将軍を壊滅させるまでは帰れんぞ」
早速弱音を吐くウェンディとココロ、ルーシィをシャルルとヴィーテルシアが叱咤する。
「安心したまえ、我々の作戦は戦闘だけにあらず。奴等の拠点を見つけてくれればいい」
「拠点?」
「今はまだ奴等を捕捉していないが、樹海には奴等の仮設拠点があると推測される」
一夜の言葉にリオンが疑問形で繰り返し、レンが説明を入れる。
「もし可能なら、奴等全員をその拠点に集めてほしい」
「どうやって?」
「殴ってに決まってんだろ」
「それって結局戦ってるよね」
「大事なのはそこじゃないでしょ。で、集めてどうするの?」
グレイが問い、ナツが言い、ルーが呆れたように呟き、ティアが問いかける。
ティアの問いに、ヒビキは天を指さし叫んだ。
「我がギルドが大陸に誇る天馬、クリスティーナで拠点もろとも葬り去る!」
「おおっ!」
「魔導爆撃艇!?」
それを聞いたリオンとシェリーは目を見開いて驚愕の声を上げた。
「てか・・・人間相手にそこまでやる?」
「そういう相手なのだ。よいか・・・戦闘になっても決して1人で戦ってはいかん。敵1人に対して、必ず2人以上でやるんだ」
ジュラの言葉を聞いたルーシィの顔がサァーっと青くなる。
それとは対照的に、やる気になっている奴が1人。
「おし!燃えてきたぞ」
ばすっと左掌に右拳を打ちつけ――――――
「6人まとめて俺が相手してやるァーー!」
ナツは凄まじい勢いで屋敷を飛び出していった。
「ナツ!」
「おまっ、作戦聞いてたか!?」
「バカめ」
「仕方ない、行くぞ」
「うえ~」
「ったく、あのバカ」
「アンタ達!」
飛び出して行ったナツを追うエルザ達。
ティアは飛び出して行ったメンバーを止めようとするが、間に合わない。
「妖精の尻尾には負けられんな。行くぞ、シェリー」
「はい!」
「リオン!シェリー!」
続けて飛び出して行ったのはジュラを除くラミアのメンバー。
「オレ達も行くぞ!」
「うん!」
「エンジェルかぁ♪」
トライメンズも屋敷を飛び出して行く。
「えっ?ちょっと・・・待ってくださいよっ!」
アランも慌てて彼等を追っていく。
「あわわわ・・・」
「え、えっと・・・どうしよう?」
「大丈夫・・・!オイラがついてるよ」
飛び出して行ったメンバー達を見て戸惑うウェンディとココロ。
そんな2人を励ますようにハッピーが言うが――――
「ウェンディ、ココロ、行くわよっ!」
「わっ、わっ」
「ひ、引っ張らないでぇっ!」
「あ!待ってよ~」
完璧に無視され、シャルルに引っ張られていく2人の後を追っていった。
屋敷にはジュラ、一夜、ティアの3人が残る。
「やれやれ」
「集まったのはバカだけかしら・・・」
「メェーン」
ティアが額に手をやる。
「何はともあれ作戦開始だ。我々も行くとしよう」
「そうね。アイツらに1人1発飛び蹴り決めてやりましょうか」
「その前にジュラさん」
ジュラと顔に怒りを浮かべるティアはナツ達を追おうとするが、一夜に呼び止められる。
「かの聖十大魔道の1人と聞いていますが・・・その実力はマスターマカロフにも匹敵するので?」
「滅相もない」
一夜の言葉にジュラは謙遜する。
「聖十の称号は評議会が決めるもの。ワシなどは末席。同じ称号を持っていても、マスターマカロフと比べられたら天と地ほどの差があるよ」
「ほう」
「そんな事言わなくても、聖十の称号に選ばれただけでも凄い事なんじゃないの?ジュラさん」
謙遜するジュラにティアが首を傾げる。
誰が相手でも態度は変えないティアだが、ジュラだけは『さん』付けで呼ぶようだ。
「そんな事はない。そういうティア殿こそ、次期聖十大魔道候補と噂されるほどの実力者だとか」
「勝手に噂するバカがいるのね、全く・・・聖十に選ばれるほど、今の私は強くないわ」
珍しく謙遜するティア。
すると、一夜が口を開いた。
「それを聞いて安心しました。マカロフと同じ強さだったらどうしようと思いまして・・・」
「!」
「は?アンタ何言って――――うっ!」
その瞬間、ツンとした臭いがジュラとティアを覆った。
その匂いに思わず2人は鼻と口を抑える。
「な・・・何だ、この臭いは・・・!?」
「相手の戦意を消失させる魔法の香り・・・だってさ」
「アンタ誰・・・一夜ではなさそうだけど・・・!」
ティアがそう問いかけた、瞬間。
「ぐほっ!」
「うぐっ!」
一夜がジュラとティアの腹部にナイフを深く突き刺した。
痛みに震える2人の前で、一夜はぶよぶよと脹れ―――――
「ふう」
「戻ったー」
ポンッと、ぬいぐるみのような2体の生物に姿を変えた。
「一夜って奴、エロい事しか考えてないよ」
「考えてないね!ダメな大人だね」
「はいはい!文句言わない」
「「ピーリピーリ」」
『!』
すると、部屋の奥から1人の女性が現れる。
白い羽で構成されたワンピースに青いリボンのカチューシャを身に着けた女性は、2人の前に立つ。
「こ・・・これは・・・」
「あー・・・あのキタナイ男ねぇ・・・コピーさせてもらったゾ。おかげでアナタ達の作戦は全部わかったゾ」
「僕達コピーした人の」
「考えまで解るんだー」
その女性を見て、ティアは呟いた。
「アンタは・・・六魔将軍の、エンジェル・・・!?」
そう。
この女性の名は『エンジェル』。
連合軍が相手しようとしている六魔将軍の1人だ。
「な・・・」
ジュラが目を見開く。
「は~い♪まずは3人しとめたゾ」
エンジェルがそう言ったと同時に―――――
「無念・・・」
「そ、んな・・・」
ジュラとティアは腹部のダメージから倒れ、そのまま倒れ、意識を手放した。
カァン、とジュラの持っていた杖が音を立てて落ちる。
「邪魔はさせないゾ、光の子達。邪魔する子は、天使が裁くゾ」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
今日は「ウェンディVSシェリア」を見ながらの更新だったんですが・・・それを見て、「アランの魔法は大魔闘演武編まで隠しておきたい!」と思いました。
理由はありますが、ネタバレになるので秘密です。
多分できませんけど・・・出来る限りは後へ後へと押していこうかと。
それと、少し残念なお知らせです。
ナツとティアですが、あの2人が恋仲になる事はないです。皆無です。
何故かといいますと
・ナツと恋仲になるとすれば、それは原作ヒロインのルーシィか幼馴染のリサーナだと思うから。
・ナツにとって、ティアは恋愛対象というよりかは「文句を言いながらも世話を焼く姉」みたいなイメージの設定だったから。
・ティアの過去の話を考え、いろいろ考えた結果惚れる相手だったらナツじゃないなと。
・そしてナツに「恋」という言葉が似合わないから。
・・・です。
ナツティアが好きな方が多くいるのは承知です。
でも、やっぱり上記を踏まえた上で考えると、ナツじゃないんです。
もちろんナツはティアにとって他人よりかは特殊な存在ですが、それが恋に発展する事はないと思うんです。
「イオリ・スーゼウィンド」の回でナツのそれっぽい描写がありますが、設定的にナツがティアの事を好きだという設定は最初からありません。
という訳で、これからもデレは発揮していきますが、あの2人が恋仲になる事はまずないので、それを承知でお願いします。
感想・批評、お待ちしてます。
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