不老不死の暴君
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第十話 救出
押収された品が置いてある部屋に着いた。
セア達は自分の武器を見つけると素早く身に纏った。
ウォースラは全員が装備を着けたのを確認するとこのリヴァイアサンの地図を出した。
「今俺達がいるのがここだ」
そう言ってウォースラが地図に書いてある部屋のひとつを指差した。
続いてアーシェが囚われている独房を指差し目立たず素早くアーシェを救出した上で艦載挺を奪って脱出する事が目的だと告げた。
「ちょっとまてよパンネロはどうすんだよ!?」
ヴァンが声を荒げたがウォースラはパンネロのことを知らないので首を傾げた。
セアがヴァンを宥めようと声をかける。
「あのなヴァン、パンネロはラーサーが・・・皇帝の四男が直々に保護しているんだぞ? 俺達が助けに行けば帝国兵が勘繰ってパンネロを殺すかもしれない。ここは王女を救出しにきた反帝国組織の仕業にした方がいい。それにこの艦隊はラバナスタに向かってる。そこでパンネロは降りれるだろうし」
「そうだな、その方が安全か」
バルフレアも同意し、ヴァンは渋々黙り込んだ。
セアはウォースラの方を向き話しかけた。
「ひとつ聞きたいことがある」
「なんだ」
「向かってきた帝国兵は殺してもいいのか?」
「かまわん」
その言葉を聞きセアは赤みのある黒い剣を抜いた。
「それじゃあそろそろ行きましょうか」
セアの言葉に全員が頷き、部屋から退出した。
前もって警備の薄いところをウォースラが知っていたのであまり戦闘にはならなかった。
仮に帝国兵がいたとしてもバルフレアの銃で撃たれるか、もしくはフランの弓で射られ、倒れた。
そしてアーシェが囚われている独房の前の部屋の前まで来た。
独房の前の部屋には帝国兵が五人とジャッジが一人いる。
流石に不意打ちで倒すのは無茶な数だ。
「ここは強行突破しかないな」
「ああ」
ウォースラの呟きにバッシュが答えた。
「とりあえず敵が味方を呼べないように出口を塞ぐ必要がありますね」
セアがウォースラに問いかける。
「出来ればそうしたいがここは無理だろう・・・奥に出口がある」
「なら俺がそこを塞ぎましょう」
「なに?」
ウォースラがセアの方を見た。
「だから部屋に突入すると同時に反対側までいっきに走り、敵が部屋から出るのをふせぎましょう」
ウォースラは唸っていたがバッシュが許可を出した。
「大丈夫なのか?」
「彼の腕前はたいしたものだ。信用できる」
「・・・お前がそう言うなら」
ウォースラはセアに不安を感じていたがバッシュの言葉を信じることにした。
そしてセア達は部屋に突入した。
すぐさまセア達の入ってきた側の扉の近くにいたジャッジが反対側の扉の近くにいた帝国兵2人に味方を呼んでくるよう指示を出し自分は周りにいた帝国兵3人と一緒にセア達の通行を妨害する。
しかし帝国兵の斬撃を軽くいなし、セアは反対方向の扉に向かっていた帝国兵の首を跳ばした。
そしてその近くにいた帝国兵がセアの背中に剣を振り下ろしてきたがセアは間接を無視して体を捻ってその剣を受け、その帝国兵の首も跳ばした。
ふぅと軽く息をふき、入ってきた扉の方を向いた。
既に帝国兵3人は倒されており、戦っていたジャッジとウォースラも数秒もしない内にウォースラが隙をつき胴に剣を叩き込んだ。
ウォースラはジャッジの死体から四角い板のようなものを出した。
「それってなに?」
ヴァンがウォースラに問いかけた。
「カードキーだ。詳しくは知らんが鍵のようなものらしい」
そう言ってウォースラはアーシェのいる独房の方へ進んだ。
独房の横にあるコンピューターにカードキーを差込み、独房をあけた。
「殿下、ご無事で……」
「ウォースラ」
独房にあるイスに座っていたアーシェはウォースラを見て立ち上がった。
囚われていたせいで気をはってたのかアーシェはよろけ、咄嗟にウォースラが彼女の肩を持ち支えた。
「殿下」
「ありがとう、大丈夫です。私・・・」
アーシェの顔には先ほど迄安堵の表情を浮かべていたがバッシュを視界に捉えたとたん彼を睨みつけた。
「ぐずぐずするなよ、時間がないんだぞっ!」
「さっさとしてくれ、敵が来る」
ヴァンとバルフレアの声が聞こえてきた。
「・・・話はのちほど」
ウォースラも時間がないことは承知していたのでひとまずその場を切り上げる。
アーシェは頷いたが顔には困惑の表情を浮かべていた。
独房からでるとリヴァイアサンに警報音がなり響いた。
「さすがにばれたか」
セアが呟いた。
バッシュは隣にいたアーシェに話しかけた。
「殿下、我らが血路を開きます」
「私は、裏切り者の助けなど!」
「なんとしても必要です。自分が、そう判断しました。・・・引き返すぞ、艦載艇を奪って脱出する」
バッシュの言葉にアーシェは反論したがウォースラがそれを止め、指示を出す。
アーシェは俯きながら走っていった。
その様子を見ていてセアは思った。
仮にダルマスカ王国が再興したとして・・・彼女は王としての責務を果たせるのだろうかと。
あの様子ではとても果たせるとは思えない。
彼女がダルマスカ王家の最後の一人である以上ダルマスカ王国を再興させるには彼女が王位につくしかない。
となると・・・このまま王国が再興すれば目端の利く貴族か他の国が実権を握り、彼女はお飾りになってしまう。
覇王の血族に嫌悪感をセアは持っているがそう思うと同情してしまう。
「このままじゃ仮に再興しても傀儡になってしまうだろう」
「そうかもね」
セアの呟きにフランが答えた。
「君が話しかけてくるとは珍しいね」
「そうかしら?」
そう言ってフランは走っていった。
セアもやれやれと首を振りながらあとに続いた。
警報音がなっている事もあって帝国兵とは結構あったが途中からいなくなった。
不思議に思っていると目の前に小さな少年と見知った少女がいた。
「ヴァン・・・!」
そう言ってパンネロはヴァンに抱きついた。
その様子をみてセアがニヤニヤ笑っていた。
「恥ずかしいからやめろ!!」
「なんでだよ? べつにいいじゃないか!」
セアに見られてるのが恥ずかしいのかヴァンが声を荒げたがセアは軽く受け流した。
パンネロはヴァンに抱きつくのをやめるとセアの方を向き
「セアさんもセアさんです! 一体一ヶ月も何処に行ってたんですか?」
「え? なにこの扱いの差・・・」
セアがパンネロにしかられてる横でラーサーがアーシェの方を見て言った。
「ギースが気づきました。早く脱出を」
そしてラーサーは隣にいるウォースラに目を移す。
「アズラス将軍ですね。僕と来てください。先回りして飛空艇を押さえましょう」
「正体を知った上で逃がすのか」
ウォースラの言葉を聞いたラーサーは再びアーシェに目線を移す。
「アーシェ殿下、あなたは存在してはならないはずの人です。あなたやローゼンバーグ将軍が死んだことにされていたのは・・・何かが歪んでいる証拠です。今後あなたがたが行動すれば・・・もっと大きな歪みが見えてくるように思えます。だから行ってください。隠れた歪みを明らかにしてください。私はその歪みを糾して、帝国を守ります」
【帝国を守る】・・・その言葉にアーシェは戸惑いを覚えたがまずは生きてここから出なくてはとラーサーの提案に承諾した。
「・・・わかりました」
その言葉に笑みを浮かべたラーサーだった。
「どうもな【ラモン】」
「・・・あの時はすみません」
ヴァンはからかい半分でビュエルバであった時のラーサーの偽名で呼んだのだがラーサーは後悔しているような声で答えた。
ラーサーはパンネロの方に向いた。
「パンネロさん、これ、お守りがわりに」
そいってラーサーは人造破魔石を渡した。
その様子を見てセアはパンネロを呼んだ。
「パンネロ?」
「なに?」
「まさかとは思うけどラーサーに惚れた?」
「ちょ、なに言ってるんですか!セアさん!」
そのパンネロの反応を見てセアは人の悪い笑みを浮かべてゲラゲラと笑った。
ラーサーもその場に居づらくなったのかアズラス将軍に話しかけた。
「い、行きましょうか。アズラス将軍」
「・・・」
そうしてラーサーはウォースラを連れ、逃げるように部屋から退室した。
セアは手馴れた様子でパンネロを宥め、周りに話しかけた。
「じゃあ俺達のやる事はラーサー達が艦載挺を押さえるまで金ぴか鎧のジャッジマスターをどうにかしなくちゃな」
セアの言葉に全員が頷いた。
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